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2017年12月 5日 (火)

イエンナーの昼食

グスタフ・イエンナーは、ほぼ唯一と申して良いブラームスの作曲の弟子。彼の残した回想録は、師匠ブラームスを活写していて面白い。

弟子入りした最初の頃、ブラームスとちょくちょく昼食を取ったと証言している。場所は毎度「赤いはりねずみ」だったらしい。ところが程なく自分だけ遠慮したという。その理由が、70~80グルデンの代金を支払うのが苦しかったからだとイェンナー本人が述べている。ほぼ1000円と思って良い。

記事「ランチのご予算」でブラームス本人がウィーンにいる間、ランチに費やす金額が2000円~3000円だと書いた。駆け出しの音楽家にとっては毎日1000円を昼食につぎ込むのが辛かったということだ。

やっぱりブラームスのランチはリッチだったのかもしれない。

2017年10月15日 (日)

ニーチェ

今日はニーチェのお誕生日だ。1844年10月15日に生まれたドイツの哲学者である。

R・シュトラウスの交響詩「ツァラトストラはかく語りき」はニーチェの著作に霊感を得て作曲された。音楽との関係で申すならリヒャルト・ワーグナーである。ニーチェはワーグナーに心酔した。ワーグナーもこれを受け入れ蜜月時代が訪れた。

ニーチェの音楽との関わりは、これにとどまらない。彼は作曲もしたのだ。歌曲とピアノ曲だ。まだある。驚くべきことに彼は自作のカンタータをブラームスに献呈しようと試みた。この動きはニーチェとワーグナー蜜月が去ったことと連動していると指摘されている。案の定ブラームスはこれを辞退する。根に持ったニーチェはそれ以降ブラームスとも距離を置き始めた。

ビューローと似ている。ワーグナーとの蜜月が破綻した後、ブラームスに走るところがそっくりだ。

2017年6月14日 (水)

ラインフランケン

西中部ドイツ方言は、いくつかの方言帯がライン川に貫通される形で南北に堆積している。このうち古くからのワイン産地ラインガウを含む地域で話されるのがラインフランケン方言だ。この方言帯はラインヘッセンからラインガウに向けてライン川を横切る。ここは2010年秋のワイン特集記事の執筆の際、穴が開くほど地図を眺めた地域だ。カール大帝のエピソードが散在する地域でもある。

何のことはない。今でこそ「ラインフランケン方言」と位置付けられているこの地域の言葉は、カール大帝の宮廷で使われていた言葉だった。昔の都の言葉だ。日本で申せば京言葉というイメージに近いかもしれない。

2017年6月13日 (火)

決意の理由

記事「方言詩人」でクラウス・グロートの経歴を紹介した。彼はブラームスの父ヨハン・ヤーコプと同じハイデの生まれだ。彼もホルシュタイン人である。国民学校の教師をしながら独学で詩作を学んだ彼がさらに学ぶためにキールに出立したのが1853年だった。

1853年は第1次デンマーク戦争が終わった翌年だった。まだ決着はついていないもののプロイセンの領土的野心は明らかだった。そうした背景の中で彼が文学を志し、方言に立脚した作品を生み出して行った。低地ドイツ方言やホルシュタイン方言への愛着は、低地ザクセン方言を操るプロイセンへの文学的抵抗なのではあるまいか。ドイツ標準語によらない文学作品を発信し続けたアイデンティティを思い遣りたい。

プロイセンによるシュレスヴィヒホルシュタイン地方の領有が確定した1866年に、キール大学の教授に就任したのはなにやら象徴的だ。

2017年6月 8日 (木)

クラウス・グロート

詩人。1819年生まれの1899年没。

1856年クララ・シューマンによってブラームスと面識を持った。ブラームスと同時代の詩人で、ブラームスの友人とも位置づけ得る。

ヴァイオリンソナタ第1番の第3楽章にそっくり転用されたことで名高い「雨の歌」op59-3は、このグロートによるテキストだ。クララと「雨の歌」の関係をいろいろと調べていて興味深い偶然を発見した。

彼の出身地は北ドイツのハイデという街。実はブラームスの父ヨハン・ヤーコプと同じである。2人の生家はごく近所にあったらしい。確認中だが2、3件隣という情報もある。

グロート本人の回想によれば、グロートが生まれて初めて手にした楽器はピッコロだったという。8歳の時だ。このピッコロはブラームスの父の兄の子、つまりブラームスの従兄弟から譲り受けたものだという。

ブラームスの父は1806年の生まれだ。1825年に19歳でハンブルクに出ているから、1819年生まれのグロートとは、面識があった可能性さえある。少なくとも親同士は知り合いかもしれない。

2017年6月 7日 (水)

方言詩人

記事「文豪たちの話した言葉」でブラームスにテキストを供給した詩人たちの出生地から話し言葉を推定した。同時に話すのは方言でも作品は標準語で書いたのだろうと考えた。

方言関連の書物を調べていると「方言詩人」という言葉に出会う。文学作品を方言で書く人々の意味だと思われる。こういう言い回しがあるということは、すなわち通常は標準語で書くということだ。方言で作品を書くということが珍しいということの裏返しでもある。方言詩人の代表として挙げられていたのがクラウス・グロートだ。

彼の経歴は面白い。国民学校の教師として教壇に立つ傍ら独学で詩作を進めた。その後キールに出て勉強し、37歳でボン大学から学位を得る。学位論文のテーマは「低地ドイツ語の研究」だったというから恐れ入る。つまり筋金入りの方言研究家だ。47歳でキール大学の語学と文学の教授になった。

ブラームスに彼を紹介したのがクララ・シューマンだった。何よりグロートはブラームスの父と同郷でもあった。代表作は「雨の歌」だが、このテキストが低地ドイツ方言なのかどうかさっぱり見当がつかない。

2017年6月 6日 (火)

文豪たちの話した言葉

記事「作曲家たちの話した言葉」でドイツ系の有名作曲家たちがどのような方言で話していたかを推測した。同じ事を作家でやったみた。ただやるだけではつまらないのでブラームスにテキストを供給した詩人たちに限ることにした。

  1. Bodenstedt,Friedrich von ハノーファー生 西低地ドイツ方言
  2. Candidus,Karl August シュトラスブルク生 上部アレマン方言
  3. Daumer,Georg Friedrich  ニュルンベルク生
  4. Eichendorf,Joseff Freiherr  シレジア地方ルヴォビッツ生 シュレジーエン方言
  5. Freminng,Paul ツヴィッカウ生 ザクセン方言
  6. Goethe,Johan Wolfgang von フランクフルト・アム・マイン生 ヘッセン方言
  7. Grohe,Melchior  マンハイム生
  8. Klaus Groth ハイデ生まれ 低地ザクセン方言(平地ドイツ方言)
  9. Herder Johan Gottfried  東プロイセン生 プロイセン方言(東部低地ドイツ方言)
  10. Hayse,Paul von  ベルリン生
  11. Fallersleben,Hoffman von  ファーラースレーベン生
  12. Hollty,Ludwig Christoph Heinrich  ハノーフアー生 西低地ドイツ方言
  13. Kopisch,August ブレスラウ生 シュレジーエン方言
  14. Morike,Eduard  シュヴァーベン生 シュヴァーベン語
  15. Platen,August Graf von アンスバッハ生
  16. Reinick,Robert  ダンツィヒ生
  17. Schack,Adolf Friedrich Graf von  シュヴェリン生
  18. Simrock,Karl  ボン生
  19. Tieck,Johan Ludwig  ハレ生
  20. Uhland,Ludwig  テュービンゲン生

これらの詩人たちは故郷の方言を話しているとすると上記のとおりになる。ブラームスに届けられたテキストが方言で書かれているとは限らない。話し言葉であることが方言の定義であるなら、むしろ文学作品は標準語で書かれている可能性が高い。ブラームス作品のテキストを読んでそれが、方言かどうか判定できるようになったら凄いと思う。

2017年5月19日 (金)

ヴェンカー

Georg Wenker(1825-1911)という言語学者がいる。近代ドイツ方言学の始祖と位置付けられている。民謡におけるエルク、民話におけグリム兄弟に比肩する業績を残した。ドイツ全土およそ40000の学校施設に向けて。40の文例を送付した。地域による語彙、文法の違いをより明らかにするために練り上げられた40の短文で、現在では「ヴェンカーの文例」と呼ばれている。これらの短文を各々地域の言葉に翻訳して送り返させるという手法で、方言の分布を白地図上にプロットしたのだ。

この空前の実験により言語地理学という領域が切り開かれた。ドイツ方言の諸相がヴィジュアル化されていっそう議論が深まることとなった。

独和辞典の末尾には大抵方言の分布図が掲載されている。それには何らかの形でヴェンカーの言語地図が反映している。

2017年1月 7日 (土)

兄弟の分担

グリム童話の編集刊行について兄弟の間の業務分担はどうなっていたのだろう。さまざまな資料からうかがい知ることの出来る彼らの業務分担はおおよそ下記のとおりだ。

  • 長男ヤーコプ 民俗学的見地に立った厳密で広範な収集。
  • 次男ウィルヘルム 過剰な脚色の排除と文学的味わいの両立。
  • 五男ルートヴィッヒ 挿絵。

長男ヤーコプの収集した原稿が今世紀に入ってアルザス地方の修道院で発見された。それと1812年刊行の初版との比較から様々なことが判明した。印刷されたものは、ヤーコプが聞き取った結果そのものとは違っている。ヤーコプの原稿では方言がそのままであったりしたものが、刊行されたものはシンプルな標準ドイツ語になっている。教訓めいた話にならぬよう細心の注意を払いながら、文学的味わいが付与されてもいる。

長男は後日、童話集の刊行について弟の文才によるところが多いと誉める一方。弟は兄さんでなかったらこれほどの質量をもった話を集められなかったと言っている。

文献学的民俗学的な見地から、周到で厳密な手法を用いて数多くの民話を集めたのが兄で、それらに文学的な味わいを付与したのが弟だと捉えてよさそうだ。

こうした兄弟の役割分担をよく見ると、民謡に対するブラームスとエルクの立場の違いを思い出す。文献学的厳密さで民謡を収集したのがエルクだったのに対して、ブラームスはこれに異を唱え、民謡に芸術的価値を付与強調した。グリム兄弟で申せば、兄がエルクでブラームスは弟にあたる。

グリム童話が今尚世界的に愛されている原因をこのあたりのバランスに求めたい。2人が争えば論争になりかねない状況でありながら、学問としての厳密さと文学としての味わいが絶妙なバランスで均衡していると見た。

2016年12月26日 (月)

シシィ特集総集編

エリザベート皇后シシィ特集の総集編だ。

  1. 20161214 皇妃エリザベート
  2. 20161215 巡洋艦カイゼリンエリザベート
  3. 20161216 いとこ 
  4. 20161217 シシィの隣
  5. 20161219 イシュルの恋
  6. 20161220 姉の嫁ぎ先
  7. 20161221  ヘルメスヴィラ
  8. 20161222 ロイヤルウェディング
  9. 20161223 カイザーヴィラ
  10. 20161224 同じ誕生日
  11. 20161225 フォーティフ教会
  12. 20161226 本日のこの記事

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