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カテゴリー「113 リズム」の14件の記事

2017年8月14日 (月)

叩き分ける

交響曲第2番の第4楽章アレグロ2分の2拍子も大詰め、405小節から弦楽器が8分音符で音階行きつ戻りつを始める場所で、ティンパニもまた8音符でD音を叩く。一段落の413小節目では、これが「tr」に変わって3小節半続く。そしてクライマックスの417小節目からは、6連符になって2分音符を6つに割る。

アレグロで疾走するホンのわずかの間に、8分音符、トレモロ、6連符という具合に刻み方が変わる。音程はラとレだけ、単に刻みの密度だけが表現の手段だ。CDによっては、この変化がクッキリと、聞こえてこない時があって興ざめすることがある。

遠い昔、大学オケで初心者のヴィオラ弾きだった私は、ブラ2のクライマックスのこの場所のティンパニを聞きながら、必死だった。ティンパニの刻み分けをヴィオラの位置から聴くのは、楽しみの一つだった。

2016年1月19日 (火)

ソロシンコペーション

勝手気ままな私の造語。複数パート作品で、他のパートが全て通常ビートを刻む中、1つのパートだけが単独でシンコペーションを奏しているケースを指す。シンコペーション大好きなブラームスだが、シンコペーションとしてリズム的な衝突を意図しながら、その衝突をたった一つのパートにゆだねているケースだ。理屈の上では、ヴァイオリンソナタにおいて、ピアノが通常ビートを刻む中、ヴァイオリンがシンコペーションを打った場合、この定義を満足してしまうにはしまうのだが、通常ビートを打つパートが多ければ多いほど、それらしい。

第4交響曲第3楽章275小節目には、我がヴィオラにソロシンコペーションが現れる。オーラスのフォルテシモに到達する直前だから、大見せ場なのだが、なかなか聞こえない場所でもある。

さて、ソロシンコペーションの最大の名所がクラリネット五重奏曲第一楽章に存在する。24小節目と148小節目。提示部と再現部に割れた同じ景色と思っていい。

クラリネットはお休み。セカンドヴァイオリンとチェロが付点四分音符2個で、8分の6拍子1小節を2分するのに対し、ファーストヴァイオリンは4分音符3個を並べる。真ん中の四分音符には装飾音符が付与されて強調され、4分の3拍子が形成されている。ヴィオラは微妙。スラーのかかりかたは、小節を2分する8分の6なのだが、音の割付が4分の3拍子のシンコペーションに聞こえる。このときファーストヴァイオリンがシンコペーションにも聞こえるのだが、ヘミオラと解することも可能だ。ヴィオラの音の割付こそがシンコペーションと判定するべきだろう。

この場所、ファーストヴァイオリンとの呼吸合わせにこそ、アンサンブルの醍醐味が凝縮されている。1小節後のフォルテの総奏の準備としても秀逸である。

2015年10月 9日 (金)

分布調査

昨日の記事「Drei D」で、ヴァイオリンソナタ第1番全体にちりばめられた「レッレレー」の音型について一般論を述べた。話自体は目新しいものではない。ブログ「ブラームスの辞書」としては、その「レッレレー」を数えてみようと思う。「多い多い」と言ってるばかりでは議論にならないからだ。

調査の前に定義を明らかにする。

  1. 4分音符+8分休符+8分音符+付点4分音符
  2. 8分音符+16分休符+16分音符+付点4分音符
  3. 休符を除く3つの音の高さが変わらない。「D」に限らずカウントする。
  4. 最後の音符が、直前の音符より長い。「レッレレー」は○だが、「レッレレ」は×。
  5. 冒頭が付点になり、次の休符が脱落したケースはカウントしない。

拡大調査として以下も別途カウントする。

  1. 3つ目の音で、高さが変化するケース。「レッレファー」のようなパターン。
  2. レッレレー」を構成する3つの音のうち、一部または全部が和音になっているケース。

明日以降順次結果を発表する。

2015年8月10日 (月)

リズム感覚試験

「ポリリズム」と言うらしい。同時に複数の系統のリズムが鳴る現象のことである。

複数のパート間のリズムの衝突を味わう部分である。無論ブラームスはこれが大好きであるばかりかブラームス節の根幹でさえある。スラーが頻繁に小節線を跨ぐお陰で、肝心要の小節の頭を感じにくい構造が不安感に拍車をかける。この状態を和声的な衝突と共存させることで音楽に異様な推進力がこもる。全てはブラームスにとって計算ずくの話だ。やがて来る和声的解決と、リズム的な衝突の解消をより深く印象付けるための工夫と言って良い。

そうは言うものの、演奏者にとっては厄介である。弦楽四重奏第2番第1楽章にそうしたケースの典型が存在する。結末も程近い315小節目からの6小節間だ。ヴィオラと第2ヴァイオリンだけは同じリズムだが、第1ヴァイオリンとチェロは全く違うリズムが奏されている。しばしばスラーが拍頭を跨ぐので確固たるリズム感を全員が持ち合わせた上で、そのリズム感が一致していなければならぬという難所である。

別の人格が演奏するアンサンブルの方が、性質がいいのか悪いのか。独奏ピアノの右手と左手だとどうなるのかの格好のサンプルもある。パガニーニの主題による変奏曲には、はっきりと記譜上にポリリズムが出現する。第2巻109小節目第7変奏は、右手と左手で記譜上の拍子が違っているのだ。それも「4分の2」と「8分の6」程度ならかわい気もあるのだが、そうは問屋が卸さない。あろうことか右手が「4分の2」であるのに対して左手には「8分の3」が要求されている。「1小節を1拍で感じて」と言うのは容易だが、これを「vivace」のテンポに乗って「p leggiero e ben marcato」で駆け抜けねばならないのだ。

「難儀だ難儀だ」というニュアンスで書いたが、実はこれはブラームス節を強く定義付ける現象だ。ブラームス好きたるもの、このあたりを疎んじてはなるまい。

2012年12月27日 (木)

クロスリズム

ピアノ五重奏曲の第3楽章の魅力は、4分の2拍子と8分の6拍子の頻繁な交代にある。その対比が聞かせどころの一つには違いないのだが、この両者の錯綜共存は見られない。弦楽四重奏第3番フィナーレには、これらの拍子に加え、4分の3拍子までが同時に鳴る場所が存在するけれど、次女たちが挑むスケルツォでは共存が避けられている。

ところが例外が一箇所。トリオのそのまた中間部、練習番号E226小節目のピアノ左手に注目願いたい。ここから拍子が4分の2に変わる場所。4分の2拍子の2拍目に3連符が配置される。ピアノ左手だけ2拍目が3分割された2拍子を弾く。つまりその間事実上の8分の6拍子ということになる。ピアノと第一ヴァイオリンが4分の2拍子だから、そこで8分の6拍子を弾くピアノ左手との間にリズム的な緊張が起きる。これがクロスリズムだ。234小節目のアウフタクトからはチェロに引き継がれる。ピアノとヴァイオリンのダイナミクスがメゾフォルテであるのに対してチェロはフォルテだから、「チェロが引っ込み過ぎてはなりませぬ」というブラームスからのお達し。クロスリズムを際立たせよという意図だ。

そうしたリズム的拮抗はやがて結審される。242小節で全体が8分の6拍子に戻る。チェロの8分の6拍子は、一足先の復帰だったことが明らかになる。トリオの開始部のチェロと5度違いの瓜二つとなっている。トリオ低音部は事実上8分の6拍子で貫かれている。

2012年3月 5日 (月)

後打ち強調

「大学祝典序曲」に引用された学生歌の中で、もっとも有名なのは「新入生の歌」かもしれない。世界的に見れば「ガウデアムス」だと思うが、ここ日本では受験生を中心に知名度が高そうだ。

157小節目「Animato」のファゴットに率いられたユーモラスなフレーズは「Das Fuchslied」の面目躍如だ。この時の伴奏声部に注目する。ヴィオラを始めてやっと1年のひよっこの私だったがここの伴奏にしびれた。軽快な後打ちになっていたのだ。どうもブラームスは、「新入生の歌」に後打ちを絡ませるのが好きらしい。

その後176小節目のスフォルツァンドは2拍子の2拍目を強調している。230小節目からのフォルテシモでは弦楽器が後打ちでふんばり続ける。

ところが、学生歌集で元歌を調べると、ちっとも後打ちが見当たらない。アクセントやスフォルツァンドで補強されていないのだ。CDを聴いても裏拍の強調が無い。弱拍または裏拍の強調は、原曲に由来するものではなく、引用をしたブラームスのセンスだということに他ならない。それはそうだ。酒宴で歌われることを考えると錯綜したリズムでは具合が悪かろう。宴会の手拍子で後打ち入れる奴など見たことがない。

新入生の歌に後打ちを施したブラームスの意図は、大団円の「ガウデアムス」にある。379小節目「マエストーソ」で「ガウデアムス」になだれ込む直前には、オーボエ、クラリネット、ホルン、トランペットが「新入生の歌」を強奏している。これをその他の楽器が「後打ちで」支える構図になっている。そしてまさにその「裏拍強調」が終わると同時に「ガウデアムス」が始まるのだ。この効果は目を見張るばかりである。

「新入生の歌」の後打ちは、「ガウデアムス」の遠い準備のためにあると位置付けたい。

2008年10月 8日 (水)

刻み

「後打ち」「アルペジオ」と並ぶ伴奏音形の典型。一定の律動を伴っていても、音が乱高下するような場合は「刻み」とは言わない気がする。正確な定義は大変難しいから、実例を列挙することでお茶を濁す。

何と申しても第一交響曲の冒頭、大地のような低い「C」音の拍動が有名だ。聴かせどころではあるが、フォルテシモではないことに意義があると思っている。ベートーヴェンやモーツアルトに特有のアレグロの疾走感を規定する刻みとは程遠い。

一方作品の冒頭に低いところで延々と主音が刻まれるという意味では、ドイツレクイエムも同類である。スラーで数珠繋ぎになった「F」音が「p」で延々と続く。両極端のダイナミクスではあるが、何だか地の底で第一交響曲と繋がっているような気がする。

室内楽に目を移す。ピアノ四重奏曲第3番第1楽章にヴィオラの見せ場がある。142小節目だ。松ヤニの煙立ちこめんばかりの渾身の刻みである。しかも151小節目まで全ての瞬間が重音になっているばかりかシャープが5個も鎮座するので開放弦も使えない。テクニックの都合でよく重音の片側をはしょることの多い私だが、ここだけはそれをしてはいけない。一生懸命に弾くとご褒美がある。164小節目からまた同様の見せ場が訪れる。今度はシャープが1個になっている。重音を強いられることに変わりはないが、開放弦を使える分だけストレスは低い。この刻みを伴奏だと思って弾いたことなど一度もない宝物である。

それからヴァイオリン協奏曲の第1楽章にもある。353小節目、ここのヴィオラの三連符の刻みはカッコよさにおいて比類がない。独奏ヴァイオリンのシンコペーションの向こうを張る決然たる刻みだ。伴奏だと思って弾くのは罰当たりである。

2008年10月 4日 (土)

後打ち

10月1日の記事「伴奏ルネサンス」の中で述べた「3大伴奏パターン」の一つ。拍頭に休符を据え、裏拍に音を出すことだ。1拍だけでは成り立ちにくい。複数拍継続することでより効果が鮮明となる。

ハンガリア舞曲のヴィオラパートに多い。「ブラームスの辞書」でもブラームス作品に出現する後打ちを全部数えるなどということは試みていない。罪滅ぼしに印象的な箇所をあげる。

まずは室内楽。ピアノ三重奏曲第1番第4楽章の64小節目。第二主題とともにチェロとピアノの左手に現われる。ここから87小節目まで何らかの形で後打ちされる。特に「f pesante」と記されたチェロのカッコ良さは並ではない。伴奏という言葉を寄せ付けぬ凄みがある。この第二主題は1854年の初版には全く現われない。

続いて交響曲。第4交響曲第2楽章41小節目からの第1ヴァイオリンだ。この場所いわゆる第2主題である。旋律はチェロだからこの第一ヴァイオリンは伴奏だなどという認識は罰当たりの対象でさえある。雄渾なチェロを縁取る繊細な刺繍である。特に42小節目の後半の後打ちは言葉になりにくい魅力がある。

最後に厳密な後打ちとは呼べない掟破りな場所を一つだけ。第2交響曲第3楽章22小節目だ。2小節前からシンコペーションを吹いているホルンは、一足先にフェルマータに流れ込んだ木管楽器とチェロに遅れてD音を差し込む。これが後打ちに聴こえるのだ。しかもこの場所が再現部になるころ、つまり218小節目ではヴィオラがホルンになり代わって受け持つことになる。

2008年4月21日 (月)

交換法則

中学校の数学で習う。足し算またはかけ算の場合、順番を入れ替えても答えは同じになるという法則だ。「4かける3」と「3かける4」どちらも答えは12になる。これを学問めかしていうと交換法則という訳である。

ブラームスの作品の中に「4×3=3×4」を実感させてくれる箇所がある。

本日ばかりは譜例がないと厳しいといいつつ強行突破である。

ピアノソナタ第2番の楽譜があれば開いて欲しい。4分の3拍子の第1楽章だ。定義によれば4分の3拍子は、つまり1小節に4分音符が3個だから、16分音符ならば4×3で12個だ。4分の3拍子と言われれば誰しも「16分音符ならば12個」とたちまち暗算が可能である。ブラームスとて例外ではない。問題のピアノソナタ第2番第1楽章においてブラームスは16分音符が12個という事実を切り口に交換法則を証明する。

冒頭部フォルテシモで16分音符の和音が打ち鳴らされた後16分音符2個分の休みの後、「A-H-Cis」と「Fis-Gis-A」という具合に音階にそって3段階上行する音型が強調される。ここでは16分音符3つでグルーピングされている。楽譜を見ずに演奏だけを聴くと16分音符が3個一組のフレーズに聞こえる。この音階状に上行する3音のモチーフは第1楽章の冒頭付近で微妙に音価を変えながら執拗に繰り返される他、第2と第3の両楽章の冒頭でも出現し、このソナタ全体を括るモチーフの役割をになっている。だから16分音符3個一組に聞こえることは必然でさえある。つまり「3×4」の表明だ。

でありながら、一方でブラームスは3拍目の四分音符にアクセントを付与している。このアクセントは明らかに「4×3」に由来する痕跡である。「12個の16分音符」を軸足に「4×3」と「3×4」の境界付近で行きつ戻りつを楽しんでいる。3小節目から4小節間は「4×3」に戻っているものの、7小節目から怪しくなり9小節目でまたどっちつかずとなる。

演奏者のリズム感に挑戦するかのようであるが、その意図は明確だ。上行する3連音の強調に他なるまい。

2007年11月11日 (日)

3+2+2+2

弦楽五重奏曲第2番op111の第1楽章の話をする。ユニークな8分の9拍子だ。1小節の中に8分音符が9個存在できる。普通はそれらが3個一組に括られている。いわゆる複合拍子というやつだ。第2主題と呼び習わされているところ26小節目では、ブラームスのヘミオラ好きが透けて見える。最初に楽譜を見たときには、思わず8分音符を数えてしまった。

29小節目のフレージングは「3×3=9」の表出になっていないのだ。小節冒頭こそ8分音符3個でまとまっているが、後半は8分音符2個ずつ3組のフレージングになっている。8分音符でいうと1個目、4個目、6個目、8個目に緩いアクセントが置かれている。つまり「3+2+2+2=9」になっている。聴いた感じは全く違和感がない。ブラームスによくあるケース「楽譜を見てびっくり」という典型だ。続く33小節目、35小節目も同様だ。

1890年11月11日つまり117年前の今日、ウイーンで初演された。作品番号といい、初演日といい「1」がやたらと重なっている。

だから今日11月11日を狙って記事にした。

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