ブラームスギャロップ
ギャロップとは馬の早駆けだ。全速力のことである。パッカパッカというイメージよりはずっと速いのだが、私自身は「ブラームスギャロップ」を「パッカパッカ」というニュアンスで用いている。
「ブラームスギャロップ」とは「ブラームスのパッカパッカ」である。これだけでは何のことやらさっぱり判らぬと思うのでもう少し真面目に定義する。ブラームス作品の根幹を為すソナタ形式の楽曲において、副次主題に「8分音符+16分休符+16分音符」というリズムがしばしば現れる。副次主題とは大雑把に第一主題以外という程度の意味だ。ソナタ形式の楽章において、第一主題の提示を終える頃に、このリズムをもった主題が現れて気分を劇的に変えることがある。この現象に個人的にネーミングしたのが「ブラームスギャロップ」である。ブルックナーの交響曲にはいくつかこの手のネーミングを持った現象が現れる。「ブルックナー開始」「ブルックナー三連符」の類である。ブラームスにもこの手の命名が1つ2つあってもいいと思う。
- ピアノ五重奏曲第1楽章
- 交響曲第2番第1楽章
- ヴァイオリン協奏曲第1楽章
- 悲劇的序曲
- ピアノ協奏曲第2番第1楽章
- 弦楽五重奏曲第1番第1楽章
- ヴァイオリンソナタ第2番第1楽章
- ピアノ三重奏曲第3番第1楽章
- クラリネットソナタ第1番第1楽章
ピアノ四重奏曲第3番第1楽章や、クラリネット五重奏曲第1楽章も精神的にはこれに加えたい気分である。ヴァイオリンソナタ第1番と、ピアノ三重奏曲第2番は第1主題にこのリズムが現れてしまうのでひとまず棚上げとする。あるいは、ピアノ五重奏曲第3楽章のように第1楽章以外に出現するケースについてもやはり扱いを保留する。
これらの「ブラームスギャロップ」は、大抵なめらかな第1主題と対比する形で出現していることが特徴だ。ブラームスの真作かどうかに議論があるイ長調ピアノ三重奏曲の第1楽章には、実はこのリズムの第2主題が現れる。
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