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カテゴリー「201 ピアノ曲」の156件の記事

2021年9月 3日 (金)

連弾王

シューベルトを「裏ワルツ王 裏」と認定した勢いで続ける。作品全体を見渡して感じるのはピアノ連弾曲が多い。短い作品が多いが、数が多いのでCD5枚組になるかもしれない。

ブラームスが世に出たきっかけ「ハンガリア舞曲」はピアノ連弾だった。作品39の「ワルツ」もオリジナルは連弾用だ。管弦楽や4重奏以上の室内楽には連弾バージョンが存在するが、シューベルトはもっと多い印象。D番号順にざっと拾っておく。

  1. 幻想曲ト長調 D1
  2. 幻想曲ト短調 D9
  3. 幻想曲ハ短調 D48
  4. 6つのポロネーズ D599
  5. 3つの英雄的行進曲 D602
  6. ロンド ニ長調 D608
  7. ドイツ舞曲と2つのレントラー D618
  8. フランスの歌による8つの変奏曲 D624
  9. 序曲 ト短調 D668
  10. 序曲 ヘ長調 D675
  11. 3つの軍隊行進曲 D733
  12. グランデュオ D812
  13. 自作主題による変奏曲 D813
  14. 4つのレントラー D814
  15. ハンガリー風ディヴェルティスマン D818
  16. 6つの大行進曲 D819
  17. フランス風主題による変奏曲 D823
  18. 6つのポロネーズ D824
  19. 大葬送行進曲 D859
  20. 英雄的大行進曲 D885
  21. 子供の行進曲 D928
  22. ファンタジーヘ短調 D940
  23. アレグロイ短調 D947
  24. ロンドイ長調 D951
  25. アレグロモデラートとアンダンテ D968A
  26. 2つの性格的な行進曲 D968B

すごい量。シューベルトを「連弾王」とひそかに認定する。念のために申し添えると独唱者一人にピアノ連弾の伴奏というケースは一つもない。

 

2021年7月 6日 (火)

D946

「3つのピアノ小品」という。構成は下記。

  1. 変ホ短調
  2. 変ホ長調
  3. ハ長調

1番の自筆譜の日付から死の年1828年の作曲だと考えられている。出版は没後40年を経た1868年。スケッチの状態で発見されたものを編集して出版にこぎつけたが、この時の編集者はなんとなんとブラームスだった。1862年のウイーン進出直後からしばらく続いたシューベルト研究の成果と位置付け得るのだが、当時ブラームスの名前は伏せられていた。

タイトルに明記こそされないが、事実上の「即興曲」だ。1番変ホ短調は、ブラームスのピアノ作品演奏では一番のお気に入りペーターレーゼルの全集に入っていたのを聴いて、望外の収穫だと狂喜した。根拠不明ながらブラームスのインテルメッツォの遠い先祖な感じがする。出版せねばと思い込んだブラームスの着眼が嬉しい。2番変ホ長調は、ブラームスのop117-1変ホ長調のインテルメッツォ然とした風情で立ち上がる。旋律が3度で重ねられるのもブラームスっぽいなどと言っていると中間部のしゃれたいでたちにハッとさせられる。3番ハ長調はブラームスのop116-1のようなリズムのいたずら。聴いた感じと楽譜の落差が際立つ。

3曲とも小洒落たと言うか、気が利いている言うか、垢ぬけてると言うか、シューベルトの公式な即興曲と何ら遜色はないどころか、今やこちらの方がお気に入りだ。

レーゼルもレーゼルで、全集のボックスに収録されたシューベルトの中にソナタや即興曲もなく、小品が少しばかりにとどまっている中、この3曲はキッチリ入っている。ブラームス全集には定評のある人だから、ブラームスの手による編集ということで特段の愛着があったのかもしれないと勘ぐっている。

ブラームスとシューベルトの深い絆を象徴するエピソード。

なんだか温まってきた。

2021年7月 5日 (月)

即興曲

オリジナルは「Impromptus」という。ベートーヴェンを意識してか、ソナタとなるとやけに力が入ってしまうシューベルトなのだが、こうした小品でこそ自由に羽ばたける。全部で8曲が知られる。

<D899>

  1. ハ短調 Allegro molto moderato
  2. 変ホ長調  Allegro
  3. 変ト長調  Andante
  4. 変イ短調  Allegretto

<D935>

  1. ヘ短調 Allegro moderato
  2. 変イ長調  Allegretto
  3. 変ロ長調  Andante
  4. ヘ短調 Allegro scherzando 

なんだかフラット系に偏っている。

ブラームスがピアノを教授する際の教材として、ベートーヴェンのソナタやバッハの教育的作品に混じって、シューベルトの即興曲があったという証言がある。この8曲のうちどれだったかは不明だが興味深い。

ブラームスのop76を皮切りに晩年にかけで生み出されたカプリチオやインテルメツォの遠い祖先という気がする。遠いには遠いのだが、直系と見た。

2021年6月22日 (火)

弾き手の性別

演奏者の姿が見えないまま、演奏だけを聴かされた場合、聴き手は演奏者の性別をどの程度当てられるものだろうか?

話をピアノ演奏に限定すると、ブラームスはどうやらこの「弾き手の性別当て」を特技にしていたらしい。しばしば友人の間違いを指摘して「これだけは絶対に自信があるね」と自慢していたというエピソードを親しい知人が証言している。演奏する曲は自作に限った話ではなかったようだ。コツや種明かしは一切されていないが、ブラームスはかなり自信たっぷりである。

音に何らかの痕跡が現われて、ブラームスはそれを聞き分けていたということなのだろうが、私は全く自信がない。CDやパソコンのお陰で聞き比べは簡単に出来るのだが、演奏者名はおろか性別も当てられない。

さすがに歌曲ならば間違えることはないが、こればかりは自慢になるまい。

2020年9月25日 (金)

グールド

ブラームスのピアノ協奏曲第1番をめぐるバーンスタインとのやりとり。そのブラームスのピアノ小品の演奏、新旧のゴールドベルク変奏曲をはじめとするバッハ作品のキラメキ。

今までだってずっとグールドには一定の敬意を払ってきた。超生意気に言えばどちらかと言えば好きな部類の演奏家だ。

しかし心をもっとも揺さぶられたのは、チェロのレナードローズと録音したバッハのガンバソナタだ。2人の演奏家のアンサンブルでありながら、ピアノの両手とガンバによる事実上のトリオソナタという曲本来の来歴をカラリとあっけなく音にしてくれるとでも申せばいいのだろうか。ピアノの左右の声部がくっきりと聴こえる。加えて本人のハミングを交えた四重奏だというジョークも一笑に付せない説得力がある。

鍵盤楽器のためのバッハ作品では、チェンバロ演奏が好きなのだが、グールドだけは例外だ。ガンバソナタだけではない。ラレードとのヴァイオリンソナタも同じ意味で同列。

彼は1932年9月25日のお生まれ。今日は誕生日だ。

 

 

2020年9月 6日 (日)

半音階的幻想曲とフーガ

バッハのクラヴィーア作品の一つでニ短調BWV903を背負っている。「半音階的」というのがロマン派諸氏の琴線に触れたのか、バッハが忘れられていた時代にも、例外的に人気があったという。ブラームスの伝記の中でもブラームスのお気に入り作品の一つして言及されていることが多い。

「半音階的」というネーミングの元になったのが、後半のフーガの主題だ。「A-B-H-C」という具合に半音上昇が3回連続して立ち上がる。何と言ってもこれは「BACH」のスペルを並べ替えた代物だ。このあたりの曰くありげなところが、ロマン派好みだと思われる。3小節目には「E-F-Fis-G」も現れて半音の上行を強調するしかけになっている。

実はこの一連の半音進行を聴くと思い出す作品がある。「H-His-Cis-Cisis-Dis」と立ち上がるインテルメッツォop116-6には、この手の半音進行が入れ替わり立ち替わり現れる。拍子も同じ4分の3だ。2つ目のHisが、同時に鳴らされる「H」と7度でチャーミングに衝突するのを楽しむ音楽だ。もちろんこちらはフーガにはなっていないが、ブラームスのバッハラブの反映かもしれない。

2020年9月 5日 (土)

バッハのフーガ

10代からブラームスはバッハに親しんでいた。それは一生背負うブラームスのキャラクターの一部になった。

だから、10代でのコンサートで弾いた中にも「バッハのフーガ」が出てくる。「バッハのフーガ」はピアニストとしてのブラームスの重要なレパートリーでもある。楽友協会の音楽監督在任中の選曲にも「バッハのフーガ」が現われるし、クララのとの最後の対面でも「バッハのフーガ」が弾かれたとされている。

ところが、愛好家として残念なのは、数ある「バッハのフーガ」のうちのどれなのか、さっぱり明らかでないことが多いのだ。ブラームスの伝記は本人が日記を残していないこともあって、多くの親しい知人たちの証言の堆積と言ってもいい。「バッハのフーガ」が弾かれたことを証言する知人の多くが、具体的にどの作品かに言及していないと思われる。BWV番号という便利なものが無かったことが大きい。最近不備も指摘されるBWV番号だが、膨大なバッハ作品の固体識別への寄与は計り知れない。弾かれた作品が「バッハのフーガだな」とまでは判っても「どれ」と断ずるのは相当難しいのだと思う。

さらにクラヴィーア用のフーガばかりでなくオルガン用のフーガもピアノで弾かれた可能性もあるのだから固体特定は輪をかけて難しくなる。

「半音階的幻想曲とフーガ」はむしろ貴重な例外と解するべきかもしれない。

2020年8月23日 (日)

CAFEインテルメッツォ

まったくもってカフェとして実在しそう。

実は記事「インテルメッツォ組曲BACH」の続きである。ブラームスのインテルメッツォから調性が「BACH」になる4曲を私的に選定した。これを「CAFE」でやってみるという趣向。ただし、「BACH」で選定した4曲からは選ばないという条件付きとする。

  • C インテルメッツォCdurop76-8
  • A インテルメッツォAmollop76-7 
  • F インテルメッツォFmollop118-4
  • E インテルメッツォEdurop116-4

やれやれBACHとは一転してしっぶーい選定となった。ブラックもいいとこで、焙煎も深めに違いない。

2020年8月21日 (金)

インテルメッツォ組曲BACH

今度はピアノ独奏曲だ。それもインテルメッツォ縛りという制約付きである。ブラームスのピアノ小品インテルメッツォから主音が「BACH」なっているもの4つを選ぶというお遊び。

  • B インテルメッツォ変ロ短調op117-2
  • A インテルメッツォイ長調op118-2
  • C インテルメッツオハ長調op119-3
  • H インテルメッツォロ短調op119-1

我ながら完璧だ。長短2曲ずつ。Bが変ロ長調でなくて短調なところに意外性がある。Aは文句なしのテネラメンテだ。Cは「ソラソミ」のたき火。そしてHは「灰色の真珠」である。私的ベスト3がみな入っている。

 

2019年12月 8日 (日)

Molto passionato の続き

それは全くもっていつも通りの習慣だった。出来上がった作品を出版前にクララに見せるのだ。今回は特にピアノ独奏曲だからクララの意見が楽しみでさえあった。

やがて、望み通りの展開になった。クララがその曲を演奏してくれるというのだ。何となく嬉しい気持ちは、クララの演奏を聴いて吹き飛んだ。冒頭の発想記号として「Molto passionato」と書いたその楽譜を見ながら、クララは、ブラームスのイメージよりずっと遅いテンポで弾き始めたのだ。

「こりゃ、いかん」と思ったが、その気持ちをぐっと飲み込んで聴いているうちに、「こういうのもありかな」と思えるようになってきた。

出版にあたって「Molto passionato」の指示だけでは、速過ぎるテンポを採用されかねない。かといって「Allegro ma non troppo e molto passionato」にする訳にも行かない事情があった。だから「Molto passionato」の後ろにカンマを挟んで「ma non troppo allegro」と追加した。

種明かしをする。この曲とはラプソディート短調op79-2だ。クララの解釈するテンポに一定の説得力を感じたブラームスは結局「Molto passionato,ma non troppo allegro」を最終稿とした。「2つのラプソディ」は1番ロ短調が「Agitato」だ。2番も「Molto passionato」として、直接的な速度用語を掲げないことにこだわったのではないかと想像する。それが「Allegro ma non troppo e molto passionato」と出来ない事情だ。「molto passionato」の後に連ねる場合「allegro ma non troppo」では語呂が悪い。やむなく語順を入れ替えて倒置形の「ma non troppo allegro」を採用して後に続けたのだ。

ノントロッパーのブラームスは「allegro」を「non troppo」で修飾することが多い。生涯に33箇所ある。しかし語順の転倒が起きているのはこのラプソディーただ一つだ。「presto」と「non troppo」の共存は11回あって、うち過半数の6回が「non troppo」を先行させていることと鮮やかな対照をなす。それほど「Allgero」に対して「non troppo」が先行することは異例なのだ。

ヨハネス・ブラームスの苦肉の策である。

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