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カテゴリー「112 音型」の52件の記事

2022年8月19日 (金)

Cuculus canorus

「カッコウ」の学名だ。学名そのものがオスの鳴き声に由来しているということだ。古来音楽作品上で描写の対象になってきた。学名の後段「canorus」は「響く」「音楽的」の意味だというのもうなずける。もしかして「カノン」と語源は同じかとも。

田園交響曲第二楽章が名高いほかバロックにも下記の実例がすぐに目に付く

  1. ヴィヴァルディ 夏の第一楽章
  2. ヴィヴァルディ   ヴァイオリン協奏曲イ長調RV335
  3. シュメルツァー 
  4. ビーバー Sonata representativa No3

日本ではさびれた様子の描写「閑古鳥」として定着しているから、どうにも音楽的とはみなされていない。

 

 

2022年7月23日 (土)

レ抜きの連鎖

ヴィヴァルディ作曲「調和の霊感」の中12番ホ長調の第1楽章と第2楽章冒頭で「レ抜き」音階が現れると指摘した。とりわけ第2楽章7小節目「cantabile」にもまた「レ抜き音階」が現れると結んだ。

バッハはこれを無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲した。BWV976があてがわれている。ワイマールの雇い主の求めに応じて編曲した15曲の一角を構成する。

BWV番号でいうその次BWV977もまたバッハによる編曲なのだが、オリジナルはヴィヴァルディではなく今では知られていない誰かのヴァイオリン協奏曲だ。第一楽章冒頭部分を以下に示す。

 

20170413_084958
赤枠で囲んだ部分を見てほしい。ここにも「ドミファソ」つまり「レ抜き音階」がある。BWV番号は後世の研究者によって付与されたものだが、この並びそのものはバッハのオリジナルだ。「レ抜き音階」をもった作品が連続させたのはバッハの判断だと思われる。

この手のネタを偶然として放置しないのがブログ「ブラームスの辞書」のお約束である。

 

 

2022年7月21日 (木)

導音に至る6度下降

民謡学者エルクは、ライフワークとなった民謡収集活動を通じてドイツ民謡の始源の姿を突き止めようとした。近代に作曲された民謡風歌曲と本来の民謡の峻別を試みた。現代の研究成果から申せば、それらの区別にはほぼ意味がないと結論付けられてはいるのだが、当時は大まじめだった。

エルクは、旋律の形質をキーに、いくつかの基準を示した。そのうちの一つが本日のお題「導音に至る6度の下降」だ。こうした旋律が現れたらそれは古来の民謡ではなく、近代以降に作曲された「民謡風歌曲」だということだ。

言われてみればブラームスの歌曲にも「導音に至る6度下降」は、いくつか例が見つかる。

先日来話題にしているヴィヴァルディの「調和の霊感」からホ長調協奏曲op3-12の第2楽章7小節目の「cantabile」に触発されて楽譜を眺めていたら、なんとなんと「導音に至る6度下降」があるではないか。

 

20170410_182838_2

 

同コンチェルトの魂ともいうべき「レ抜き音階」の到達点「ロ音」から「嬰ニ音」へ6度の下降だ。「嬰ニ音」は半音せりあがって「ホ音」に進む。「嬰ニ音」は、到達点の「ホ音」に対する導音だから、全体として「6度下降→半音上昇」ということになる。つまり「6度下降して導音に至っている」ということだ。

ドイツ民謡学の泰斗が、旋律の「近代性」と判断する目安とした「導音に至る6度下降」の実例がヴィヴァルディに現れていた。

2022年7月20日 (水)

やっぱりレ抜き

記事「奇跡のカンタービレ」の続きだ。

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ヴィヴァルディの「調和の霊感」からホ長調のコンチェルトの第2楽章7小節目に鎮座する「cantabile」の話題だった。よくよく音の並びを見てほしい。移動ドで読むなら「ドミファソ」だ。同コンチェルトは第1楽章も第2楽章も「ドミファソ」つまり「レ抜き音階」で立ち上がっていると指摘しておいたが、ここにもあった。

全楽器によるアンサンブルからソロへの転換点。低い音のする楽器は合いの手に回る関係もあって響きの趣が変わる。「p」と「pp」のはざまを行きつ戻りつしながらニュアンス1個の出し入れを味わうべきと聴く。

後期バロックの頂点だというのに、やけにロマン的な感じがする。

 

 

2021年11月19日 (金)

An Sylvia

テンペスト 」といえばシェークスピアだ。昨日は私の妄想だったが本日は正真正銘のシェークスピア。

「An Sylvia」D891はシェークスピア初期の喜劇「ヴェローナの二紳士」の一節を独訳したものがテキストになっている。原作は1590年代に成立したと目される。イタリアを舞台に「恋と友情」をはかりにかけて最後はめでたしめでたしで終わる。ニ紳士のうちの1人ヴァレンタインの恋人がシルヴィアである。シューベルトは本作から「シルヴィア礼賛」の部分をテキストに完璧な仕事をする。シルヴィアの容姿やキャラまで思い浮かぶようだ。

イ長調4分の4拍子。「Massig」は言うなれば「モデラート」だから「惚れ込み4原則 」よりはかなり早いうえに、曲想がレガートではない。ピアノ左手の独特の音形が手を変え品を変えて貫かれる。きっと彼女は明るくて聡明だ。

この手の軽妙な、いわばモーツァルト的なリート作品はブラームスには見当たらない気がする。

 

 

2021年11月 6日 (土)

運命動機

ベートーヴェンの第五交響曲冒頭のあれである。「GGGES」だというより「ジャジャジャジャーン」で通じるのではあるまいか。肝は先頭の8分休符だったりする。同曲のいたるところに痕跡をとどめ、これが「主題労作」の典型となり手本と化してゆく証拠に、ベートーヴェン自身の他の作品は元よリ、後世の作曲家の作品にもそれと思しき箇所が散見される。ブラームスにだってある。特定の作曲家のベートーヴェンとの関係を強調したいときに重宝しているようにも見える。

そこでシューベルトだ。「こびと」D771に注目したい。オリジナルは「Der Zwerg」という。マテウス・フォン・コリンのテキストは「魔王」「死と乙女」の系統のバラードと解してよさそうだが、内容はずっと陰惨。

同曲中に運命動機が頻繁に現れる。1823年の作品なので当然運命交響曲よりも後。なんらかのインスピレーションの連携がないとしたらその方が不自然だ。シューベルトの手にかかると陰惨なテキストの内容が濾過される感じ。

2021年8月24日 (火)

死と乙女

知名度で申すなら数あるシューベルト歌曲の中でも頂点付近に位置すると思われる。テキストはクラウディウス。文字通り死と少女の対話。魔王と並ぶ怪奇系の双璧。音楽のおかげで極端な怪奇的にならずに劇的という範囲にとどまる。

イントロに現れる「タンタタ」というリズムは「ダクテュルス」と呼ばれている。アクセントがある長い音符に短い音符2つが追随するなどという説明よりもベートーヴェンの第七交響曲の第二楽章冒頭のリズムと申し上げた方が早い。シューベルトはこのリズムを愛好したと見えて、偶然とは思えぬ頻度で出現する。3つの音高が変わるケースまで入れればしょっちゅうという感じでさえある。

さて知名度の押し上げに寄与しているのは弦楽四重奏曲第14番ニ短調だろう。第二楽章に歌曲「死と乙女」の伴奏パートが主題として現れる。もろに「ダクテュルス」だ。テキストに付与された旋律をスルーしてこのイントロ音型を主題として採用し、あろうことか変奏の主題としている。私にとってはシューベルト室内楽の頂点に長く君臨する。初めて買ったCDはアルバンベルクSQの演奏だったが、これが脳みそに刷り込まれてしまい他の演奏を受け付けにくくなっている。

 

2020年11月29日 (日)

地味にバッハ

カンタータ140番。「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」の第二曲レチタティーヴォハ短調の冒頭の話だ。テノールの独唱が「彼が来る」「彼が来る」と語りかける場面。同カンタータの肝、花婿の到来を告げるシーン。

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ブラームスの第4交響曲の第一楽章冒頭にそっくりだ。ブラ4はホ短調で「H-G-E-C」と立ち上がるのに対し、長3度低いものの、音程の関係は丸ごと維持される。第4交響曲はフィナーレにおいてカンタータ150番の終末合唱が引用されることは有名だが、こちらの類似はあまりに瞬間芸的なので見過ごされている気がする。

この程度で興奮していては身が持たないと知りつつつい。

2020年9月 7日 (月)

鏡像

バッハのフーガに親しんでいると「鏡像フーガ」という言葉にぶつかる。「フーガの技法」BWV1080の第12曲が有名だ。チェロソナタ第1番の終楽章の元になった第13番も実は「鏡像フーガ」を形成する。

元になるフーガに対して音型ばかりか4声の声部までも上下逆さにしても音楽として破綻しないフーガのことだ。鏡に映したかのようだから鏡像というのだ。

対位法の極致だ。

さすがにブラームスには鏡像フーガは無い。でも鏡像を実感出来る場所が無いわけではない。

第2交響曲第4楽章だ。第一主題の第2句とでも申すべき場所。9小節目のヴァイオリンとヴィオラの音型をご記憶いただきたい。3つの連鎖する4度下降が特徴だ。この部分は当然再現部の中にも現われる。252小節目だ。チェロとヴィオラが3つの連鎖する4度上行の旋律を奏する。第一主題第2句を提示部と再現部で比較すると、まさに鏡像の関係になっている。ヴィオラはオーケストラ全パートの中で原型と鏡像両方とも演奏することが出来る唯一のパートになっている。この第2交響曲で学生オケデビュウのヴィオラ初心者だった私は、これに気がついて愕然とした。

「ブラームスって凄い」と。

それからほぼ1年半後にありついた第一交響曲の中にも鏡像があった。42小節目からヴァイオリンで提示される第一楽章第一主題の鏡像が、161小節目の小結尾主題においてチェロとヴィオラに現われるのだ。ひよっこの私には荷が重い曲だったが、これに気付く前と後では音が違っていたハズだ。

 

 

 

 

2020年8月16日 (日)

BACHの名によるフーガ

バッハという姓を構成する4文字は全て音名に転換が可能だ。その順に並べるとたった4文字なのに半音関係が2度もある。作曲家たちの想像力を刺激したと見えてこの旋律を用いた作品が古来数多く生まれてきた。バッハ本人の「フーガの技法」は名高い。このほど興味深いCDを入手した。

 

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BACHの主題を用いたオルガン作品集だ。例によってブックレットは情報の宝庫で、BACHの主題を用いて作品を書いた作曲家の数を「300人以上」と断言している。どこでどう数えたか知らぬが、驚いた。

バッハ本人に加えて、作曲家として名を遺した4人の息子の内、長男のウィルヘルム・フリーデマン以外の3名の作品が収録されている。

やけに楽しい。

 

 

 

 

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