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カテゴリー「204 室内楽」の411件の記事

2020年10月17日 (土)

さすが本場

「ボヘミアのバッハ」ことゼレンカの代表的な室内楽が「6つのソナタ」だ。

  1. ヘ長調
  2. ト短調
  3. 変ロ長調
  4. ト短調
  5. ヘ長調
  6. ハ短調

調性のバランスが考慮されていない感じがかえって新鮮だ。たった6曲なのに同じ調が2組もある。フラット系の調ばかり6曲が並ぶ。

1955年に初めて出版されて脚光を浴びた。バロック時代の代表的曲種「トリオソナタ」は「ソプラノ音域」の旋律楽器2つに、通奏低音と決まっている。通奏低音は、奏者が1名と決まっているわけではなくて、チェンバロを中心に、チェロ、コントラバス、ファゴット、ガンバ、テオルボなどから1つまたは2つ以上が参加する。旋律楽器は、おおむねヴァイオリン、オーボエ、フルート、リコーダーの中から適宜だ。起用楽器は演奏者の判断である。

それでもまあ、オーボエ奏者ハインツ・ホリガー版のCDがスタンダードな位置にあった。

このほどうれしい発見があった。チェコの団体「プロアルテアンティクアプラハ」の演奏だ。先般の記事「Pro arte antiqua praha」で、彼らの演奏するパッヘルベルの室内楽の素晴らしさに言及したがゼレンカもまた魅力的だ。パッヘルベルで聴かせてくれた水もしたたるばかりのヴァイオリンの音色が、また再現される。こりゃあまぐれではない。特筆すべきは彼らが採用する編成だ。ヴァイオリン2本と、チェロとチェンバロだ。

旋律楽器2本にヴァイオリン2本をあてがうとは。ホリガー版に慣れた耳にはとても新鮮だ。でも本当にヴァイオリンが美しいから、ほどなくオーボエのことなんか忘れてしまう。

2020年10月12日 (月)

ヴァイオリンとギターのためのソナタ

パガニーニの作品。全12曲なのだがビオンディが抜粋してCDを出している。パガニーニは超絶技巧のヴァイオリニスト兼作曲家だと思っていたらギターも弾けたらしい。ビオンディの演奏はいつも通り楽しい。超絶技巧を存分に楽しむのに持ってこいだ。

昨日のリストにははいりきれないので載っていない。これだけ別に持ち歩いている。

 

 

2020年10月10日 (土)

異例のソナタ

断りなくヴァイオリンソナタと言えば、主役はヴァイオリンでピアノは伴奏と目される。バッハの時代にはピアノではなくチェンバロになるけれども、ヴァイオリン主役に変わりはない。

バッハのヴィオリンソナタト長調BWV1019は、異例である。第三楽章は主役のヴァイオリンがまるまる休みになる。

20161127_210124_2
写真はヴァイオリンのパート譜。その中、赤く囲んだのが話題の第三楽章。すぐ上の16というのは第二楽章の16小節目であり、直下のAdagioはもう第4楽章の冒頭だ。アレグロの第三楽章はヴァイオリンが「tacet」されている。

交響曲など大規模管弦楽曲で、その中間楽章において打楽器や金管楽器がまるまる休みということは、ブラームスでも珍しくないが、二重奏の7つの室内楽で片方がまるごと休みという楽章は存在しない。

しかもだ。しかも主役抜きで奏でられるその第三楽章は美しいのだ。コンサートで取り上げられた際、ヴァイオリニストはこの間どうしていたらいいのだろう。

 

 

 

 

2020年10月 9日 (金)

パーチェ

1976年生まれのイタリアのピアニスト。

フランツペーターツィメルマンと組んだ室内楽が評判になっている。バッハのヴァイオリンソナタ全曲録音のCDが手元にある。伴奏はチェンバロが好きなのだが、この人のピアノはグールドとともに例外を形成している。

お気に入りの演奏は昔のが多いのだが、この人の演奏には感心させられた。キレッキレなのに弾き散らかしていない。現時点で今世紀最高と思う。

2番の第二楽章は手持ちのCDでは最高のテンポ。でも細部まで考えられた音作り。

2020年10月 8日 (木)

10度のソナタ

旋律に10度の跳躍を含むことは珍しいと位置付けて、ブラームスのクラリネットソナタ第一番を特徴づけた。その考えは今も変わらぬが、バッハのヴァイオリンとチェンバロのソナタの中にその実例がある。

ハ短調BWV1017の第一楽章だ。

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上記がその場所。冒頭のいきなりの第一小節目。赤丸を付与した部分が10度の跳躍になっている。CからEsというハ短調の肝が10度に割られている。主音Cのオクターブ下降から行き着く暇なく第三音Esへのジャンプであり、非常に印象的。3度上にではなく10度上のEsであることがバッハの目的であることは明白だ。

ハ短調ソナタ全体に充満する緊張感の源泉とみている。

2020年10月 7日 (水)

人の望みの喜びか

もっとも名高いカンタータと問われたらいったい何人の人が「147番」と答えるのだろう。「主よ人の望みの喜びよ」と和訳される傑作。古来さまざまな編成に編曲されてきた4分の3拍子ト長調の流れるような8分音符の連続が、あふれ出る喜びの表現と解されている。主役のコラールをもかすませる8分音符の羅列は事実上8分の9拍子になっている。

ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ6曲中の一番お気に入りは第4番ハ短調。その第3楽章は、前後のバッハ独特の厳しさをたたえた楽章にはさまれてさながらオアシスのよう。Adagio4分の3拍子なのだが、チェンバロの右手だけはカッコ書きで「8分の9拍子」と併記される。
ヴァイオリンがG線開放弦すぐ上の「B音」から深々と立ち上がり、60小節間芳醇な癒しを供給し続ける裏で、チェンバロの右手を聴くがいい。これを聞くための目的ならチェンバロに代えてピアノでも悪くない。
どうだろう。私にはこれが「主よ人の望みの喜びよ」と重なって聞こえる。ヴァイオリンはオブリガートとさえ感じる。

 

2020年10月 6日 (火)

ドンドン

ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタハ短調BWV1017の第4楽章に私が付けた愛称。

 

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命名の由来は上記の赤丸で囲んだ部分。同楽章で最初にヴァイオリンが現れてすぐのところ。周囲より明らかに低いところで「ドンドン」と打ち鳴らされる大太鼓のよう。

直後には、このソナタを象徴する10度跳躍があるので一層際立つ。

この部分の弾き方には、演奏者の個性が宿っていることが多い。ラレードやツィメルマンなどテンポの速い系の人たちは、大太鼓とまでは言えぬが、グリミョーやシェリング、あるいはスークなどじっくり系の人は「ドンドン」よりも「ズンズン」という感じがする。

 

 

2020年10月 5日 (月)

グルーピングの妙技

大好きなバッハのヴァイオリンソナタ第4番ハ短調の第四楽章の話をする。

4分の2拍子アレグロ。軽快というよりは厳粛。5小節目チェンバロに現れる16音符のグルーピングが特徴的だ。連続する4個の16分音符の後ろ3つがスラーによって束ねられることで、「1+3」のフレーズを構成する。これ以降チェンバロにもヴァイオリンにも頻繁に現れて同楽章の性格を規定することになる。
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やがて2番カッコを抜けてリピート記号の直後のヴァイオリンに「1+3」が現れ、念押しして後半が始まる。55小節目のことだ。その念押しをさっそく逆手にとる。わずか4小節目の59小節目になると16分音符が3個一組のグルーピングに変わる。2小節間4拍分の16分音符16個のうち最初の1個を除く15個が、3つずつに束ねなおされる。
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チェンバロのパートとの間で拍節の軽い衝突がおき、2小節間リズム感が曖昧になることで直後の61小節目のシンコペーションが殊更強調されることになる。同じことが85、104の両小節でも起きる。従来通りの「1+3」もめまぐるしく混在することで効果が増強される感じがする。写真は104小節目。
音符の束ね方1つでリズム感を自在にコントロールするのはブラームスの得意技だ。バッハで見かけると感慨深いものがある。

2020年10月 4日 (日)

ハ短調ソナタ

ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタは、バッハの真作とされいるのは以下の6曲だ。

  1. 1番ロ短調BWV1014
  2. 2番イ長調BWV1015
  3. 3番ホ長調BWV1016
  4. 4番ハ短調BWV1017
  5. 5番ヘ短調BWV1018
  6. 6番ト長調BWV1019

この中で私のお気に入りは4番ハ短調だ。断然。

第一楽章 G音からEsにいきなりの6度跳躍で始まる。なんだか禁断の果実っぽい。ロマン的な感じがする。無理やり理屈をこねればシチリアーノなのだとは思うが、舞曲由来という説明に安住させない凄みがある。短調のソナタを、バッハ自身の家族の死と結びつける解釈があるけれど、感心しない。「死の悲しみ=短調」という連想はいかにも底が浅い。

第二楽章 特徴ある10度の跳躍が印象的。家族の死と対峙する悲しみという切り口では収まりきれぬ厳しさを感じる。

第三楽章 平行長調に転じる緩徐楽章。家族の死の悲しみの痕跡を認めるとするならこの楽章かとも思うが、チェンバロの右手に絶え間なく現れる8分音符の連続は、むしろカンタータ147番「主よ、人の望みの喜びよ」を思わせる。

第四楽章 前楽章が疑問形で終わってのフィナーレ。何と言うことか。2小節目の後半に第二楽章と同じ「C→Es」という10度の跳躍が現れる。さらに付け加えるなら、10度ジャンプの直前がオクターブ下降になっていることまで、第二楽章そっくりだ。やはりこの10度跳躍はバッハの意図と思わずにはいられない。

 

 

 

 

2020年10月 1日 (木)

むしろこちら

CDショップ店頭で、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の売り場はたいそうにぎわっている。とりわけパルティータ2番BWV1004は、その終曲に名高い「シャコンヌ」を据えていることもあって、数十種類のCDが花盛りである。ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタは、日蔭とも感じるのだが、むしろ室内楽の喜びに満ちた佳品ばかりと感じる。

長さも手頃、表情もさまざま、シャコンヌのような近寄り難さは影を潜めている。我が家には以下の通りのCDがある。

  1. 1951 Yehudi Menuhin/Louis Kentner(pf)
  2. 1960 Reinhold Barchet/Robert Veyron-Lacroiz(C)
  3. 1963 Josef Suk/Zuzana Ruzickova(C)
  4. 1964 Artur Grumiaux/Giovani Sartori(C)
  5. 1964 Wolfgang Schneiderhan/Karl Richter(C)
  6. 1966 David Oistrakh/Hans Pischner(C)
  7. 1972 Leonid Kogan/Karl Richter(C)
  8. 1973 Sigiswald Kuijken/Gustav Leonhardt(C)
  9. 1975 Jaime Laredo/Glenn Gould(pf)
  10. 1975 Henryk Sceryng/Helmut Walcha(C)
  11. 1976 Henryk Sceryng/Muchael Isador(pf)
  12. 1978 Artur Grumiaux/Christiane Jaccottet(C)
  13. 1986 Josef Suk/Zuzana Ruzickova(C)
  14. 2000 Rachel Podger/Trevor Pinock(C)
  15. 2006 FranzPeter Zimmermann/Enrico Pace(pf)
  16. 2007 Viktoria Mullova/Ottavio Dantone(C)
  17. 2013 Michelle Makarski/Kieth Jaretto(C)

いやいやこれがなかなか退屈しない。グリミョーとスークが2種類。シェリングは東京ライブがあって2種類だが、ライブは全曲録音ではない。

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