旋律の再使用
既出の旋律が再び用いられること。思うに西洋音楽の構造の根本原理だと思われる。以下にその概念を整理する。
- 主題の確保 主題提示の直後に再び繰り返されること。
- 主題再現 特にソナタ形式の場合の再現部を指す場合もある。ABAまたはABA'で現される三部形式は頻繁に見かける。
- 回帰 ロンド形式やリトルネロ形式では第一主題の回帰が表現の肝だ。
- 有節歌曲 テキストの2番以降で同じ旋律が歌われる。
- 舞曲 大抵は中間部トリオを挟んで冒頭主題が再現される。三部形式の一種。
- 回想 多楽章作品において既出の旋律が別楽章中に現れること。
- 固定概念 ベルリオーズの「幻想交響曲」で名高い。恋人を現す一定の旋律がいろいろな楽章で用いられる。
- ライトモチーフ ワーグナーの考案とされる主題法。情景や人物を指し示す旋律を設定し、ストーリーの進行を音楽で暗示する手法。
- 引用 他者が創作した旋律を用いること。変奏曲の一部でこの手が使われる。
既出旋律の再使用がこれほど頻繁かつ多彩に観察出来るのは何故だろう。そっくりそのままの再使用のみならず、仄めかしや暗示であればさらに多くの実例が加わる。人間の脳味噌が、既出旋律の再出現を喜ぶからとしか説明出来ない。
いわゆるクラシック音楽の世界では、定番の技法だ。たとえばブルックナーはフィナーレの末尾で第一楽章の主題を回想することを自らに課していたかの感さえある。
その意味で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲は異例だ。第一楽章序奏の有名な旋律が同曲のその後の部分には一切出現しない。敢えて序奏旋律を使用しないという奇策に打って出た感じだ。
ブラームスも「固定概念」「ライトモチーフ」を除いて多用している。この手法の取り扱いの手腕において当代一流だった。







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