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カテゴリー「702 疑問」の195件の記事

2023年1月31日 (火)

二重盲検法

薬効の確認をするための方法。本物の薬と偽薬を投与して効果の違いを客観的に測定するために用いられる。投与される治験者はもちろん、試験をする側にもどちらが偽薬かを伏せて行われるため「二重盲検」と称される。

何故このような方法が採用されるのかは、実はシンプルだ。人間の思い込みを検査結果から排除するためだ。逆に申せば人間の思い込みとはそれほど厄介だということだ。「イワシの頭も信心から」と。

場合によっては命にかかわる医薬品の効果の判定だから当たり前だとは思うが、一連のロジックは美しい。数多存在する医薬品候補の中から、晴れて医薬品と認められるための手続きとはいえ、この厳密さは心地よい。複数のものを客観的に比較評価するとはこういうことなのだと思う。

音楽業界では、「同曲異演」を収録したCDの比較対照が無視しえぬ大きなジャンルになっている。同一作品を演奏した複数の演奏間の優劣好悪に言及したサイトや書物は多い。

本日の文脈から見れば当然の疑問がある。

同曲異演のCD比較の論者は、はたして二重盲検法を採用しているのだろうか。

比較論の執筆者は、複数のCDの評価に際して、CD本体やジャケットに記された諸情報を見ずに再生しているのだろうか。演奏者の団体名氏名を含む情報を見ないまま、まず演奏を聴いただけで、比較評価して序列を決定し、然る後に隠しておいた演奏者名を書き加えるという手順が採用されているのだろうか。演奏の評価が既に確立済みの演奏家のイメージに左右されないためには必須の措置だと思うがどうだろう。

場合によっては命に影響する医薬品とは同列に論ずることは出来ないこと重々承知の上だが、気になる。

もちろん、ジャケットに書いてある演奏家の演奏が収録されているという点には、偽装は一切無いということが前提の話である。その点を一切疑わぬという意味を加えれば「三重盲検法」かもしれない。

 

 

2023年1月22日 (日)

今更な疑問

ブラームスの血液型は何だろう。

不思議と書物で言及されていない。血液型の発見は1900年だからブラームスの没後だ。現代では輸血において死活問題であるほか、とりとめもない話のたねを供給してくれてはいるが、当時はそうではなかった。だからブラームスの伝記をいくら読み返したところで話題にすらならない。後世の愛好家はただ想像をたくましくするばかりだ。人種によって構成比も変わるなど統計的医学的裏付けのある話から、眉唾物の仮説まで興味は尽きない。

 

2022年9月16日 (金)

耳コピ

鳴っている音楽を聴いてそれを楽譜に書き留めることあるいは、その能力のことか。聴音とは決定的なニュアンスの違いが有るような気がする。作曲や演奏の第一人者の中にはこの才能を併せ持っている者も多いが、作曲や演奏の能力とは別の才能だと思われる。

歴史上名高いのはモーツアルトだ。旅先で聴いたミサ曲を帰宅後に正確に楽譜に書き落として見せたらしい。聴く力もさることながら、記憶力も並ではない。

この場合の正確さの範囲はどこまでだったのだろう。

  1. 音の過不足が無かったことは当然だ。
  2. 演奏者が間違って出していた音を楽譜に書く際に修正するくらいは朝飯前だろう。
  3. 演奏に参加しているパートが過不足無く再現されていることも想像に難くない。
  4. 演奏者たちが見ていた楽譜と、アーティキュレーションまで一致していたのだろうか。スラーやスタカート、アクセントなどだ。
  5. テンポ記号やダイナミクスまで完璧に一致したのだろうか。

上記4や5まで完璧に一致したことを指して「正確」と表現したのだろうか。だとすると演奏も本当に緻密だったのだと思う。

楽譜上に「p」という記号を見た演奏者が、「このくらい」とばかりに出した音を聴いた耳コピイストが、毎回必ず「p」と書けるのだろうか。「耳コピ」の能力とはここまで含むものなのだろうか。あるいは演奏者の解釈まで見通して同じ音量でもこいつなら「p」だが、あいつなら「mp」などというさじ加減があるのだろうか。単に耳コピの能力という場合そこまで含むのだろうか。

気になりだすときりがない。

2022年9月11日 (日)

涸渇

井戸や泉の水が干上がること。湧水が止まることだから、芸術上のアイデアが出せなくなることの意味に用いられることも少なくない。作曲家の場合、曲想が浮かばなくなることだ。日ごろ、「霊感無しには一行たりとも作曲すべきでない」と考えるブラームスにとって楽想の涸渇は作曲活動の停止を意味する。

1890年弦楽五重奏曲第2番を完成したブラームスは、自らの状態を「涸渇」と判断した。今後は過去の作品の整理に徹すべしとまで思いつめる。

実際にはこの後、一連のクラリネット入りの室内楽や、「世界遺産・ピアノ小品群」、さらには「4つの厳粛な歌」「オルガンのための11のコラール前奏曲」が書かれる。私のような愛好家には「涸渇」ではなく一瞬のスランプに見える。

ところが一部には、このうちのピアノ小品群を「涸渇」の証拠と感じる人もいるようだ。作品番号でいうと116から119までを背負った合計20曲の小品群は、主題やモチーフの面で相互に密接な関連を示すものがある。耳に心地よい旋律を思いつくままに次々を繋ぎ合わせるのとは対象的な世界を構築している。そこにあるのは限られた旋律やモチーフを様々な角度から掘り下げるという姿勢だ。当然用いられる旋律やモチーフの種類は少なくなる。それでいてプアな印象に直結しないところが、ブラームス的だと私は思うのだが、一部の人には曲想の涸渇のリカバーと映っているということなのだ。

私はフレーズやモチーフを含む曲想の節約を貧相と同居させないことがブラームス節の根幹の一つと考える。節約と豊かさが程よいバランスで両立しているのがブラームスだ。先の議論は、このうちの節約の部分だけを見て、涸渇と評しているように思われる。

個人個人の考え方の違いだから、仕方がない。しかしこういうものの見方が割と世間に流布した入門系書物の中に現われるとなると感心しない。聴き手が自分の判断で「涸渇」と感じるのは大いに結構だが、入門解説書の中で記述しては余計な先入観を植えつけかねない。

 

 

2022年9月 4日 (日)

偉人ランキング

日本歴史上の人物の人気投票なるイベントを見かける。日本人が好きな歴史上の人物に投票するのだ。上位はほぼ不動だが、某公営放送の大河ドラマも影響するらしい。

巨大かつ素朴な疑問がある。

ドイツ人に対してドイツの偉人人気投票をしたら、我らがヨハネス・ブラームスはベスト10入りするのだろうか。音楽史にジャンルを絞ってしまったら上位入りは確実だからつまらない。音楽にジャンルを絞らずに投票してもらうのだ。私にとっては音楽分野以外でドイツの偉人を10人思いつくことが既に難題である。ドイツ人にやってもらうことに意義がある。

  1. ゲーテ
  2. シラー
  3. ダイムラー
  4. ビスマルク
  5. コッホ
  6. メンデル?
  7. ルター
  8. レントゲン
  9. ジーメンス
  10. シュリーマン
  11. ハイネ
  12. グリム
  13. メッサーシュミット
  14. ロンメル
  15. ガウス
  16. ジーメンス
  17. デューラー
  18. ベッケンバウア
  19. メルケル
  20. ウィルヘルム1世
  21. フリードリヒ大王

ドイツあるいはドイツ人におけるブラームスの位置づけを一度折り入って確認しておきたいものだ。

2022年8月28日 (日)

鍵盤苦手

ヴィヴァルディの残した作品群を眺めていて疑問に思うことがある。チェンバロやオルガン独奏用の作品が見当たらない。まだまだ新発見の作品が出てくるから、まだ見つかってないだけという可能性もあるけれど、知られている作品が膨大な数であるのに、トリオソナタで通奏低音があり、そこではチェンバロが演奏しているのは別として鍵盤楽器独奏用作品が見当たらないのは不思議だ。

ブクステフーデやパッヘルベルはオルガニストだったけれど、弦楽器を含むトリオソナタを書いている。スカルラッティだって膨大なチェンバロ作品に交じって合奏協奏曲がある。

当時は演奏家と作曲家の棲み分けがあいまいだった。「ヴァイオリニスト兼作曲家」はたくさんいた。ヴィヴァルディがその代表格だ。「鍵盤楽器奏者兼作曲家」は弦楽器を用いた作品を書くけれど、下記のような「ヴァイオリニスト兼作曲家」は鍵盤楽器独奏用の作品を残していないように思える。

  1. ヴィヴァルディ
  2. ロカテッリ
  3. ヴェラチーニ
  4. ジェミニアーニ
  5. タルティーニ
  6. コレルリ
  7. ビーバー
  8. シュメルツァー

 

 

 

 

 

2022年8月 3日 (水)

リオムさんのご事情

ヴィヴァルディの作品目録番号「RV」は今や、完全に定着している。編成の薄いジャンルから厚いジャンルに分け、さらそれが調性をキーに並べてある。完全に機械的だから、「もれなく」という網羅性が売りである。慣れるしかないと修行中である。

 

慣れるにしてもとっかかりがほしいところで、ある疑問がわいた。

 

たとえばニ長調のヴァイオリン協奏曲を例にとる。RV203からRV242までがこれ該当する。「1本のヴァイオリンを独奏楽器とし、第一楽章がニ長調の協奏曲」が、未完も含むとはいえ、32曲あるということだ。

 

ブラームス唯一のヴァイオリン協奏曲はニ長調。ベートーヴェンもチャイコフスキーも同様だ。なのにヴィヴァルディにはニ長調のヴァイオリン協奏曲が32曲あることに眩暈を覚えるのだが、これこそがバロックだとわかりかけてもいる。

 

大好きのな「調和の霊感」op3-9はニ長調だ。これはRV230だ。ニ長調ヴァイオリン協奏曲の28番目にあたる。

 

疑問とはここだ。同じニ長調ヴァイオリン協奏曲32曲の中の順序はどのように決めたのだろう。出版順ないし作曲順とは考えにくい。

2022年6月10日 (金)

自由の中の不文律

記事「オルガン自由曲の標題」でバッハのオルガン自由曲を構成する標題について整理しておいた。

  1. 前奏曲とフーガ 18曲 「Praeludium und Fuga」BWV531から552まで。
  2. トリオソナタ 6曲 BWV525から530まで。両手と足でトリオという斬新さ。
  3. コンチェルト 5曲 BWV592から596まで。他者作品の編曲。「無伴奏オルガン協奏曲」
  4. トッカータとフーガ 5曲 BWV538、543、564、565、566。
  5. トリオ 4曲 BWV583から586。
  6. フーガ 4曲 BWV574、575、578、579。BWV578は「小フーガト短調」である。
  7. 幻想曲とフーガ 3曲 BWV537、542、582。
  8. 前奏曲 3曲 BWV568~570。
  9. 幻想曲 2曲 BWV572と573。
  10. アリア 1曲 BWV587
  11. カンツォーナ 1曲 BWV588
  12. パッサカリアとフーガ 1曲 BWV582
  13. パストラーレ 1曲 BWV590

コラールに準拠しないという一点をもって「自由曲」とくくられてはいるのだが、実は完全な自由ではないと感じる。「舞曲」がない。「アルマンド」「コレンテ」「サラバンド」「ジーク」「シャコンヌ」「ブーレ」など、バロック時代を特徴づける舞曲が全く出現しない。

わずかに1曲存在する「パッサリア」を舞曲と分類する人もいる。バッハが「パッサカリア」を舞曲と考えていなかった証拠かと妄想も膨らむ。

チェンバロやヴァイオリンによる「ソナタ」には「教会ソナタ」と「室内ソナタ」があって、それらは「舞曲の有無」により分類されていた。「教会ソナタ」には舞曲を含まぬと。「オルガン自由曲」が真に自由なら舞曲を含んでもよさそうなものだ。「自由」とはいえ、やはり「不文律」があるのだ。

持ち運びの難易度から見て、オルガンで弾かれることイコール教会で弾かれることだ。だから、教会ソナタに舞曲の混入が許されぬことと符合する。オルガン作品に舞曲を忍び込ませることはタブーなのだ。

ここでも舞曲を拒絶する教会という構図が示されている。

2022年6月 9日 (木)

歌と踊り

「歌と踊り」はしばしば使われる言い回しだ。セットで用いられる対の概念である。

キリスト教はしばしば「歌う宗教」と評される。賛美歌、コラールなど歌を歌うことが教義にのっとているとされている。宗教改革のルーターは賛美歌を積極的に取り込んだ。歌うことはかなり重要な位置付けにある。西洋音楽自体がキリスト教の関与無しに発展はあり得なかったと断言してもよもやブログは炎上するまい。

踊りはどうだろう。キリスト教が「歌」を中心に据えた「音楽」を巧みに取り入れているとは言いながら、それはあくまでも歌にとどまり、踊りには踏み込んでいないように見える。

収穫を祝う農民の集まりにこそ相応しいのが踊りである。あるいは、記事「ハルツ」で言及したワルプルギスの集まりは踊りが主体だった。朝まで踊るのだ。

毎度毎度のお叱り覚悟がある。キリスト教が歌に重きを置いているのは、「踊り」がザクセン族古来の信仰のベースにあったからではあるまいか。ザクセン族がキリスト教化の名目で、無理矢理捨てさせられた本来の信仰の中心に「踊り」があったのではないだろうか。キリスト教側から申せば「踊り」が異端宗教の象徴だったのではあるまいか。時代が深まれば反キリスト教の意識は薄れて来ようが、踊りはそれでも世俗の風習にとどまったと見たい。メヌエットやジークなど本来舞曲であった音楽が、踊られない器楽曲となって行くのは、キリスト教文化圏の中では必然だったように思えてならない。

「踊り」にはどこかキリスト教的でないノリを感じてしまう。だから、「教会ソナタ」から舞曲が締め出されていると解したらお叱りを受けるのだろうか。

 

 

2022年4月30日 (土)

ワーグナーを真剣に考える

ブログ「ブラームスの辞書」のゴールまで、はたしてリヒャルト・ワーグナーを特集企画として取り上げずにすむのだろうか。取り上げぬまま10252本の記事が確保出来るなら、それはそれでめでたい。ブラームスとほぼ同時代を生きた大作曲家にして大著述家を本当に取り上げずにすむのか自信が無い。ブラームスが多大な関心を寄せていたということが、取捨の基準だとするなら、ワーグナーは特集企画の対象として完全に視野に入る。論争の当事者だからといって避けて通るのはフェアではない。

しかし現実に私の脳味噌は反応しない。記事確保のために今から彼の音楽や著作に浸かる勇気が無い。うまくゆけば50本くらいにはなるものと思う。

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