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カテゴリー「105 テンポ」の99件の記事

2023年10月30日 (月)

微調整

細かな調整という意味だが、物事の最終段階での仕上げというニュアンスを含む場合もある。各方面に気を配りながら、全体のバランスに配慮するのは日本的な感覚と感じる。

ブラームスの交響曲4曲、全16楽章のうち、管弦楽のオリジナル版と本人編曲の連弾版の発想記号を比較すると、1箇所だけ相違が見つかる。第4交響曲の第1楽章だ。

  • オリジナル Allgero non troppo
  • 連弾 Allegro non assai

困った。どちらが速いのか判らない。オリジナルの方「Allegro non troppo」は「アレグロの過剰をそぎ落とせ」というブラームスのソナタ楽章独特の表現だ。難解なのは連弾版の「assai」である。「assai」の全用例は下記の通りだ。

  1. 弦楽四重奏曲第2番第4楽章冒頭 Allegro non assai
  2. 交響曲第2番第3楽章33小節目 Presto ma non assai
  3. 交響曲第2番第3楽章126小節目 Presto ma non assai
  4. ピアノ三重奏曲第3番第2楽章冒頭 Presto non assai
  5. クラリネット五重奏曲第3楽章34小節目 Presto non assai ,ma con sentimento
  6. インテルメッツォop118-1 Allegro non assai ma molto appassionato

すぐに気付くのは「Allegro」または「Presto」という速めの用語に付着していることと、必ず「non」が先行した「non assai」と言いまわされていることだ。「assai」単独ならば「非常に」とか「十分に」という意味で、主たる単語の意味を煽る機能があるのだが、「non」が先行することで、雲行きが怪しくなる。

ブラームスは管弦楽や合唱など大規模作品の適正なテンポをピアノ編曲で演奏して測定しようとすると、楽器の特性から、大抵は不必要に速くなると警告を発している。

つまり管弦楽のピアノ編曲は、オリジナルより演奏が速くなるとブラームスが言っているのだ。第4交響曲ピアノ版第1楽章の「Allegro non assai」は、「Allegro non troppo」以上にテンポの上がり過ぎを戒めていると解したい。

2023年10月19日 (木)

速過ぎを恐れる

ブラームス作品の楽譜を多彩に縁取る用語には、いくつかの傾向が見て取れる。「non troppo」「poco」「moedrato」のような抑制語の頻発だ。さらには「~etto」「~tino」のような縮小語尾の多用も認められる。一方で「molto」のように意味を煽る用語の使用は、限定的である。

今述べたような用語使用の癖は、テンポ面においては常に「テンポを抑える」方向で使用されている。「non troppo」は大抵allegroやprestoを修飾している一方、「molto」はその逆でallegroやprestoをほとんど修飾しない。

どうもブラームスは自作の速過ぎる演奏を恐れていた節がある。かといって過剰な遅さを容認していたことにはならないまでも、リスクの量と重大さにおいては「速過ぎ」の方が深刻だったと考えていたようだ。

ブラームスの作品は、他の作曲家だったら、5小節かけて表現することを1小節で済ませるかのような表現の濃縮が売りである。1音で済むところは2音以上使わないという種類の節約が肝である一方、それらをけしてプアな印象に直結させない質感が本領だ。音楽の質としてこれらを有するということは、単位時間あたりの音楽の密度が濃いことに繋がる。「ここは絶対に聞かせたい」という類の見せ場が作品中高い頻度で訪れるとでも言っておこうか。和音進行であったり、旋律美であったり、対旋律とのからみであったり、リズムの錯綜であったり、ヘミオラであったり、聴き手や弾き手への謎かけであったり、景色は様々ながら、あの手この手で見せ場を用意するのだ。

だからである。だから、古典派時代のような、いわゆる「一陣の風が吹き抜けるようなallegro」で走り抜けては、そうした濃さを表現しきれないリスクがあるとブラームス自身が悟っていたのだろう。無論、ベタベタの遅過ぎを手放しで認めたりはしないだろうが、速く走り過ぎてはせっかくの景色が楽しめないというブラームスの警告が用語使用面に現れていると感じる。

「速過ぎるな」と言っているだけで「遅くしろ」とは言っていないということは、常に留意されねばならない。やたらに遅くて重い演奏を「ブラームス風」あるいは「重厚」などと称して持ち上げ過ぎるのは論外ながら、ブラームスが用語使用面においては「速過ぎ」を恐れていたことは覚えておきたい。楽譜上に記した用語の意味合いを考え、楽譜を総合的に吟味すれば、テンポは必然として一定の領域に着地するというブラームスの考えを想定せざるを得ない。

2023年9月 3日 (日)

テンポ表示としての拍子

BWV540ヘ長調のお話。大好きな作品だけに、基本的な疑問がある。
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なぜ8分の3拍子なのだろう。音価が2倍に延ばされた4分の3拍子でもよさそうなものだ。あるいは2小節一組として8分の6拍子でもいいのではないか。オルガン作品においては珍しい拍子だ。
この音楽に8分の3拍子を採用したバッハの脳内基準は何だろう。作品冒頭に発想記号も、ダイナミクス表示もない。この作品に向き合うオルガニストの注意は、フラット1個の調号と、8分の3拍子、そして楽譜1ページ目に横たわるペダル踏みっぱに向けられるに違いない。繰り広げられる楽想は左右の手による精密なカノンだ。16分音符の織り成す刺繍のよう。譜面づらによるテンポ指定ではないのか。16分音符の連続により譜面が黒っぽくなるという視覚効果とともに遅く弾かれることを戒める意味が、この8分の3拍子にありはしないか。

2022年7月 3日 (日)

無意識の結晶

音楽作品は作曲家の創意の結晶である。これは疑えない。それが注文による作曲であったにしてもだ。もちろんその楽譜上に記載される楽語の選択も含めて、作曲家その人の意思の発露である。作品を世に問う手段としての楽譜出版の位置づけが重みを増せば増すほど、楽譜上に記される楽語の重要性もまた高まっていくことは確実だ。

さて、そうした作品がある程度たまってきたとして、作曲家はそれを手元において常に参照しただろうか。もっというならそこで用いられた楽語をカウント集計していただろうか。

おそらく答えは「No」だ。つまり作品自体はそこに書かれる楽語含めて意思の反映であるのに対し、作品群中の楽語の使用頻度までは意識されてはいるまい。250年後の極東日本の愛好家がまさか数えるとは思ってもいないはずだ。

だから楽語使用の頻度は、作曲家の無意識の反映だ。だからこそヴィヴァルディの「ALA」への固執は、個性の反映であると解し得る。

 

 

 

 

2022年7月 2日 (土)

テレマンのALA

「Allegro」が「Largo」を挟む楽章構成を持ったコンチェルトがヴィヴァルディには頻発するのにバッハではちっとも見かけない現象を追いかけている。協奏曲の数がさほど多くないバッハだから仕方ない面もあるとして、多作家として名高いテレマンで試すことにした。

テレマンの協奏曲は全部で112曲あるから、楽しみにしていたのだが、テレマンの場合、協奏曲が4楽章になっているケースが多く、肩透かしをかまされた感じ。全112曲の協奏曲のうち3楽章構成を採用するのはわずか31曲に過ぎない。

本日話題のALA型はたった1曲にとどまる。オーボエ協奏曲変ホ長調TWV51:Es1だけだ。緩徐楽章に「Largo」が用いられないわけではなく、「Allegro」に挟まれないということだ。

2022年7月 1日 (金)

タルティーニさんの事情

タルティーニのヴァイオリン協奏曲125曲について急緩急3楽章の発想記号がどうなっているか調べている。「ALA」はわずか14%程度。しからば何が多いのか。

「急緩急」のうち、両端の「急」については「Allegro」がほとんどで、変わるとしても「Presto」だ。この点はヴィヴァルディと大差ない。問題は中間の「Largo」が、どう差し替わるかだ。そこで両端を「Allegro」で固定し、中間楽章のバリエーションを調べた。

  1. Adagio    20
  2. Andante   22
  3. Cantabile   1
  4. Grave    16
  5. Largo    16
  6. Sostenuto  1
  7. 無表示    2

バランスが取れていると申し上げていいだろう。「Sostenuto」を除けば顔ぶれはヴィヴァルディと大差ない。ヴィヴァルディの「Largo」への固執だけは確実だろう。

2022年6月30日 (木)

タルティーニのALA

イムジチのヴィヴァルディボックスのブックレットを頼りに、ヴィヴァルディのコンチェルトにおける、楽章冒頭の発想記号を分析してみた。となるとヴァイオリン協奏曲全集のブックレットを頼りに同じことをタルティーニでやりたくなった。

まずは総数を125曲と押さえる。ここから3楽章ではないケース12曲が脱落するから113曲だ。ここでまずは軽い驚きがある。ヴィヴァルディやテレマンは様々な独奏楽器の協奏曲があったが、タルティーニの113曲はすべてヴァイオリン1本の独奏だ。

さてこのうちプレーンの「Largo」が、これまたプレーンの「Allegro」に挟まれた「真正ALA」は6曲しかない。

  1. D  29 ニ長調
  2. D  55 ホ長調
  3. D  59 ヘ長調
  4. D  93 イ長調
  5. D116 変ロ長調
  6. D117 変ロ長調

「Allegro」「Largo」が何かに修飾されている形「疑似ALA」まで含めると下記10曲が加わる。「Larghetto」2曲をこれに含めている。

  1. D   5 ハ長調
  2. D 13 ハ長調
  3. D 18 ニ長調
  4. D 25 ニ長調
  5. D 36 ニ長調
  6. D 81 ト長調
  7. D 87 ト長調
  8. D 88 イ長調
  9. D123 変ロ長調
  10. D125 ロ短調

合計16曲14%少々の構成比でしかない。ヴィヴァルディとは大違いだ。

2022年6月29日 (水)

バッハのALA

ヴィヴァルディのコンチェルトに「Allegro」「Largo」「Allegro」という3楽章構成がやけに多いと書いた。じゃあバッハはどうなのかというのは自然な展開だ。そもそもバッハのコンチェルトはヴィヴァルディほど多くない。

BWV1055のチェンバロ協奏曲が、疑似ALAに相当するくらいしか見当たらない。楽章冒頭の発想記号なしというケースも大変多い。緩徐楽章に「Largo」系の用語が出るには出るが、「Allegro」にサンドされない。

 

 

 

 

2022年6月27日 (月)

Largo代替

ヴィヴァルディの協奏曲において第1楽章や第3楽章において優勢な「Allegro」の代替にどんな用語が使われているかを調べたばかりだ。ほぼ「Presto」だと推定できる。しからば第2楽章で「Largo」の代わりになっているのはどんな用語か調べた。それぞれの用語のプレーンばかりではなく含むケースも全部カウントした。

  1. Adagio      21曲
  2. Andante 16曲
  3. Cantabile 2曲
  4. Grave  10曲
  5. NO INDICATION  2曲

全部で51曲だ。ラルゴとその仲間たちで88曲あったから、ラルゴ主体は動じないが第1楽章や第3楽章における「Allegro」への固執っぷりに比べれば数段自由。ここで注目は「Andante」だ。ヴィヴァルディが「Andante」を遅い概念だと思っていた証拠だ。「急緩急」の中間楽章に据える以上遅い概念でなければならぬ。

ブラームスの器楽曲では数の上で「Adagio」と「Andante」が拮抗する。「Grave」や「Largo」は少数派である。

2022年6月26日 (日)

Allegro代替

イムジチのヴィヴァルディボックスのブックレットはつくづく役立つ。本日もそこから。収録されている協奏曲は150曲。3楽章制でないもの6曲を除去して144曲がベースだということを念頭に以下のリストをご覧いただく。

  1. 151 Presto
  2. 163 No indication
  3. 173 op6-4 Largo-Allegro
  4. 196 op4-10 Spiccato
  5. 298 Spiccato e non presto
  6. 358 Adagio-Presto
  7. 446 No indication
  8. 483 Presto
  9. 485 Presto
  10. 496 No indication
  11. 542 No indication

結論から書く。144曲のうちこれら11曲だけが第一楽章に「Allegro」が来ない。逆に申せば残り133曲92.4%は第一楽章を「Allegro」または「Allegro+α」で立ち上げている。第三楽章が「Allegro」でないケースは全部で19曲ある。第一楽章よりは落ちるもののこれもかなりの構成比だ。「Allegro」代替はほぼ「Presto」と断言できる。

 

 

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