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カテゴリー「702 疑問」の152件の記事

2019年4月21日 (日)

誉め方の作法

使っている側に悪気が無いだけに厄介だ。作曲家Aを論ずる中に現れる「AはB以前で最も重要な作曲家である」という表現だ。Aは作曲家の名前が入るが、Bは作曲家だったり時代名だったりするのだが、とりわけ作曲家名だった場合、注意が要る。

大抵はAさんをプラスに評価する文脈の中に現れる。個人のブログの感想ではなく、きちんとした解説書の中にだって現れる。Aにブクステフーデ、Bにバッハを代入してみよう。「ブクステフーデはバッハ以前で最も重要な作曲家である」というよく見る文章になる。ここでブクステフーデはバッハに先行するオルガンの大家として演奏と作曲の両面で高い評価を与えられていると見ていい。ところがだ。

ところが、「これはバッハよりは劣るけれど」というニュアンスを濃厚に含む。Aにパッヘルベルを代入しても同じことだ。

信じ込んでいた。最近ブクステフーデやパッヘルベルのオルガン作品に親しんでみると、違和感を感じる。「高い高いバッハの評価ありき」の言い回しではないのかと痛感する。それが学会の通説だと言われれば仕方ないが、普通に「パッヘルベルやブクステフーデはバッハの一世代前の素晴らしい作曲家だ」あるいは「バッハと遜色がない」と言えばいい。使う側は無意識かもしれぬが、ブクステフーデやパッヘルベルへの上から目線さえ感じる。そうまでして持ち上げなくてもバッハは十分素晴らしい。

テレマンの評論に現れる「当時はバッハより有名だった」や、CPEバッハについて言われる「当時はバッハと言えばカールフィリップエマニュエルだった」も同じ香りがする。

ぜーんぶ誉め言葉のつもりだけに厄介だ。最近なんだか違う気がしてきた。ブラームスに訊いてみたい。

2019年3月24日 (日)

輝きこの日

原題を「Erschienen ist derherrlich tag」という。コラダス分類番号「9」は、バッハとテレマンのみが採用している。全143曲中たった3例のレアケースだ。

  1. バッハ  BWV629
  2. テレマン  TWV29

同コラールはカンタータ145番「我は生く、わが心よ汝を喜び楽しませんため」(Ich lebe,mein Herze,zu deinem Ergoetzen)のフィナーレ第5曲に採用されている。復活祭第3日のためのカンタータ。「第三日」は復活祭の翌々日だ。「第三主日」ではない。これだと3週間後なので注意したい。

さて、このカンタータ新バッハ全集では全5曲から構成されているのだが、元々はこの前に2曲付加されていたらしい。後からの付加とは言え元々は7曲あったのを、新バッハ全集刊行の際に2曲削ってしまったということだ。

削られた2曲のうちの後の方、旧第2曲には、テレマン作の合唱曲が丸ごと置かれていたという。それが新バッハ全集刊行にあたり削除された原因か確認したいが情報がない。ひとまず、テレマンとの関係浅からぬカンタータとだけ申しておく。フィナーレ第7曲に採用したコラールをベースに、テレマンもまたオルガンコラールを作曲していたとは、偶然にしてはおいしい。

 

2018年6月22日 (金)

furとder

アンナマグダレーナの音楽帖の愛聴盤を紹介した。

20180327_091258

「Notenbuechlein der Anna Magdarena Bach」となっている。変だ。

愛用の楽譜と比較する。

20180328_121140_2

「Notenbuechlein fuer Anna Magdarena Bach」となっている。ウィキは「fuer」だ。これだと「のための」と訳したくなる。バッハが愛妻のためにという雰囲気を邪魔しない。「der」だと「軽い所有」のイメージ。筆写者ないし作者がマグダレーナである感じがしてくる。単なる誤植とは思いたくないのだが。

2018年6月 2日 (土)

アジア初演か

1918年6月1日の徳島坂東におけるベ-トーヴェンの第九交響曲の演奏が、日本初演だということなのだが、この演奏が同時に「アジア初演」だと断言されている。

第一次大戦で日本が陥落させた中国青島のドイツ租借地は、日本の攻撃を受けるまで10年以上ドイツ人が多数居留していた。青島ビールはドイツ人用のビール供給に端を発する。オーケストラも組織されていた。

素朴な疑問がある。

日本に占領されるまでの間、同地オケは第九交響曲を演奏しなかったのだろうか。

当時の青島はドイツ人も多く住んでいた。俘虜という制約もない音楽活動が保証されていたはずで、第九交響曲の演奏が試みられたことがないというのか。坂東が「日本初演」に加えて「アジア初演」と断言する以上、その点の検証には抜かりがないと思うには思うのだが、信じられない。

征服前の青島で顧みられることがなかった第九演奏が、俘虜生活の制約の中で実現したということなのか。

2018年5月10日 (木)

聖マリア縛り

昨日の記事「ブクステフーデの職歴」を思い出していただく。

  1. ヘルシンボリ(デンマーク) 1637年出生。
  2. ヘルシンボリ(デンマーク) 1658年聖マリア教会オルガン奏者
  3. ヘルセンゲア(デンマーク) 1660年聖マリア教会オルガン奏者。
  4. リューベック 1667年聖マリア教会オルガン奏者兼ヴェルクマイスター 音楽的な地位としては北ドイツ最高の地位だったとされているが前任者トゥンダーの娘と結婚が条件だったという。ヴェルクマイスターとは書記と財産管理人を合わせたような職務。
  5. リューベック 1707年5月9日同地にて没す。

彼の3つしかない勤務先は全て「聖マリア教会」だ。これだけでも相当な偶然だ。バッハはバラエティに富んでいた。そもそもプロテスタントの地域になぜ「聖マリア教会」があるのか、呑み込めていない。マリアへの崇拝は忌避していたと習った記憶があるからだ。

2018年3月 9日 (金)

利き手

ブラームスの自筆譜や手紙の実物はともかく、写真でならば目にしたこともある。

本日はその筆跡がはたして左右どちらの手で書かれたかという話題である。現在残されている資料からブラームスの利き手が左右どちらだったのか判るのだろうか?おびただしい関連書物に記載されていただろうか?何かをペンを持っている写真でもあればいいのだが、見たことがない。指揮は利き手に関係なく右手だろうし、ピアノ演奏の絵や写真では利き手までは判るまい。葉巻は必ず利き手で持つとは限らない。

つまり決め手がないのだ。多分右なのだと思う。一般に右利きのほうが多いから、もしブラームスが左利きだったら知人がそれに言及していると思われる。言及がないのは右利きの印と思いたいが、決定打に欠ける。

ブラームスに限らず作曲家の利き手の話題はあまり見かけないが、バッハの次男カール・フィリップ・エマニュアエル・バッハは左利きだという。そのため他の兄弟には幼い頃から弦楽器を教えたバッハも、この次男にはクラヴィーアだけしか教えなかったという。おかげで彼はクラヴィーア一本で研鑽を積み、古典派初頭屈指のクラヴィーア演奏家・作曲家になるのだ。

ピアノとともにチェロやヴァイオリンを習っていたブラームスはやはり右利きだったかもしれない。

2018年1月21日 (日)

ブラームスはオルガンを弾いたか

作曲家ヨハネス・ブラームスはオルガンを弾けたのかという疑問が本日の話題である。

通常作品を残すことイコール楽器の演奏が出来ることにはつながらない。管弦楽作曲家がオーケストラの全ての楽器演奏に長けていることなどあり得ない。知識や理屈に精通していることと演奏できることは別物だ。

バッハは、オルガン演奏の名手にして、クラヴィーア演奏も相当のレベルだった。あるいは、ヴィオラやヴァイオリンも並以上の弾き手だったという。そしてそれらの楽器のために数多くの作品を残した。

ご存知の通り、ブラームスはピアノ演奏においても上級の腕前を披露した。到達度を問わないならば、幼い頃にヴァイオリンやチェロも習った事がある。

ピアノ演奏の大家であれば、オルガンも相当に弾けたのではないかと想像してしまう。ライプチヒ・トマス教会のカントル就任を要請されるくらいだから、オルガンも相当な腕前だったのではないだろうか?

2017年10月 1日 (日)

音楽は理系か

日本の子供たちは、大学受験にさしかかると無理矢理2分類される。「文系」と「理系」だ。私は法律専攻だったのでつまり「文系」だ。学部の名前から大抵類推出来る。「古典」と「数学」が苦手な私は、困り果てた。試験での得点源が「歴史」「地理」だったから「文系」を選んだ。

そもそも百人百様の個性は文理2元論では扱いにくいと思うが、実際のところどうなのだろう。美術音楽体育はやはりそうした分類の外にあると思う。

音楽の成り立ちを考えると「理系」とも思えるが、フィットしない。文理に次ぐ第三の分類というよりも、文と理の重なり合うところに所在すると考えたい。

2017年7月28日 (金)

かなづち

泳げない人のことを俗に「かなづち」という。水に入れると沈んでしまうからだろう。ブログ「ブラームスの辞書」ならではの疑問がある。ブラームスは泳げたのだろうか。

生涯英国の地を踏まなかった理由の一つに、船旅を嫌ったことを挙げる人は多い。言葉の問題と並ぶありそうな原因の双璧だ。しかしこれが直ちに泳力の判定にはつながるまい。水泳の能力と船旅の好き嫌いは必ずしもパラレルな関係とまでは言えない。だから大西洋を4度渡ったドヴォルザークが泳げたという保証も無い。

第1交響曲の作曲を進めた1876年夏の避暑地は、リューゲン島だった。ジョージ・ヘンシェルとともザスニッツに滞在したブラームスは、しばしば海水浴に興じた。色のついた石をめがけて海に飛び込んだり、水中で目を開けられることを発見したりと、楽しい海水浴の様子が証言されている。船旅ほどは海を恐れていないということだ。しかし、一連の証言の中には、泳いだと書いていないことも事実だ。

ハンブルクではキチンと初等教育を受けている。しかしその中に現代日本のような水泳の時間があったかどうか不明だ。

2017年5月 5日 (金)

読める

思うに難解。

  1. 書いてある文字を声に変換出来る。
  2. 書いてある文書から筆者の意図を汲み取れる。

「読める」という言葉の用いられ方を観察していると上記2つの意味が混在していると思われる。

小学校1年生が国語の教科書を、間違えずに声を出して読めた場合には、ちゃんと誉められる。いわゆる音読でこれは上記1の典型的な例だ。私の英語は未だにこのレベルでもある。国語に限定して申せば大人になると上記1だけでは誉められない。中学以降上記2が強く求められる。長文読解問題ではまさにそこが試される。

さてさて本題。「楽譜が読める」と言い回された場合難解さに拍車がかかる。

楽譜の場合上記1に相当するのが、「演奏出来る」になるのか、書いてある音を言えるだけで足りるのかハッキリしない。単純に「譜読み」といった場合上記2のニュアンスであることが多い。「書いてある楽譜から作曲者の意図を汲み取る」と解して違和感が無い。まさに「ブラームスの辞書」が目指す領域だ。しかし、この「譜読み」の上達が必ずしも優れた演奏に繋がる訳でもないところが悩ましい。

音楽を頻繁に聴く人の中にも「私は楽譜が読めない」と自称する人は少なくない。義務教育9年間、音楽の授業を重ねながら「楽譜を読めない」と感じている人が少なくないというのは、あんまりな気がする。国語だったら大問題になっているハズだ。

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