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カテゴリー「400 人物」の198件の記事

2018年11月 5日 (月)

Bundesmutter

直訳すれば「連邦の母」だ。先月末ドイツ・メルケル首相は政界引退を表明した。12月の党首選に不出馬の意向を示したということだ。首相の座には任期切れの2021年までとどまるものの、その後は政界引退だという。

呆然とした。

自国第一主義、民族差別、難民、テロなど極端な報道が後を絶たない中、毅然と鎮座する母のような存在。それがメルケル首相の印象だった。それを一言で「ブンデスムッター」と表現してみた次第。

私が彼女を贔屓にする理由は3つある。

一つは、彼女が大のサッカー好きだということ。彼女が生観戦したときの代表チームの勝率はとても高いらしい。

次は、彼女の経歴だ。2005年11月22日、ドイツ史上初の女性首相に就任したのは、ブログ「ブラームスの辞書」創設の5か月半後だ。そこから13年、ブログ「ブラームスの辞書」が歩んだ日々はそのままメルケル政権下だった。その間私は3度ドイツを訪れ、ますますドイツに傾倒した。

三つ目は、彼女がハンブルク出身であるということだ。ブラームスと同郷だ。

ブログ「ブラームスの辞書」は、ここに予言する。

彼女はハンブルク名誉市民に列せらるに違いない。1889年ブラームスはすでにハンブルク名誉市民になっている。おそらくは政界引退後になるだろうが、きっと彼女はハンブルク名誉市民になる。

実現のあかつきに、本日のこの記事にドヤ顔でリンクを貼るために、展開中の旅行レポートをためらわずに中断する。

ただただ寂しい。

メルケルさんありがとう。

2018年5月31日 (木)

賛美歌のシューベルト

ヨアヒム・ネアンダー(1650-1680)の「通り名」だ。デュッセルドルフの教会付属ラテン語学校の校長として活躍したが、30歳の若さでブレーメンにおいて没した。賛美歌60編のテキストを残したが、その半数について作曲もした。もっとも有名な「Lobe den Herren,den Maechtgen Koenig」は、バッハのカンタータ120番と137番に採用されているほか、多くの賛美歌が歌い継がれている。

残された作品の美しさと、30歳で早世したこともあって「賛美歌のシューベルト」とあだ名されるにいたる。

存命中、彼はデュッセルドルフ郊外の谷に出かけてしばしば思索にふけったという。その谷はいつしか「ネアンダーの谷」と言われるようになり、やがてそこから古人類の化石が出土した。つまりはそれがネアンデルタール人である。

今日5月31日は彼の命日である。

どこかに「賛美歌のブラームス」はいないものか。

2018年5月17日 (木)

忠敬没後200年

私が日本史上の人物で最も尊敬する人物が伊能忠敬である。実測に基づく最初の日本地図の作成を主導したが、文政元年4月13日74歳でなくなった。これを新暦に直すと1818年5月17日になる。だから今日は没後200年の記念日だ。

ブログ「ブラームスの辞書」カレンダリング上の大問題だった。バッハ没後333年の今年、バロック特集を展開すると、忠敬の没後200年の記念日がその会期内に来てしまう。

やむなく、バロック特集を中断しての言及となる。

2018年5月 5日 (土)

GWマルクス

「GW」はゴールデンウィークではない。

1849年16歳のブラームスが「ロシアの思い出」と題するピアノ連弾作品を出版にこぎつけた。このときは本名を名乗らず、「GWマルクス」というペンネームを用いた。なぜこの名前を選んだのだろう。「マルクス」は恩師「マルクセン」に関係があるのだろうか?

今試しに「GWマルクス」でグーグル検索してみるといい。若きブラームスのペンネームなどヒットしたりはしない。資本論で名高いマルクスの「GWの公式」が大量にヒットする。「GWのGはお金、Wは商品云々」だ。「GWマルクス」は「Marks」であり、資本論のマルクスは「Marx」だが、デューデンの苗字辞典には「Marks=Marx」と書いてある。偶然なら相当怖い。

カールマルクスは1818年5月5日生まれだから、生誕200年のメモリアルデー。

迷った末バッハのトマスカントル就任の記事を前日に押しやっての言及だ。

2017年12月 5日 (火)

イエンナーの昼食

グスタフ・イエンナーは、ほぼ唯一と申して良いブラームスの作曲の弟子。彼の残した回想録は、師匠ブラームスを活写していて面白い。

弟子入りした最初の頃、ブラームスとちょくちょく昼食を取ったと証言している。場所は毎度「赤いはりねずみ」だったらしい。ところが程なく自分だけ遠慮したという。その理由が、70~80グルデンの代金を支払うのが苦しかったからだとイェンナー本人が述べている。ほぼ1000円と思って良い。

記事「ランチのご予算」でブラームス本人がウィーンにいる間、ランチに費やす金額が2000円~3000円だと書いた。駆け出しの音楽家にとっては毎日1000円を昼食につぎ込むのが辛かったということだ。

やっぱりブラームスのランチはリッチだったのかもしれない。

2017年10月15日 (日)

ニーチェ

今日はニーチェのお誕生日だ。1844年10月15日に生まれたドイツの哲学者である。

R・シュトラウスの交響詩「ツァラトストラはかく語りき」はニーチェの著作に霊感を得て作曲された。音楽との関係で申すならリヒャルト・ワーグナーである。ニーチェはワーグナーに心酔した。ワーグナーもこれを受け入れ蜜月時代が訪れた。

ニーチェの音楽との関わりは、これにとどまらない。彼は作曲もしたのだ。歌曲とピアノ曲だ。まだある。驚くべきことに彼は自作のカンタータをブラームスに献呈しようと試みた。この動きはニーチェとワーグナー蜜月が去ったことと連動していると指摘されている。案の定ブラームスはこれを辞退する。根に持ったニーチェはそれ以降ブラームスとも距離を置き始めた。

ビューローと似ている。ワーグナーとの蜜月が破綻した後、ブラームスに走るところがそっくりだ。

2017年6月14日 (水)

ラインフランケン

西中部ドイツ方言は、いくつかの方言帯がライン川に貫通される形で南北に堆積している。このうち古くからのワイン産地ラインガウを含む地域で話されるのがラインフランケン方言だ。この方言帯はラインヘッセンからラインガウに向けてライン川を横切る。ここは2010年秋のワイン特集記事の執筆の際、穴が開くほど地図を眺めた地域だ。カール大帝のエピソードが散在する地域でもある。

何のことはない。今でこそ「ラインフランケン方言」と位置付けられているこの地域の言葉は、カール大帝の宮廷で使われていた言葉だった。昔の都の言葉だ。日本で申せば京言葉というイメージに近いかもしれない。

2017年6月13日 (火)

決意の理由

記事「方言詩人」でクラウス・グロートの経歴を紹介した。彼はブラームスの父ヨハン・ヤーコプと同じハイデの生まれだ。彼もホルシュタイン人である。国民学校の教師をしながら独学で詩作を学んだ彼がさらに学ぶためにキールに出立したのが1853年だった。

1853年は第1次デンマーク戦争が終わった翌年だった。まだ決着はついていないもののプロイセンの領土的野心は明らかだった。そうした背景の中で彼が文学を志し、方言に立脚した作品を生み出して行った。低地ドイツ方言やホルシュタイン方言への愛着は、低地ザクセン方言を操るプロイセンへの文学的抵抗なのではあるまいか。ドイツ標準語によらない文学作品を発信し続けたアイデンティティを思い遣りたい。

プロイセンによるシュレスヴィヒホルシュタイン地方の領有が確定した1866年に、キール大学の教授に就任したのはなにやら象徴的だ。

2017年6月 8日 (木)

クラウス・グロート

詩人。1819年生まれの1899年没。

1856年クララ・シューマンによってブラームスと面識を持った。ブラームスと同時代の詩人で、ブラームスの友人とも位置づけ得る。

ヴァイオリンソナタ第1番の第3楽章にそっくり転用されたことで名高い「雨の歌」op59-3は、このグロートによるテキストだ。クララと「雨の歌」の関係をいろいろと調べていて興味深い偶然を発見した。

彼の出身地は北ドイツのハイデという街。実はブラームスの父ヨハン・ヤーコプと同じである。2人の生家はごく近所にあったらしい。確認中だが2、3件隣という情報もある。

グロート本人の回想によれば、グロートが生まれて初めて手にした楽器はピッコロだったという。8歳の時だ。このピッコロはブラームスの父の兄の子、つまりブラームスの従兄弟から譲り受けたものだという。

ブラームスの父は1806年の生まれだ。1825年に19歳でハンブルクに出ているから、1819年生まれのグロートとは、面識があった可能性さえある。少なくとも親同士は知り合いかもしれない。

2017年6月 7日 (水)

方言詩人

記事「文豪たちの話した言葉」でブラームスにテキストを供給した詩人たちの出生地から話し言葉を推定した。同時に話すのは方言でも作品は標準語で書いたのだろうと考えた。

方言関連の書物を調べていると「方言詩人」という言葉に出会う。文学作品を方言で書く人々の意味だと思われる。こういう言い回しがあるということは、すなわち通常は標準語で書くということだ。方言で作品を書くということが珍しいということの裏返しでもある。方言詩人の代表として挙げられていたのがクラウス・グロートだ。

彼の経歴は面白い。国民学校の教師として教壇に立つ傍ら独学で詩作を進めた。その後キールに出て勉強し、37歳でボン大学から学位を得る。学位論文のテーマは「低地ドイツ語の研究」だったというから恐れ入る。つまり筋金入りの方言研究家だ。47歳でキール大学の語学と文学の教授になった。

ブラームスに彼を紹介したのがクララ・シューマンだった。何よりグロートはブラームスの父と同郷でもあった。代表作は「雨の歌」だが、このテキストが低地ドイツ方言なのかどうかさっぱり見当がつかない。

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