3を2で割る
8分の6という拍子がある。1小節の中に8分音符が6個だが、3個が二組と考えることが必須である。指揮をするときは1小節を2拍と取り扱う。いわゆる「2つ振り」だ。
以上のことを前提にブラームスの第一交響曲の第1楽章の主部「Allegro」のことを考える。人にもよるがこの部分2つ振りされる。1つの拍には8分音符を3個を感じねばならない。4分の2拍子にしておいて三連符を延々と羅列しても事情は似てくると思うが、断固区別せねばならない。おかげでこの第1楽章は交響曲伝統の「Allegro」を背負っていながら、スカーッと流れる楽想にはなっていない。「pesante」やシンコペーションの多用もそれに拍車をかける。
ところがブラームスは要所において、満を持して拍を2つに割るという挙に出る。340小節目のチェロ・バス・ヴィオラと、492小節のチェロだ。8分音符が3つ並ぶ1拍を2で割るということだ。小学生でも解る通り、「割り切れない」のだ。
1回目は294小節から始まった再現部への歩みがまさに頂点に到達する瞬間、他のパートに逆らって低弦が拍を2で割る。再現部はもう4小節後に迫っている。咳き込んで再現部になだれ込むのを今一度押しとどめる効果がある。この次の小節では「ドッペルドミナント」という瞬間まで用意されて再現部の到来に万全を期す方策の一つになっている。
2回目は474小節で頂点に達した音楽が冷めてゆく過程の中で起きる。その間ギャロップのリズムを刻んできたチェロが、静かに足を止める手順を形成している。事実上の「オートマチックリタルダンド」だと解し得る。3小節後に迫った「Meno Allegro」を自然に導くための準備である。
3を2で割るリズム的な半端感を用いて段落の切れ目を巧みにマーキングしているように感じる。しかも2回ともチェロが主役である。
お相撲の話を聞いたことがある。髷をきつく結い、まわしをきつく締める。体の両端2箇所をきつく締めることで体がキリリと引き締まり、信じられない力が出るのだという。
3を2で割るクリップが再現部の直前と「Meno Allegro」の直前計2箇所に置かれることで、第一楽章がキリリと締まっているような気がする。いわば髷とまわしだ。 お相撲のルールでは、髷はともかく、まわしがはずれたら負けである。










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