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カテゴリー「170 楽器」の14件の記事

2021年4月28日 (水)

四段鍵盤

北ドイツで隆盛を誇った大オルガンとは、複数のオルガンの集合体と目される。演奏者はコンソールと呼ばれる演奏台に座ったまま、手元の鍵盤を弾き分けることで複数のオルガンを操作できるという寸法だ。鍵盤の数は足鍵盤を除いて概ね2~4だ。

各々の鍵盤はそれぞれ別のパイプ群を操作し、パイプの位置や機能によって、およそ以下のように命名されている。

  1. ハウプトヴェルク 主鍵盤と訳され、奏者頭上のパイプが鳴る。
  2. オーバーヴェルク 文字通りハウプトヴェルクのさらに上にパイプが据えられる。
  3. リュックポジティヴ 演奏者の背後。これにより聴衆から演奏者が隠れる。
  4. ブルストヴェルク ハウプトヴェルクの下、奏者の胸の位置にパイプが置かれる。

三段の時は、これらのうち大抵ブルストヴェルクかオーバーヴェルクが省かれる。18世紀後半以降リュックポジティブを欠くオルガンが建造されるようになる。もちろんこのほかに足鍵盤が装備されており、奏者両翼にパイプが屹立する。

20190312_110916
概ねこんな感じか。

いやはや今となっては懐かしい、ハンブルク・ヤコビ教会シュニットガー制作の大オルガンは四段鍵盤らしいのだが、同地を訪れたときに演奏台の写真が撮れていない。

 

 

 

 

 

2017年10月29日 (日)

第2ヴァイオリン

ヴァイオリンの初心者が楽器屋さんに行って「第2ヴァイオリンはありますか?」と言ったという小咄もいささか語り尽くされた感がある。

一般にオーケストラや弦楽合奏ではヴァイオリンが2つのパートに分かれる。より目立つ方を「第1ヴァイオリン」と呼び、そうでない方と「第2ヴァイオリン」と呼び習わしている。定義に決定版があるとは思えない。「旋律・伴奏」「音高」「主役・脇役」どれをとっても例外が発生ししまう。第1ヴァイオリンのオクターブ下で旋律をトレースしたかと思うとヴィオラとともにひたすら刻むということも少なくない。俗にこのパートが上手いオケは上手いという伝説があるが有効な確認手段が無い。

私が大学オケに入団した頃、第2ヴァイオリンに伝説があった。「昔は上達しない奴をヴィオラに出していた」という無惨なものだった。実際にはメンツの足りないヴィオラをヴァイオリン弾きが交代でフォローしていたという事実の反映だと思われる。最初からヴィオラの私はいったいどうなるのだろう。

ブラームス作品の中で第2ヴァイオリンの見せ場を探したが、ヴィオラに比べるとあまり多くないと感じる。私がヴィオラ弾きのせいかもしれない。

2017年8月17日 (木)

6度のティンパニ

ティンパニの調律について興味深い話がある。

「ネーニエ」op82だ。この作品はニ長調だというのに、1対のティンパニは「嬰ハ」と「嬰ヘ」に調律される。これにもまたカラクリがある。中間部で嬰ヘ長調に転ずるのだ。これなら主音と属音だ。つまりネーニエの作品冒頭でブラームスは、ティンパニに対して、中間部の調を見据えた調律を要求しているということになる。調性配置のプランを先に告白しているようなものだ。それでいて中間部に至る前にもティンパニに出番があるところが、絶妙なところだ。しかも2箇所だ。

74小節目コードネームで言うと「A→F♯m」という進行の中でティンパニが「嬰ハ→嬰ヘ」と差し込んで来る。次が82小節から「Hm→C♯」という進行の中で「嬰ヘ→嬰ハ」とたたみこむ。

そして中間部では晴れて主音、属音として「嬰ヘ」「嬰ハ」を活躍させた後、ニ長調の再現部を前に、ブラームスは「嬰ハ」を「ニ」に変更させたと思われる。断言できないのには理由がある。楽譜いくら見ても「嬰ハをニにせよ」と書いていない。書いていないのに157小節目でいきなり「ニ音」がティンパニに現れてしまう。冒頭でデフォルトされた「嬰ハ」の半音上の音だ。だから仕方なく「嬰ハ」を「ニ」に変更したと推定した。

これで「ニ」と「嬰ヘ」になる。ニ長調であれば「ニ」と「イ」というのが自然だが、それだと2個のティンパニを両方変えねばならない。手間を考えたわけでもなかろうが「嬰ハ」だけを半音上げることで「ニ」を調達し、結果として「嬰ヘ」「ニ」という6度関係に持っていったということになる。残念なのは、その再現部の中で「嬰ヘ音」の出番がないことだ。

1対のティンパニが6度に調律されるというのは、なかなかロマンティックな感じがする。

2015年6月15日 (月)

電子ピアノの限界

転勤族をしている間、電子ピアノは重宝だった。サイズは手ごろだし、調律もいらない。

けれどもピアノ四重奏曲第1番第4楽章を練習しているとき、妻が困ったと言い出した。また鍵盤の数が足りない話かと思ったがそうでもない。いくら練習しても一定のテンポ以上早くは弾けないらしい。

ピアノでも電子ピアノでも一旦押した鍵盤から手を離すと、鍵盤は元に戻る。何度繰り返しても同じだ。電子ピアノは本物のピアノに比べてこの時の元に戻るスピードが遅いのだという。どんなに練習して早く弾けるようになっても、鍵盤が元に戻るスピードより早くは弾けないというのだ。ピアノ四重奏曲第1番第4楽章には46小節目でピアノにはじめて16分音符が現れるが、このことを言っている。80小節目以降115小節目までの16分音符も相当なモンである。

CDで聴く限りアルゲリッチなどは相当なテンポで弾いている。この曲に限らねば速いテンポの16分音符はもっとある。キーシンのハンガリア舞曲も大変なものだ。つまり猛烈なテンポで弾かれるそばから、次々と鍵盤が元の位置に復帰しているということなのだ。ピアノはピアノで、そのグレードによって性能に違いもあるのだろうが本物のピアノは大したものである。

ピアノのメカニックの精度と耐久性には今更ながら驚くばかりである。

そうそう、今日は亡き妻の誕生日だ。

2015年5月13日 (水)

緩める

弦楽器のチューニングにおいては、弦の張りを緩めると低い音を得ることが出来る。当たり前の話だ。実際に音を出しながらペグやアジャスターを回すが、「これにて決定」の瞬間は張ることで迎えるのが原則。緩めてチューニングを終えてはいけないという。

さて、世の中にはそのチューニングを演奏中にしなければならない曲がある。シューマンのピアノ四重奏曲の第3楽章だ。曲の末尾でチェロに実質16小節の休みがあり、その途中でC線を緩めてB音が出せるようにしろというのだ。プロの演奏家は実際の演奏会でどうしているのだろう。休みといっても他のパートは音を出しているから、邪魔にならぬように弦を緩めて、さらに開放弦でB音が鳴るようにキッチリと合わせねばならない。現実的ではないような気がする。

さらに不安なのは、続くフィナーレ第4楽章の冒頭に、このC線についての言及がないことだ。そのままB線状態を放置するのか、やっぱりC線に戻すのか判らない。書かんでも判るから書いていないのだとは思うが、一言挨拶が欲しいところである。

さて、コミックの世界ではもっと凄い例がある。

泣く子も黙るロングセラーの話だ。神業を誇る超A級スナイパーが主人公のあの作品だ。

古い話だが、1989年に刊行された単行本75巻に「G線上の狙撃」という話が載っている。バッハの「G線上のアリア」演奏中、主人公にG線を狙撃された、これまた世界的なヴァイオリニストがとっさにD線を緩めてG線の代わりとし、何事も無かったように演奏を続けたとある。

シューマンの四重奏の場合はCをBにする1音の下げだったが、こちらは5度の下げだ。実際にG音を出すことが出来ぬとは言えまいが、弦の張りが弱すぎて話にならないと思うがいかがだろう。もし弾けたとしても名人に相応しい音にはならないと思う。

このコミック自体は無論フィクションだが、時代背景や場面設定の緻密さが売りだ。それでもこの「D線緩めのG線化」には承伏しがたい矛盾を感じる。もしG線の代わりにE線が撃たれて、それでもA線ハイポジションを駆使して最後まで弾ききったという話だったら、ワンランク上の説得力を獲得していたに違いない。

ブラームスの室内楽へのこじつけに失敗したのでせめて、5月13日に公開してお茶を濁す次第である。

2014年12月 9日 (火)

ピッコロ

「小さなフルート」のこと。フルートよりオクターブ高い音が出る。ブラームス作品での登場は以下の通り。

  1. 管弦楽のためのセレナーデ第2番op16
  2. ドイツレクイエムop45
  3. カンタータ「リナルド」op50
  4. ハイドンの主題による変奏曲op56
  5. 大学祝典序曲op80
  6. 悲劇的序曲op81
  7. ピアノ協奏曲第2番op83
  8. 運命の女神の歌op89
  9. 交響曲第4番op98

意外と多い。その他ト短調ピアノ四重奏曲のシェーンベルク編にもピッコロがある。

ウイーンのカフェに一歩足を踏み入れると、「ピッコロ」は「小さなフルート」の意味ではなくなる。小さなカップをピッコロと言う場合もあるが、何と言っても見習い給仕のことを指すのが一般的だ。普通の給仕はケルナー「Kellner」といい、給仕長は「Ober Kellner」となる。気をつけねばいけないのが呼びかけで、その給仕がどれほど若造であっても「ピッコロ」と呼びかけてはいけないそうだ。客が呼びかける時はどんな若造にでも「Herr Ober」(給仕長の短縮形)と呼びかけるのがしきたりらしい。

2011年10月18日 (火)

Instrumentenquodlibet

ドイツ語はとかく単語の綴りが長くなる。英語ならばスペースを挿入して別単語にしそうな場面でも、かたくなに連結を好む。本日のタイトルもそうだ。「Instrumeten Quodlibet」とするだけで数段スッキリするのだが。

昨日話題にした「Quodlibet」(混成曲)だ。ドイツ民謡を調べていたら思わぬお宝があった。本日のお題はその民謡のタイトルだ。大学オーケストラで小中学校を訪問して演奏を披露することがあった。そのとき楽器紹介をする。これがなかなか受けがよろしくコンサートの呼び物になっていた。本日の民謡は楽器は全く登場しないが、合唱でまさに「楽器紹介」を再現している。4分の3拍子のやや遅めのワルツといった感じだ。

描写される楽器は出現順に以下の通り。

  1. コントラバス 全員合唱で「それではコントラバスくんが始めると」と歌った後、合唱のバスパートが「plum plum plum」と歌い出す。小節の頭にピチカートを差し込むというイメージだ。
  2. ヴィオラ やがて全員合唱で「次はヴィオラ君の出番だ」と切り出されるから楽しみにしていたら、コントラバスのブンに続けて「チャッチャッ」とかぶせる役割だった。コントラバスの「plum plum plum」が続く中、2拍目と3拍目に「Schrum Schrum」と差し込む。現実のオケでもワルツやポルカでのヴィオラは後打ちが多いから、やけにリアルで吹いた。
  3. ファゴット 鷹揚な付点2分音符を「バーバーバー」とやってバスを補強。
  4. クラリネット 地味な対旋律という位置づけで、ここまでの4つがベースという感じ。
  5. ヴァイオリン やっと旋律が出る。
  6. ホルン 全体を覆い尽くす和音の仕上げという感じ。
  7. フルート 8分音符のきらびやかな装飾だ。文字で書くと大したことはないが、これが事実上のコロラトゥーラだ。ソロならともかく合唱だと難儀だろう。

上記1から順に全員合唱を挟みながらパートが増えて行く。混声7部合唱になる。これを本当に楽器でやったら精巧な「楽器紹介」になると思う。

さらにこの楽器リストを眺める。チェロの脱落に目をつむればブラームスが好きそうなメンバーだと感じる。

2010年6月 2日 (水)

ハルモニウム

ほぼ、リードオルガンと思っていい。厳密には異論もあろうが「ほぼ」足踏み式リードオルガンのイメージである。19世紀後半の欧州では、かなり普及していた。ピアノに比べて、軽い、安い、調律不要などのメリットが受けていたと思われる。パイプオルガンの代用としての用途もあったらしい。

舐めてはいけない。ドヴォルザークはハルモニウムを含む室内楽作品を残している。マリチコスチop47がそれだ。ヴァイオリン2、チェロとハルモニウムである。

さらに調べていたらお宝情報にめぐり合えた。

ブラームスのヴァイオリンソナタ第1番と2番の両方の第1楽章が、ハルモニウムとピアノの二重奏に編曲されていた。もちろんブラームス本人ではなくて、アウグスト・ラインハルトという人の編曲だ。

どこかでCDを出していないものか。

2008年1月18日 (金)

移調楽器

オーケストラを構成する管楽器には「移調楽器」と呼ばれる一群が存在する。理屈は難しいのだが、幸い見分け方は簡単だ。総譜を見て、弦楽器と違う調号が付いている楽器が移調楽器である。クラリネット族、ホルン、トランペットがその代表だ。

クラリネットにはA管(アーかん)とB管(ベーかん)の2種類がある。♯も♭付かない調号でドレミファソラシドと吹くとAdurになってしまうのがA管で、同様の条件でBdurになってしまうのがB管だ。楽器に元々♯3個や♭2個が刷り込まれているような感覚である。Cdurの曲を演奏する場合、A管には♭3個を、B管には♯2個を付加することになる。A管はB管より約1cm長いそうだ。

A管B管2種のうちどちらを使うかは大抵作曲家が指示する。演奏家はその指示に従って持ち替えるという訳だ。

作曲家がA管B管のどちらを指定するかについての基準はあったのだろうか?考えられる基準を以下に列挙する。

  1. 「シャープ系の調の曲はA管、フラット系の調の曲はB管」演奏が楽になる。
  2. 「曲想が渋目、しっとり目はA管、華麗系はB管」曲想と音色がマッチする。

上記の併用もある。クラリネットが主役を張る曲では、使いたい管種に合わせて調性が選択されていた可能性も高い。ブラームスのホルン三重奏曲にはホルンにEs管の指定がある。同三重奏曲の調性は第1楽章から順にEsdur、Esdur、Esmoll、Esdurだ。Es管のホルンに配慮した疑いがある。

1番の基準はとても明快だが、曲の途中での持ち替えも頻繁になる他、ハ長調、ヘ長調あるいはト長調あたりは悩ましい。2番の基準は判ったようで判らない。「音色と曲想のマッチ」と言われても実は、判断基準が曖昧である。

そこでブログ「ブラームスの辞書」名物の実地検証を試みた。ブラームス作品でクラリネットに出番がある作品64曲についてA管B管どちらが使われているかを検証した。楽章で1曲とカウントした。一応クラリネットが降り番の第1曲を除くドイツレクイエムもカウントの対象とした。

対象64曲で弦楽器に対する調号の合計は133個である。ト長調は♯1個なので1。ヘ長調も♭1個なので1だ。ハ長調とイ短調はゼロ。ロ長調だと5になる。133というのはこうしてカウントした数の合計だ。対象曲に対してクラリネットに与えられた調号は81となった。このことは上記の仮定1番を裏付けている。クラリネットの管種は調号が少なくなるように選ばれている。原曲より調号が増えてしまうのは、以下の通りだ。

  1. 管弦楽のためのセレナーデ第1番第4楽章ト長調のB管(♯3個)
  2. 管弦楽のためのセレナーデ第2番第3楽章イ短調のB管(♯2個)
  3. ドイツレクイエム第5曲ト長調のB管(♯3個)
  4. 交響曲第2番第3楽章ト長調のA管(♭2個)
  5. 交響曲第3番第2楽章ハ長調のB管(♯2個)
  6. 交響曲第4番第1楽章ホ短調のA管(♭2個)
  7. 交響曲第4番第4楽章ホ短調のA管(♭2個)
  8. 二重協奏曲第1楽章イ短調のA管(♭3個)
  9. クラリネット三重奏曲第1楽章イ短調のA管(♭3個)
  10. クラリネット三重奏曲第4楽章イ短調のA管(♭3個)

思った通り「♯1個」か「♯♭無し」の調に集中している。

ドイツレクイエムは面白い。ニ短調の第3曲とハ短調の第6曲では、平行長調のニ長調やハ長調に合わせて調号を設定し、実処理は臨時記号で逃げることで調号増を抑制している。

創作史の前半、第1交響曲までは、多楽章曲の同一曲中で必ずA管B管の持ち替えが発生している。逆に第2交響曲以降は、同一曲中での持ち替えがヴァイオリン協奏曲を例外として発生していない。

面白いことはまだある。管弦楽のためのセレナーデ第3楽章、交響曲第4番第3楽章、二重協奏曲第3楽章の3箇所において、なんとクラリネットinCで書かれている。昔はC管のクラリネットがあったのか、AでもBでも可能の意味なのか判然としない。64曲からこの3曲を除いた61曲の内訳はA管29曲に対してB管が32曲だ。数も拮抗している上に時期的な偏在や長調短調に起因する偏りも見られない。

最晩年のクラリネット入り室内楽に目を移す。三重奏曲と五重奏曲はA管、ソナタはB管になっている。リヒャルト・ミュールフェルトは両方持っていたようだ。

最近最大の疑問は、例によってコミック「のだめカンタービレ」だ。単行本12巻の表紙に描かれたクラリネットはA管だろうかB管だろうか。

2007年12月17日 (月)

古楽器をどうする

最近感じるおバカな疑問がある。

バッハがトマス教会のカントルに就任した1723年はカンタータの作曲と演奏が多かったハズだ。このとき演奏に用いられた楽器は、制作後何年経過したものだったのだろう?仮にである。仮に1720年制作の楽器が使われたとする。現代の古楽器演奏はそれをどう再現するのだろう。制作後3年の楽器で演奏されるのだろうか?それとも今となってはざっと300年前となる1720年制作の楽器をかき集めるのだろうか?当時の製法を忠実に再現したレプリカというのが現実的なのだと思う。バッハの当時の弦楽器は、制作何年後の楽器が平均値なのだろう。あるいは人によりまちまちだったのだろうか。古楽器演奏のための時代考証では、そのことが突き止められているのだろうか。弦楽器の奏者全員が同じ制作年の楽器を使うというのもリアルではなさそうだ。使用楽器の制作年のバラツキは考証上どのような扱いなのだろう。

古楽器演奏と言われるジャンルのコンセプトは「作曲された当時の演奏の忠実な再現」とされている。信仰の自由にも近い。もちろん厳密な歴史的事実と必ずしも一致していなくてもいいようだ。バッハはレプリカ楽器なんぞ使っていなかったに決まっているからだ。つまり「当時の再現」と申しても、現実に再現が試みられるパラメータと、試みられないパラメータが暗黙の内に決められているということだ。業界の自主規格でもあると話は早いのだが。

ブログ「ブラームスの辞書」として当然の疑問は、ブラームスはバッハ作品の演奏に際してどう考えていたのかだ。そもそもブラームスの時代に、現在のような古楽器という概念があったのかというところから始めねばならないのかもしれない。

ブラームスがバッハ作品を編曲するにあたっては、出来るだけ原曲の風合いを保存することを心がけていたことは既に何度か言及した。しからば、編曲ならぬ演奏ではどうだったのかというのは避けて通れぬ疑問だ。バッハの演奏のためにレプリカ楽器をかき集めたのだろうか。

ロマン派的感覚にドップリ浸かった解釈の演奏は固くお断りだったことは、想像に難くないが、バッハの在世当時の演奏の再現にこだわったかというとそうでもない。バッハの真意には敬意を払いながらも、演奏現場の実態や聴衆の耳にも下記の諸点で配慮した形跡がある。

  1. 通奏低音における即興性の扱い
  2. トランペットのハイノートや高速パッセージの扱い
  3. カンタータ演奏への女声の参加
  4. カンタータにおけるオルガンとチェンバロの併用

80年の間一般には忘れ去られていたせいで、演奏の形態の復元には、当時最先端の学者たちでさえ手を焼いていた。バッハへの敬意、演奏現場での経験、バッハ様式への精通、作曲の能力などの諸点について、高い水準でバランスがとれていたブラームスは、理論と実技の刷り合わせに多大な貢献をしたと思われる。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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