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カテゴリー「202 歌曲」の377件の記事

2022年1月 9日 (日)

歌の経験

大学入学後に習い始めたヴィオラ演奏の経験が、ブログ「ブラームスの辞書」の基礎になっていることは、疑い得ない。拙いながらもヴィオラでブラームス作品の演奏に参加した記憶は、至る所に痕跡となって横たわっている。

ここでハタと考える。

もし歌の経験があったらどうなるだろう。

ヴィオラでブラームスに親しんだ記憶だけでもこれだけ楽しいのだから、ブラームスを歌った記憶があればもっと楽しいだろう。オフィシャルには「日曜日」op47-3を高校の授業で歌っただけだ。

最近ブラームスやシューベルトの声楽作品に触れて心からそう感じる。ドイツレクイエムの演奏にヴィオラではなくコーラスで参加していたら、ブログの記事が1ダースは書けるだろう。混声合唱版の民謡を歌えたら、唖然とするような発見が出来るに違いない。

声楽愛好家にとってのブラームスが、並ではない喜びを与える存在だろうと想像している。ただただ羨ましい。

2021年12月31日 (金)

啓示

本日この記事をもって「第二歌曲特集」をお開きとする。この7か月本当にお世話になったフィッシャーディースカウ先生の著書「シューベルトの歌曲をたどって」を今一度引用する。

先生はブラームスがシューベルトを終生変わらず、しかも理解に満ちて崇拝していたと評する。そして極めつけの瞬間が458ページにやってくる。「シューベルトの歌曲において、何かを学び取れない作品は一つもない」と言ったブラームスの言葉を引きながら、「こう言ったこと自体がブラームス本人の名誉になっている」と断言しておられる。

このブラームスの言葉は弟子のグスタフ・イエンナーがブラームスから作曲を学んだ時の記憶として証言しているもの同じ系統にある。当時のウイーンでのシューベルトの扱われ方まで微妙に反映しているとにらんでいる。つまりブラームスの周りにシューベルトを評価しないか悪く言う人がいたり、そうしたネガティブは評価がブラームスの耳にも弟子の耳に届いていたことの反映だろう。「シューベルト舐めてんじゃないですよ」のニュアンスを含むと思っている。こうした背景をよく噛みしめて今一度フィッシャーディースカウ先生の言葉を見直すといい。

「シューベルトの歌曲において、何かを学び取れない作品は一つもない」と、評したことそれ自体がブラームス自身の名誉である。

含蓄がある。深い。泣きたい。

弟子にも自分にも世間にもシューベルトを擁護を言い聞かせるブラームスだが、そのこと自体が発言者ブラームスの見識の深さと懐の深さの証拠になっているとは。それをバッサリと断言するフィッシャーディースカウ先生の言葉を紹介してお開きの挨拶といたします。

 

2021年12月29日 (水)

忠実な召使い

歌曲の歴史に王として君臨するシューベルト。王でも皇帝でも天皇でも事情は同じだが、後継者争いは一大事である。戦争の発端となる例は枚挙にいとまがない。

それでは「歌曲の王」の後継者は誰なのか。なんだかシューマンは違うという漠然とした思いがことの発端だ。私を歌曲というジャンルに導いてくれたのはブラームスだ。中学時代に音楽の授業で「魔王」を習ってはいるのだが、断じてシューベルトに導かれたとは言えない。

このほどの第二歌曲特集は、大好きなブラームスの歌曲を歌曲の歴史の上に置いて、しみじみと眺めなおしたいという一念から決意した。そしてそのツールにシューベルトを選んだという構図。「王の底力」を体験した上で、それでもなおブラームスラブが揺るがないのかどうかだ。ブラームスがシューベルトを敬愛したことは、伝記を読み進めていけばすぐに気づく。作品という証拠をあたってそのことを実感したいと思った。

結果、ブラームスラヴは微動だにしなかったが、巨大な副産物にありついた。シューベルトの歌曲のすばらしさに気づいたということ。敬愛してやまなかったブラームスの気持ちに少し近づけた。

歌曲王シューベルト、王子ブラームス。そして私はその忠実な召使い。

2021年12月28日 (火)

王子の座

大好きなブラームスの歌曲を、歌曲の歴史の中においてみたいと思い立ち、手っ取り早くシューベルトをツールに探求を続けてきた。片や歌曲の王で創作数575曲。ブラームスは民謡を入れても300に届かない。

でどうだったのか述べたい。自分の好みの上位50曲どうしならなんらそん色はない。がしかし、総数で半分以下では、品ぞろえがどうしても負ける。シューベルトが百貨店なら、ブラームスは専門店だ。シューベルトの品ぞろえの一部を取り出してそこに集中したのがブラームス。そのジャンルは有節歌曲だ。ドラマ性が勝ってしまうバラードや叙事詩には距離を置き、民謡と見まがうような有節歌曲を拡充した。品ぞろえで王に勝てぬのは承知の上で専門性で勝負した。テキストの重複を避けるべく、三大詩人は意図的に回避して差別化を図ったようにも見える。

アッと驚く新機軸は最後にとっておいたのだろう。「4つの厳粛な歌」では聖書から自由にフレーズを抜き出すという荒療治に打って出た。シューベルトにはない発想。交響曲の4つの楽章をなぞってはいまかという妄想も膨らむ。

 

 

2021年12月27日 (月)

さて困った

実は早くに決まっていた。だから困った振りだ。「シューベルト最愛の歌曲」の選定の話だ。ブラームス最愛の歌曲は「野に一人いて」op86-2だ。12年前から今日まで不動である。

シューベルト歌曲の最愛の一作は「夜と夢」D827である。テキストはコリン。シューベルトは前年に没したテキスト供給者への追悼として同詩に曲をつけた。フィッシャーディースカウ先生はご著書の中でこの曲を絶賛しておられる。「アダージョ歌曲の最高峰」「純粋なるものへの郷愁と没我」「極端に長い息に遅いテンポが重なって4拍子の枠に収まらない」「節度あるリズムによってのみ救われる」「ダイナミクスは断固ppが維持されるがテキストの起伏をその枠内で表現せねばならい」「ロ長調にはさまれたト長調の研ぎ澄まされた感性」など、そりゃあもういつになく雄弁。もしかすると先生もこの曲が好きなのではと勘繰りたくもなる。

だからというわけではないが、まさにシューベルト漬けだったこの一年半の取り組みの過程で、もう半年前には決めていた。

そう、「王と王子の12番歌合せ 」の9組目はこの「夜と夢」にブラームスの「野に一人いて」をあてがって「最愛の歌曲歌合せ」を仕込んでおいた。私の判定は愛をこめて引き分けだ。

泣きたい。

2021年12月26日 (日)

GOTOシューベルト

本年5月8日に始まった第二歌曲特集は、6月には事実上のシューベルト特集となって今に至る。いよいよ大晦日をもってお開きとなる。かれこれ8か月だ。かつて私はブログ「ブラームスの辞書」上でドヴォルザークを特集した。これは会期1年で262本の記事を積み上げた。ドヴォルザークは管弦楽、室内楽、歌曲、合唱曲、ピアノ曲、宗教作品まですべて話題にした一方、今回のシューベルトは、ほぼ歌曲だけで半年持たせた。歌曲の王シューベルトへの私なりの敬意の表明だ。

未曽有のパンデミックの中、心は本当に満たされていた。

やりがいと手ごたえ。シューベルトの歌曲に音をたててのめりこんだ。決意も完成も還暦過ぎとなった初めての大型企画だ。自分自身の脳味噌の機能の総点検をした気分。結果、若干の経過観察はあるものの精密検査沙汰にはならずにすんだくらいの感触。記事の枯渇への挑戦として始まったが、シューベルト、フィッシャーディースカウ両先生のお力を借りてなんとかエンディングを迎えることができそうだ。この規模の特集をあと5~6本ひねりだせれば記事確保にめどがつく。

2021年12月24日 (金)

アヴェマリアD839

正式名称は「エレンの歌」第3番。スコットの叙事詩「湖上の美人」全7曲の3番目という野暮な説明よりも「シューベルトのアヴェマリア」でOKだ。シューベルト特集の会期中にやってくるクリスマス用に温存しておいた。

ディースカウ先生はご著書の中でこの曲を多くのソプラノ歌手がレパートリーに加えているばかりか、あらゆる楽器のための編曲が試みられているとする一方、完璧に歌うには呼吸のテクニックにおいて名人芸が要求されており、ソプラノ歌手にとっての試金石だと付け加えることをためらわない。そうそしてご自身はグラムフォンの全集録音において収録を回避している。ソプラノさんにお任せするという姿勢の表れかと。

2021年12月23日 (木)

判定やいかに

記事「王と王子の12番歌合せ 」の判者つまりレフリーは私だ。本日は私の判定結果を公表する。

<第1組> ブラームスの勝ち

「糸を紡ぐグレートヒェン」と「永遠の愛について」という盤石の短調対決。前者が私的ベスト24から漏れていることからも明らか。

<第2組> ブラームスの勝ち

「月に寄す」「五月の夜」という「ヘルティ作詞の月夜歌合わせ」前者は比較的マイナーながら肉薄。意外な僅差。

<第3組> シューベルトの勝ち

「連祷」「サッフォーの頌歌」 遅い4拍子どうしだが、意外な大差でシューベルト。

<第4組> 引き分け

「幸福」「セレナーデ」 順当な引き分け。

<第5組> ブラームスの勝ち

「子守歌」対決。事実上の世界一決定戦かとぞ見る。

<第6組> シューベルトの勝ち

「ます」「雨の歌」、前者はピアノ五重奏、後者はヴァイオリンソナタの引用元。引用後の作品ならブラームスの圧勝だが、引用元だとシューベルト。

<第7組> シューベルトの勝ち

「水の上で歌う」「あの娘のもとへ」最愛の短調対決。泣く泣く判定。引き分けにしないのが愛。

<第8組> 引き分け

「夕映えの中で」「エーオルスのハープに」

<第9組> 引き分け

「夜と夢」「野に一人いて」 ブラームス最愛の歌曲とがっぷり四つに組んで引き分けるとは!

<第10組> シューベルトの勝ち

「ノルマンの歌」「領主フォンファルケンシュタイン」 思わぬ大差でシューベルト。

<第11組> シューベルトの勝ち

「シルヴィアに」「調べのように」 この勝負を心から楽しめる自分に乾杯。

<第12組> ブラームスの勝ち

「菩提樹」「日曜日」大接戦の末、ブラームスが差し切る。

ご覧の通り、シューベルト5勝、ブラームス4勝、3引き分け。前半終了時点でブラームスが3勝2敗1分けで折り返したが。案の定王者の貫禄で逆転。

 

 

 

2021年12月22日 (水)

最愛の短調

記事「シューベルトの24曲 」でシューベルト歌曲の私的ベスト24を紹介した。短調が少ない。一般的知名度では上位に来る「魔王」「死と乙女」「糸を紡ぐグレートヒェン」「セレナーデ」が落選している。ブラームスでも短調は24曲中5曲だから大差ない。もう私の脳みその構造に由来するとしか説明できない。

シューベルト歌曲の私的ベスト24の中に入選した短調作品は以下の通り。

  1. 月に寄す D193
  2. こびと D771
  3. 水の上で歌う D774
  4. ノルマンの歌 D846

これがいわばノミネート。シューベルト歌曲の短調私的ベストはこの中から決まるはずだ。非常に悩む。僅差で「水の上で歌う」に決めた。。

ブラームスだと下記のノミネネート。

  1. 永遠の愛について op43-1
  2. あの娘のもとへ op48-1
  3. 野を渡って op86-4
  4. 私は顔を向けてみた op121-2
  5. おお死よなんと苦しいことか op121-3

これも悩む。なんとか「あの娘のもとへ」に決まった。

つまり先に紹介した「王と王子の12番歌合せ 」の中の7組目は「最愛の短調歌合せ」だったということだ。

 

 

2021年12月21日 (火)

やっぱり「四つの厳粛な歌」

昨日の記事「王と王子の12番歌合せ 」を考える中、実感したことがある。シューベルトとブラームスの代表的な歌曲作品を12組設定して歌合せとする趣向のことだ。「室内楽の引用元」「子守歌」など「お題」にそって配置していくのは古典和歌伝統の「歌合せ」と同じだ。

ブラームスの「4つの厳粛な歌」は大好きなのだが、シューベルト側に呼応する作品がない。

「4つの厳粛な歌」はクララの死をきっかけに自らの死まで意識する中作られた。晩年の作品の代表と位置付けられる。つくづく「晩年」の定義を考えさせられた。「死の直前」というシンプルな定義でいいのかというこことだ。30代で亡くなったシューベルトと64歳で亡くなったブラームスを同列にとらえていいのか。若くして亡くなった作曲家は自身の死期を悟っていなかった可能性がある。ブラームスだって30代で「ドイツレクイエム」を書いているけれど、自身の死期を悟ってはいるまい。「4つの厳粛な歌」との違いはそこにある。

だからシューベルト側に「4つの厳粛な歌」に呼応させる作品を見つけらるはずはないのだ。シューベルトには、結果としての晩年はあっても、自らの死を意識した作品つまり「晩年の作」はない。あとからマーケティング上の都合でとってつけた「白鳥の歌」をそこに据えるのは、あまりに抵抗が大きい。

シューベルトに何ら落ち度はないけれど。

 

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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