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カテゴリー「300 作曲家」の118件の記事

2022年8月 8日 (月)

コレルリヴァリエーション

ラフマニノフが1931年に作曲した「コレルリの主題による変奏曲」op42だ。主題はコレルリの「ヴァイオリンソナタ」op5-12というより「ラフォリア」ニ短調だ。古来有名な旋律で、コレルリの作ではないが、最も有名な「ラフォリア」に敬意を表したということなのだろう。

ピアノの名人芸を堪能する作品になっている。

 

 

 

 

2022年8月 5日 (金)

芋づる式

一つのことをキッカケに、関連する事項が次々と明らかになることくらいの意味だ。

ヴィヴァルディと言えば我が国ではバロック音楽を代表する不動の位置づけにある。ところが、バッハ同様長らく忘れられていた作曲家でもある。19世紀後半に訪れたバッハ再興の動きは、バッハ作品の研究面で飛躍的な発展を見せた。バッハは研究熱心で、他の作曲家の作品を編曲することが多かった。そのターゲットの中にヴィヴァルディがいたのだ。バッハルネサンスの展開の中から芋づる式に復活したのがヴィヴァルディという訳だ。「あのバッハがこれほど熱心に編曲しているのだから、さぞ立派な作曲家だったのだろう」というノリかもしれない。

遠い将来。

ブラームス研究を志す人が、ブラームスについて知見を深める活動の中から私の本やブログが芋づる式につり上げられることがあるかもしれない。

いつ釣り上げられても恥ずかしくないように、ピチピチと元気なブラームスネタを発信し続けたい。

2022年6月 5日 (日)

Hortus musicus

ヨハン・アダム・ラインケン(1743-1722)の室内楽作品で「音楽の園」という訳が定着している。編成はヴァイオリン2本とガンバ、そして通奏低音だ。ラインケンの作品はオルガン中心なのだが、これはうれしい例外だ。30の小曲の集合体なのだが、5曲ずつにグルーピングされており、事実上6曲の室内楽だ。

その構成は下記の通り。

  1. ソナタ
  2. アルマンド
  3. クーラント
  4. サラバンド
  5. ジーク

このうちの1楽章「ソナタ」は、前奏曲、フーガ、アダージョ、アレグロに細分される。驚くべきは2楽章以降の舞曲構成だ。「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」「ジーク」という配列はドイツにのみ有効と思われる「伝フローベルガーの配置」と一致する。

バッハは全30曲のうち、1~6番および11~15番の全11曲をチェンバロ独奏用に編曲している。ラインケンへの敬意を感じさせる。

2022年4月28日 (木)

持ってる人

絶対音感について調べている過程で、お宝情報に遭遇。出版館ブック・クラブ刊行「大作曲家が語る音楽の創造と霊感」という本の232ページ。ブラームスと同時代の作曲家ブルッフが絶対音感について語っている。

ブルッフは「ブラームスには驚くほどの絶対音感があった」と証言する。一方でワーグナーには無かったと断言する。ユリウス・シュトックハウゼンはこれを得ようと努力したが叶わなかったとも語っている。

多くを語ったという文脈から「たとえばこんなこと」という流れの中での話なので、前後の脈絡が不明だ。同証言に現れるのが現代いうところの「絶対音感」と思っていいのかも判然としない。

2022年4月24日 (日)

過剰な傾倒

かなり以前から感じている疑問について述べる。

「プロフェッショナルな演奏家は、特定の作曲家への傾倒とどう向き合っているのだろう」

音楽を学ぶ課程で、あるいは演奏を通じて特定の作曲家や作品への感情が心の中に表れることは自然だ。「~が好き」「○○が嫌い」の類だ。プロの演奏家たちは、そうした感情をどう処理しているのだろう。好きな作曲家の作品ばかりを演奏している訳にも行くまいと考えるが故の疑問だ。それらの感情の痕跡は演奏に現れるものだと思うがいかがだろう。

嫌いの側はさぞ困るだろう。演奏に良い影響があるとは思えない。「私は音楽を愛しているからどんな作曲家の作品からも喜びを感じることが出来る」という演奏家ばかりであれば私の疑問は無意味になる。そもそもそういうことはあるのだろうか。

度が過ぎると「好き」の側でも混乱は起きるだろう。特定の一人を好きであることが昂じて、他の作曲家の位置付けが相対的に大きく下がるケースだ。特定の一人の演奏だけで飯が食えればよいのだが、よほどのことが無い限りそれは自ら演奏の機会を奪っているようなものだ。

そうした感情と演奏を完全に別系統で制御出来ているのだろうか。

お気づきのことと思うが、私のブラームス好きは既に「過剰な傾倒」の域にあると自覚しているが運良くプロフェッショナルな演奏家ではない。

2022年4月20日 (水)

同業他社

同じ業界に属する別の会社の意味だ。ビジネスの世界では普通に用いられる言い回しである。ほぼ「競争相手」と同義だったりもする。成熟した市場では需要の拡大はアテにできないから、売り上げを伸ばそうと思えばマーケットシェアの獲得しか道がない。ヒット商品の創造同様に言うは易しの世界である。さらに困ったことに同業他社どうしの癒着や馴れ合いは法律によって禁止されているのが普通である。

作曲家にとって、自分以外の作曲家が同業他社にあたる。

自らの独創性を世に問う職業だから、業界の動向に無関心過ぎるのも考え物だが、同業他社の研究にはあまり熱心ではない。他の作曲家の作風を真似たところでタカが知れている。古今の大作曲家と呼ばれる人たちは、他の作曲家から受けた影響など、伝記の片隅にひっそりと書かれることが多い。

例によってブラームスは例外だ。先輩作曲家の研究に余念が無かった。先輩ばかりではない、同時代の作曲家の業績にも無関心ではいられなかった。つまり同業他社の動向をいつも研究していたのだ。研究するばかりではなく、自らの作品にそれを生かしていた。これこそまさにマーケティングである。

現代のクラシック音楽業界における知名度に関係無く、数多くの作曲家を研究した成果を自分なりに消化吸収して作品に盛り込んだ。それでいてけして埋没することのない個性が作品に宿っていることをブラームスの特徴の一つとしたいくらいである。

2022年4月16日 (土)

医薬分業

私が子供の頃、医者から薬をもらうことが多かった。最近は医者からもらうのは処方箋だけで、薬は薬局でもらうことが増えた。これが「医薬分業」だ。メリット、デメリットとも様々な形で議論されているらしい。

ハンス・フォン・ビューローという人がいた。クララの父の弟子。ピアニストで指揮者だ。音楽史に残る名言をいくつか吐いていることでも知られる。彼の功績に「作曲家と演奏家の分離を決定づけた」ことを挙げる人も多い。彼以前はそれらの区別は混沌としていた。特に指揮の分野において彼の業績は高く評価されている。

我々が今日クラシック音楽と呼んでいる世界においては、過去の作曲家の手による作品を演奏することが定着している。この傾向が現れたのが、実は19世紀だった。ということはつまり、演奏する時点で作曲家が没していることが増えてくる。時間が経つほどそうなる。つまり作曲家イコール演奏家ではあり得ないのだ。「作曲家と演奏家の分離を決定づけたこと」をビューローの功績とするより、時の流れに近いと感じる。彼の功績は、その流れを先取りしたことにあると思う。

さて作曲と演奏の分離はただいま申し上げたとおりだ。実は密かに疑問に思うことがある。

「解釈と演奏の分離」だ。19世紀に作曲と演奏が分離したように、解釈が演奏から新たに分離することはあり得ぬ妄想だろうか。まるで医薬分業のようにである。現在、解釈は演奏の一部だ。CDのラベルには作曲家と作品名と演奏家だけが書かれる。オペラの演出家は例外だ。オペラ以外のCDに解釈だれそれと書かれるようになりはしないかという疑問だ。

私の解釈で誰か演奏をしてくれる人はいないものか。せっかく解釈出来ても演奏で台無しにしてしまうことが多いから、つい妄想が膨らむ。

 

 

2022年4月 8日 (金)

タルティーニ

本日4月8日はジョゼッペ・タルティーニの誕生日だ。本日は生誕230年のメモリアルデーということになる。1792年生まれということでバッハより7つ年下だ。

なんといっても「悪魔のトリル」で名高い。夢に悪魔が現れて云々。ビオンディさんのリサイタルで「捨てられしデイド」を聴いた。どちらもヴァイオリンとチェンバロの二重奏なのだが、彼の本領はむしろヴァイオリン協奏曲にある。120曲以上あるのだが、このほど全集を入手した。CD1から律儀に聴いているが、これがなかなか楽しい。キレッキレだ。

 

 

2022年3月30日 (水)

作曲家の制約

作曲家、画家、彫刻家、版画家、小説家、書家、詩人、歌人、俳人、演奏家等々、これらを「芸術家」と一括することに異論は無かろう。きっとまだまだあると思う。芸術家の定義となると難しくもあるのだが、列挙は比較的容易だ。

この中で、作曲家だけが他と違う制約を課せられているといつも感じている。作曲家以外の芸術家は、受け入れ先となる人の五感こそ違うものの、自らの芸術を人々に直接感じさせることが出来る。

作曲家は違う。残すことが出来るのは楽譜だけだ。演奏家でさえ演奏を直接聴衆の感性に問うことが出来る。作曲の目的は楽譜を作ることではない。その先にある音楽が目的なのに、音楽そのものを残すことは出来ないのだ。目的に到達するためには必ず演奏が介在せざるを得ない。自作自演は作曲家存命中のみ可能となる。

楽譜の出来映えを誉められることなどありはしないのだ。それでも作曲家は楽譜に全身全霊を傾ける。思いの全てを楽譜に注ぐはずだ。演奏によって、正しく自作が解凍されることを念じて楽譜を仕上げるに決まっている。自作が正しく演奏されるためには、何でもするに違いない。

現在伝えられる楽譜は全てその格闘の結果として存在している。どんなに制約があっても作曲を不自由だとは思わない。むしろそれが魅力の一つだとさえ感じる。

私が「ブラームスの辞書」を書いた理由のほとんどをそれで説明することが出来る。

2022年3月18日 (金)

金銭感覚

お金に関する価値観は人それぞれだ。その人の立場や収入によって規定されることも多い。

記事「労働者の年収」で1882年のライプチヒの下級労働者の年収が推定出来た。およそ1000マルクだ。日本円で約50万円らしい。ブラームスの交響曲1曲の値段が15000マルクだという記事も書いた。日本円で約750万円だと述べ、高いような安いような微妙な値段だと論評している。ところが下級労働者の15年分の収入だと思うと、印象が変わる。

この周辺の金銭感覚は出来るだけ多くの実例を集めて、より現実感覚に即した解釈をしないと実態を見誤りかねない。

ブラームスに対抗する陣営の首領リヒャルト・ワーグナーの伝記を読んでいるとお金の使いっぷりに驚くことがある。ドイツの上流階級の年収の5倍の金額を1ヶ月で使ったというような指摘もある。これもまた一種の金銭感覚のなせる業である。

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