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カテゴリー「107 拍子」の22件の記事

2021年9月 2日 (木)

歌のあるワルツ

昨日の記事「裏ワルツ王 」で、シューベルトのピアノ作品にワルツが多いと書いた。ドイツ舞曲やレントラーにまで広げるとCD4~5枚かとも想像される。実は600曲近いシューベルトの歌曲の中にもほんのりワルツテイストの作品が散見される。固いこと抜きに拾うとすぐに見つかる。

  1. 幸福 D433
  2. 水の上で歌う D774
  3. リュートに寄す D905

これらはみな8分の6拍子。聞こえがワルツっぽいというだけかもしれぬ。けれども4分の3拍子か8分の6拍子ならなんでもという訳ではない。「糸を紡ぐグレートヒェン」は8分の6拍子だけれどワルツとは感じない。

さて翻ってブラームスだ。ブラームスのリートにワルツテイストは見当たらない。拍子としての4分の3や8分の6はあるけれど味わいがワルツではない。

  1. 永遠の愛について op43-1
  2. 日曜日 op47-3
  3. あの娘のもとへ op48-1

大好きな作品これら皆4分の3拍子だがワルツではない。シューベルトに特有の現象「歌のあるワルツ」かもしれぬ。

2021年7月 8日 (木)

レントラー

Landlerと綴られる。aはウムラウトである。ドイツに起源を持つ素朴でゆったりとした4分の3拍子の舞曲だ。ワルツの起源をめぐる議論の中で、しばしば言及される。ワルツの起源をレントラーに求める学者は少なくないという。レントラーをウイーン風に洗練させたのがワルツと見る人もいる。その言い回し、文脈を見れは「ワルツ=レントラー」でないことは明らかだ。

ところがブラームスにおいては両者の区別は曖昧である。作品52の「愛の歌」、作品65の「新・愛の歌」はタイトルにはっきり「ワルツ」と明記されていながら、発想記号には「レントラーのテンポで」と記されているのだ。「tempo di waltz」とはなっていないのだ。

さらに「ブラームスのワルツ」として有名なイ長調を含む「16のワルツ」op39は、その第一番の冒頭に「Tempo giusto」(きっかりのテンポで)と記されるばかりで、これまた「tempo di waltz」という言い回しを避けている。この16曲のワルツの作曲にあたって研究したのが、生粋のウイーンっ子であるシューベルトのレントラーだった。

どうもブラームスは自作に「ワルツ」と明記しながら、実態においては「レントラー」を指向していた形跡があるというわけだ。

ここで言うワルツは、ショパンのそれとは別物で、申すまでも無くウイーンの名物だ。単なる4分の3拍子ではない独特のリズムで出来ている。生粋のウイーンっ子はDNAにあらかじめセットされているそうだが、よそ者にはなかなか習得出来ない感覚らしい。ハンブルグ生まれのブラームスはもちろんよそ者だ。変に背伸びしてウイーンっ子の感覚を追い求めることを諦めて、レントラーに走ったのではないかと感じる。

 

 

 

 

 

 

2016年11月15日 (火)

定石とひらめき

将棋が好きだ。もっぱら観戦だけだけれど好きである。81マスの宇宙で繰り広げられる読み合いが面白い。先手側の初手のケース、駒の動かし方は30通りの可能性がある。歩は各1通りで角や桂馬は初手に関しては打つ手がない。この調子で数えると可能性としては30通りになるのだ。現実に打たれるのはこのうちの2種が圧倒的である。飛車先を突くか角道を開けるかである。このほかの28種類はあまり選択されない。後手にとっても初手の条件は同じだ。先手が打った手を加味するが種類としては30からの選択だ。

大げさに言えば初手から投了まで全ての局面で、プレイヤーは全ての可能性から1つを選択しているのだ。とはいっても各々の局面でいちいち全ての可能性を吟味するのは大変だ。持ち時間は無限ではない。そこで思考の節約、時間の節約のためにあるのが定石、あるいは手筋なのである。「どうしたら勝てたか」あるいは「どうやったら負けたか」についての経験則の積み重ねを体系化した代物と言い換えてもいい。

さて作曲に話を移す。誤解お叱り覚悟で極論を申し上げる。作曲とは詰まるところ、無限の可能性の中から次の音を決定する作業だ。決定の対象は「音の高さ」と「長さ」である。どの楽器に弾かせるか、テンポをどうするか、アーティキュレーション、音のニュアンスをどうするかは最後の仕上げに過ぎまい。将棋指しならぬ作曲家が次なる音を決定する際にも定石が存在する。「和声法」「対位法」「管弦楽法」と呼び習わされている。

肝心なこと。将棋名人ほど定石とひらめきのバランスが絶妙だということだ。完璧に定石通りに指しても負けては仕方かが無い。相手棋士も定石を知っている訳だから、最後に雌雄を決するのは裏のかきあいだ。本当の勝負所でものを言うのは定石ではなくひらめきだというケースもあるらしい。ひらめくかどうかは、経験と天性だ。

楽典をはじめとする音楽の様々な定石を完璧に守ったつまらぬ曲が存在するのと似ている。決まりを完璧に守り通しても名曲になるとは限らない。「名曲」という概念は勝ち負けに比べれば数段曖昧な概念だが、クラシック音楽として淘汰されずに残った作品を「名曲」つまり勝ち組と位置づけてもいいだろう。どうすれば耳に心地よいかという経験則の積み重ねが楽典をはじめとする諸ルールだが、勝負所では耳が頼りなのだ。

定石とひらめきの違いは意外と簡単だ。「定石」は勉強することで習得出来るが、ひらめきは多分に天性である。ひらめかない奴がいくら勉強してもいっこうにひらめかないらしい。

さてさて定石とひらめきのバランスと申し上げたが、はたしてどれくらいの比率が理想なのだろう。これには決まった答はない。「ひらめき100%・定石不在」の名作もあり得る。強いて言えば「ひらめき不在・定石100%」という作品は勘弁願いたい。ブラームスも「霊感無しには1行も作曲すべきではない」と言っている。

2015年12月14日 (月)

4分の7拍子

1小節に四分音符が7個入る拍子。これを出題する先生はあまりいないとは思う。「7個」というのが何やらマニアックである。

半端な数の好きなブラームスにも、さすがに実例がない思いきや、事実上の4分の7拍子が身近なところに存在する。

ピアノ三重奏曲第3番op101第3楽章である。楽譜には4分の3拍子1小節に、4分の2拍子を2小節連ねよとなっている。3+2+2でつまり実質7拍子だ。急いたところのないアンダンテがハ長調でチャーミングに歌われる。曲をただ聴いていると、まさかこんなに複雑な拍子だとは思えない。楽譜を見てぎょっとするというパターンに陥る。ハンガリーの民謡には、3拍子以外の奇数拍子が時々現れると聞く。本作もその系譜の延長線上にあると思われる。

2015年6月13日 (土)

3連続3拍子

シューベルトの「未完成交響曲」が未完である理由が「3楽章連続の3拍子」であるという説に触発されて、ブラームス作品にその例がありはせぬかと調べてみたのが記事「未完の理由 」だった。単一楽曲内において連続する3つの楽章が3拍子になるケースは1例も発見できなかった。

ところが、これに抵触する怪しいケースを新たに発見した。ピアノ四重奏曲第1番だ。

  • 第一楽章 4分の4拍子
  • 第二楽章 8分の9拍子
  • 第三楽章 4分の3拍子
  • 第四楽章 4分の2拍子

記譜上の拍子は上記のとおり。3拍子は3楽章に1個あるだけだ。ところが、この2楽章は特殊な音楽。3拍子系の複合拍子だから、振るなら3つ振りだ。メヌエットとスケルツォの融合ともいうべき構造になっている。広い意味では間違いなく3拍子だ。

加えてフィナーレも興味深い。記譜上は4分の2拍子なのだが、冒頭からしばらく、3小節単位のフレージングが続く。1小節を1拍と数えて、3つ振りするとはまる。

つまり第二楽章から3つ連続事実上の3拍子になっている。

2015年3月 3日 (火)

未完の理由

シューベルトの交響曲ロ短調は「未完成」として名高い。これを第8番として認識していたがどうも怪しいらしい。未完の交響曲に番号が与えられているのも不思議と言えば不思議である。

このロ短調交響曲が「未完」であることの原因として、「3拍子の連続」を指摘する人がいる。

第1楽章が4分の3拍子、第2楽章が8分の3拍子、さらにスケルツォをお決まりの4分の3拍子で書き始めて行き詰まったというのがその根拠だ。

3拍子の連続がそれほど珍しいのかブラームスで確かめてみた。対象は全室内楽24曲、交響曲協奏曲全8曲、これにピアノソナタ3曲を加えた35曲である。つまり多楽章ソナタだ。

第1楽章から第3楽章が同じ拍子というケースは1件も無かった。第1楽章と第2楽章が同じ拍子というケースでさえたった1件、ピアノ協奏曲第1番だけである。第2楽章と第3楽章が同じというケースは何件か発見できた。

危ないのはピアノ四重奏曲第3番。第1楽章が4分の3拍子で、第2楽章がスケルツォだから、相当ピンチだが、スケルツォを8分の6拍子とすることで回避している。ピアノ五重奏の第3楽章も同様だ。

3連続3拍子というのは確かに異例だ。ましてや3月3日の記事としても若干無理があろう。

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2012年12月27日 (木)

クロスリズム

ピアノ五重奏曲の第3楽章の魅力は、4分の2拍子と8分の6拍子の頻繁な交代にある。その対比が聞かせどころの一つには違いないのだが、この両者の錯綜共存は見られない。弦楽四重奏第3番フィナーレには、これらの拍子に加え、4分の3拍子までが同時に鳴る場所が存在するけれど、次女たちが挑むスケルツォでは共存が避けられている。

ところが例外が一箇所。トリオのそのまた中間部、練習番号E226小節目のピアノ左手に注目願いたい。ここから拍子が4分の2に変わる場所。4分の2拍子の2拍目に3連符が配置される。ピアノ左手だけ2拍目が3分割された2拍子を弾く。つまりその間事実上の8分の6拍子ということになる。ピアノと第一ヴァイオリンが4分の2拍子だから、そこで8分の6拍子を弾くピアノ左手との間にリズム的な緊張が起きる。これがクロスリズムだ。234小節目のアウフタクトからはチェロに引き継がれる。ピアノとヴァイオリンのダイナミクスがメゾフォルテであるのに対してチェロはフォルテだから、「チェロが引っ込み過ぎてはなりませぬ」というブラームスからのお達し。クロスリズムを際立たせよという意図だ。

そうしたリズム的拮抗はやがて結審される。242小節で全体が8分の6拍子に戻る。チェロの8分の6拍子は、一足先の復帰だったことが明らかになる。トリオの開始部のチェロと5度違いの瓜二つとなっている。トリオ低音部は事実上8分の6拍子で貫かれている。

2012年12月23日 (日)

まったりの仕組み

話はまだまだ続く。ブラームスのピアノ五重奏曲の第3楽章が実質4拍子である話。これ自体はスケルツォではよくある話。ベートーヴェンが交響曲にスケルツォを導入した頃からの決め事だ。「1小節を1拍と感じる高速4分の3拍子」が実質4拍子なのはそのとき以来の伝統だから、どや顔で言及するほどのことはない。むしろ4分の2と8分の6のめまぐるしい交代を柱とするこのスケルツォが、やはり実質4拍子になっている点に面白味がある。そうした中1小節だけ浮いた2拍子をしのびこませたブラームスのいたずらに嬉々として言及したところだ。

さてその実質4拍子はトリオにも受け継がれる。

ハ長調に転ずるトリオは「ソドミレファミ」と幅広に歌い出される典型的ブラームス節だ。冒頭の「ソド」こそがおいしさの素だ。旋律冒頭の4度跳躍はおいしい旋律の巣になっている。第一交響曲フィナーレの歓喜の歌を思い出すといい。その4度跳躍によって小節線を跨ぎ「ド」が強拍になっていることで拍節的にも和音進行的にも磐石感が増す。

ところが本日話題のトリオは、旋律こそ「ソド」の4度跳躍で立ち上がり、かつここで小節線を跨ぎはするのだが、大きな4拍子として見た場合に「ド」は、最強拍としての1拍目になっていない。最強拍は先の「ソドミレファミ」で申せば「レ」の上に来る。和音的には「C」ではなくて「G/C」となる。このトリオが持つ柔らかな感じは、こうした拍節構造にも起因している。その後弦楽器によって同じ旋律が提示されるけれども、この拍節構造は必ず維持される。

見かけ上小節線を跨ぐ「ソ→ド」が実は最強拍ではないというリズムのズレが、この中間部全体を貫く肩の力の抜けた柔らかさの源泉だ。

さらにだ。その立ち上がりの「2拍前」のピアノにも「ソド」がある。こちらは大きな4拍子で数えても「4→1」に相当する部分、主部の立ち上がりに2拍先行するフェイクにも見える。このあたりの曖昧を味わうのも一興だ。

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昨日は長女19歳の誕生日。記事が立て込んでいてそれに深々と言及する余裕がない。

おめでとう。

2012年12月20日 (木)

紛れ込んだ1小節

昨日の続き。ブラームスのピアノ五重奏の第3楽章スケルツォが実質4拍子という話題。スコアをお持ちの方はいよいよ是非御手許に。

楽章が実質4拍子で、2小節一組にくくって考えると、いろいろと面白い。だから演奏にあたっては、パート譜にマーカーペンで2小節ごとに印をつけるといい。「奇数小節の前」「偶数小節の後」にマークする。「12」「34」「56」「78」とい具合に「奇数+偶数」で大きな4拍子が作られる。けれどもこれがトリオまで貫かれているからといって、機械的にホイホイ印をつけると痛い目にあう。

13小節目から始まる「タッカタッカタッカタカタカ」は見事に4拍子にはまる。16分音符が4つで構成された4拍目のおかげで「4→1」という拍節感が強調される。ところが同じ旋律の再現158小節目練習番号Dを見るがいい。「偶数小節→奇数小節」になっている。さっきと逆だ。どこで狂ったのだろうとばかりに探しあてたのが75小節目。(下図、丸囲み)

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67小節目から始まるフガートの中だ。ヴィオラに4小節(つまり大きな4拍子2個分)遅れて旋律を引き継いだピアノ4小節の次の75小節が半端の原因。4つ振りで感じるなら「1234」「34」「1234」に聞こえる。次に旋律を受け継ぐ第一ヴァイオリンは76小節目から立ち上がって以降、「偶数小節+奇数小節」で大きな4拍子を構成するようになる。ヴィオラとピアノ以外の奏者はお休みで、小節をカウント中。4拍子のノリでうっかり数えているとここでズレるから、休んでいる人たちにこそ必要な豆知識。

マーカーペンで機械的に印を付けられるのは「73小節と74小節」のくくりまでで、75小節を浮いた1小節とみなして「76小節と77小節」をひとくくりにする。以下「78+79」「80+81」と続く。4分の4拍子の音楽に1小節だけ4分の2拍子が挿入される感じだ。

楽章冒頭チェロのピチカートソロ4発で、実質4拍子を宣言しておきながら、途中にこうした意地悪をしのびこませるブラームスのひねりだ。

2012年12月19日 (水)

実質4拍子

次女たち「ふくだもな五重奏団」が挑むブラームスのピアノ五重奏曲。その第3楽章は「スケルツォ」のタイトルが奉られた8分の6拍子。この拍子のスケルツォ全4例は、みなハ短調という不思議はかつて話題にした。けれどもこの楽章の売りはむしろ、その8分の6拍子と、4分の2拍子の交代の妙にある。13小節目で4分の2拍子に転ずる。どちらの拍子もいわゆる「2拍子系」で「1212」となる。

ところが、背筋を伸ばしてもう少し高い所から旋律やフレージング、あるいは拍節を観察すると4拍子が透けて見えるようになる。「8分の6拍子」や「4分の2拍子」の小節2個を一組でくくるといい。2小節を一組にして大きな1小節ととらえて、4つ振りで感じるといろいろな仕掛けを体感できる。「1212」の連続と感じるよりもずっと大局観が得やすい。

その感覚は中間部トリオまで貫かれている。

ブラームスは楽章の冒頭でチェロC線解放弦のピチカートを単独で4度鳴らす。これは楽章が実質4拍子であることのささやかな宣言だ。

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