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カテゴリー「111 旋律」の78件の記事

2023年11月 4日 (土)

ケンブリッジ大学

英国ケンブリッジにある総合大学だが、複数のカレッジの集合体に対する総称と見ることも出来る独特な形態で知られる。こうした形態の精神的よりどころは、大学教会の存在だ。大学がオフィシャルに教会を持っているようなものだが、ミッションスクールとも違う。その教会は聖メアリー教会である。大学の授業期間中、学生はこの教会から2マイル以内に居住することが義務付けられているらしい。

1877年にブラームスの第一交響曲の英国初演を画策して実現にこぎつけたのは、ケンブリッジ大学音楽協会である。

その第一交響曲のクライマックス第4楽章の序奏で、「歓喜の歌」の第一主題を導くアルペンホルンのコラールが流れて、ケンブリッジ大学の関係者一同は、度肝を抜かれる。大学教会・聖メアリーの時を告げる鐘と寸分違わぬ同じ旋律だったからだ。同初演の大成功はこの瞬間に約束されたようなものだ。

 

 

2023年10月20日 (金)

声部書法

お手上げな言葉だ。音楽学上、作曲技法上、対位法上一定の意味合いを持つ言葉であることは確かなのだが、私の手には余る。

という訳でブログ「ブラームスの辞書」名物のお遊びに走る。まずは以下の概念を思い浮かべて欲しい。

  1. 聴いた場合の有り難み
  2. 弾いた場合の有り難み
  3. 1も2も満足→名曲
  4. 1も2も不満足→忘れられる。
  5. 1だけ満足→聴衆にとってはこれで十分
  6. 2だけ満足→忘れ去られる可能性はある。教則本の一部はここかもしれない。

ブラームスの作品1つ1つがどれにあてはまるかを論じるつもりはない。ブラームスは1は当然として、2も低くない優先順位を設定していたのではないだろうか?演奏者が喜々として演奏に取り組めることは、演奏の出来を左右すると思う。喜々として取り組めるかどうかを言い換えれば「弾いていて面白いかどうか」だ。複数の演奏者が関与するアンサンブルで、演奏の結果としての作品の出来映えはもちろん、個別のパートの弾き甲斐まで気を配っていたと感じる。第一ヴァイオリンだけに苦労も喜びも集中しているというような現象は、非ブラームス的だ。

作品を構成するさまざまなパートについて誰一人として退屈させないことに気を配っていたと感じる。管楽器の2番奏者たちもその恩恵に浴している。その際パートの出番の多少は判断材料ではない。パート譜の厚みとは関係がないも言い換えられる。演奏への参加者みんなに応分の楽しみがあり、それがメンバーの一体感の醸成に寄与しているのだ。私がヴィオラ愛好家だということを割り引いても室内楽と管弦楽で強くそれを感じる。

ブラームスの声部書法はしばしば誉められる。小難しいことは解らぬが、「どのパートも面白くしといたからね」がブラームスにとっての声部書法だったような気がする。

 

 

2023年9月11日 (月)

BuxWV158

ブクステフーデのオルガン自由曲「Prelude Amoll」を指す。

20190211_154645
似ている。

バッハのオルガン作品の代表作「トッカータとフーガニ短調BWV565」に出だしの雰囲気が似ている。

実演では冒頭の「E」音に、トリルがかかっているせいもある。

 

 

 

 

2023年9月 7日 (木)

全三音跳躍

「全三音」とは、増4度または減5度のこと。かなりインパクトのある不協和で、古来「悪魔の音程」と言われてきた。バーンスタインのウエストサイドストーリーにちょくちょく出てきた。ジャズっぽい感じを手軽に付与できる面もある。
BWV564のトッカータ、アダージョとフーガはお気に入りだ。名高い「トッカータとフーガのニ短調」BWV565の一つ前にひっそりと言うには、あまりに華麗だ。「トッカータ」「アダージョ」「フーガ」といういわば3楽章構成。その冒頭に全三音の跳躍がある。20190321_161151
赤枠で囲んだ部分。HからFへのジャンプだ。同型が反復される2回目は、GからEの6度になっているからとりわけ目立つ。はっとさせられる。そーとーおしゃれに聞こえる。

2022年8月19日 (金)

Cuculus canorus

「カッコウ」の学名だ。学名そのものがオスの鳴き声に由来しているということだ。古来音楽作品上で描写の対象になってきた。学名の後段「canorus」は「響く」「音楽的」の意味だというのもうなずける。もしかして「カノン」と語源は同じかとも。

田園交響曲第二楽章が名高いほかバロックにも下記の実例がすぐに目に付く

  1. ヴィヴァルディ 夏の第一楽章
  2. ヴィヴァルディ   ヴァイオリン協奏曲イ長調RV335
  3. シュメルツァー 
  4. ビーバー Sonata representativa No3

日本ではさびれた様子の描写「閑古鳥」として定着しているから、どうにも音楽的とはみなされていない。

 

 

2022年7月21日 (木)

導音に至る6度下降

民謡学者エルクは、ライフワークとなった民謡収集活動を通じてドイツ民謡の始源の姿を突き止めようとした。近代に作曲された民謡風歌曲と本来の民謡の峻別を試みた。現代の研究成果から申せば、それらの区別にはほぼ意味がないと結論付けられてはいるのだが、当時は大まじめだった。

エルクは、旋律の形質をキーに、いくつかの基準を示した。そのうちの一つが本日のお題「導音に至る6度の下降」だ。こうした旋律が現れたらそれは古来の民謡ではなく、近代以降に作曲された「民謡風歌曲」だということだ。

言われてみればブラームスの歌曲にも「導音に至る6度下降」は、いくつか例が見つかる。

先日来話題にしているヴィヴァルディの「調和の霊感」からホ長調協奏曲op3-12の第2楽章7小節目の「cantabile」に触発されて楽譜を眺めていたら、なんとなんと「導音に至る6度下降」があるではないか。

 

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同コンチェルトの魂ともいうべき「レ抜き音階」の到達点「ロ音」から「嬰ニ音」へ6度の下降だ。「嬰ニ音」は半音せりあがって「ホ音」に進む。「嬰ニ音」は、到達点の「ホ音」に対する導音だから、全体として「6度下降→半音上昇」ということになる。つまり「6度下降して導音に至っている」ということだ。

ドイツ民謡学の泰斗が、旋律の「近代性」と判断する目安とした「導音に至る6度下降」の実例がヴィヴァルディに現れていた。

2022年7月20日 (水)

やっぱりレ抜き

記事「奇跡のカンタービレ」の続きだ。

20170410_182838
ヴィヴァルディの「調和の霊感」からホ長調のコンチェルトの第2楽章7小節目に鎮座する「cantabile」の話題だった。よくよく音の並びを見てほしい。移動ドで読むなら「ドミファソ」だ。同コンチェルトは第1楽章も第2楽章も「ドミファソ」つまり「レ抜き音階」で立ち上がっていると指摘しておいたが、ここにもあった。

全楽器によるアンサンブルからソロへの転換点。低い音のする楽器は合いの手に回る関係もあって響きの趣が変わる。「p」と「pp」のはざまを行きつ戻りつしながらニュアンス1個の出し入れを味わうべきと聴く。

後期バロックの頂点だというのに、やけにロマン的な感じがする。

 

 

2022年7月17日 (日)

レ抜き音階

長調の音階から「レ」と「ラ」を抜いてみるといい。「ドミファソシド」「ドシソファミド」と歌ってみればこれが沖縄音階だとわかる。記事「BWV976」で言及したヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ホ長調op3-12の第二楽章は、移動ドで「ドーミーファソー」と立ち上がる。冒頭こそ「レ」が抜けた音階なのだが、すぐに「レ」(実音:嬰ヘ)が現れるから、聴き手が沖縄テイストを実感することはない。

 

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しかし、「レ」抜きのこの音形は、同協奏曲の中核にも見える。なぜなら第1楽章冒頭にもヴァイオリンに「ドミファソッソッソッソ」が配備されているからだ。

 

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バッハのホ長調ヴァイオリン協奏曲の冒頭を思い出すまでもなく、主和音の上行「ドミソ」なら珍しくもないが、ここに一瞬でも「ファ」が噛むことで微妙な味わいになる。

この手の「異なる楽章間に共通する音列」は、ブラームスにとってはよくある話だ。

2021年3月23日 (火)

BWV547

言うまい言うまいと思っていたが、こらえきれずに記事にする。バッハの前奏曲とフーガハ長調BWV547の話だ。後半のフーガがブラームスの第二交響曲の第4楽章に似ている。

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あちらはニ長調でこちらはハ長調だが、移動ドで読む限り一致している。拍子はどちらも2分の2だ。第二交響曲では音価が2倍に拡大されている。その後に続く連続する4度下降もなんだか怪しい。

この手の似ているネタは得てして偶然だ。だからお叱りも覚悟だ。誰かに言われるくらいなら自分で言っておきたいという因果な性格である。

 

 

2021年2月14日 (日)

第一変奏

    最初の変奏と解して疑いはない。「主題と変奏」というというジャンルには古来数多くの作品が残されてきた。どれも例外なく真っ先に主題が提示される。これがないと始まらん。そこから先が作曲家の腕の見せ所だ。主題の提示が終わって、「さあ行くぞ」と走り出すのが「第一変奏」だ。作曲家の意気込みがとりわけ色濃く反映する。

ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」op24は、以下の通りだ。

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Piu vivo に意気込みが感じられる。がしかし、若きブラームスは半ば意図的にバッハを模倣しているかもしれない。

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 「ゴールドベルク変奏曲」の第一変奏だ。16分音符2個に8分音符という3つの音符が、移動ドで「ドシドー」と走り出す。

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