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2026年1月22日 (木)

ドッペル

「Doppel」と綴られるドイツ語。「2倍の」という意味だなどと申し上げるよりは、英語のダブル「Doble」に相当すると言ってしまうほうが早くて確実だ。

弦楽器の重音奏法は「Doppelstopf」つまり「ダブルストップ」だし、二重協奏曲は「doppel Konzert」だ。JSバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」ニ短調がとりわけ名高い

さてさてブラームスにも「Doppel Konzert」があるとお思いの向きも多い。作品102を背負ったブラームス最後の管弦楽曲のことだ。CDや書物にしばしば「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」と記載されている。不思議なことにマッコークルの作品目録では「Konzert fur violine und violloncell mit Orchestra」と記載されている。「ヴァイオリンとチェロのためのオーケストラ付きの協奏曲」といった内容だ。「doppel」という単語が見当たらないのだ。問題の「Doppel Konzert」という単語自体をブラームスが本当に使ったかどうか怪しいという点、留意しておきたい。

幸いなことに作品の素晴らしさには全く影響がない。

 

 

2026年1月10日 (土)

お抱えピアニスト

スコットランド生まれのピアニスト、オイゲン・ダルベール(1864-1932)をブラームスは「お抱えピアニスト」といってかわいがっていた。リストの弟子だ。

1896年1月10日。今から130年前の今日、ベルリンで素晴らしい演奏会が開かれた。オイゲン・ダルベールがブラームスのピアノ協奏曲を一晩で2曲演奏したのだ。オケはベルリンフィル、指揮はブラームス本人だ。これがブラームス生前最後の指揮となった。このときブラームス62歳、ダルベール31歳だ。

何と言う組み合わせたろう。チケットはいくらだったのか心配になる。

2025年11月 1日 (土)

新たなニーズ

ああ。新車購入と同時に、CDが聴けないという事態が、私以外の人にも問題があるとわかった。

お気に入りをUSBに取り込んで欲しいと依頼があった。その依頼は「ブラームス」だ。管弦楽と室内楽とピアノ作品のうち、ドライブ中に聴きたくなる曲を選ぶ。声楽は抜きだが、ドイツレクイエムだけは例外。聞き比べは不要なので1曲1演奏としたいと。

いろいろ困っているのだろう。ブラームスという依頼が素晴らしくてお受けした。何より各曲1というのが選ぶ楽しみになる。

 

2025年7月20日 (日)

ちょっとしたこと

ブラームスは協奏曲を交響曲に近付けたいと念じていた形跡があると言われている。最初の協奏曲であるピアノ協奏曲第1番が「ピアノのオブリガード付きの交響曲」と呼ばれていたり、最後の協奏曲、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲は、第五交響曲との関係まで詮索されている。至宝ヴァイオリン協奏曲は、当初四楽章制を目論んでいた。

ピアノ協奏曲第2番では、とうとう現実に四楽章制となった。解説書ではしばしばそれに言及される。「協奏曲と交響曲の融合である」云々だ。この主張の根拠は概ね以下のように集約できると思う。

  1. 4つの楽章を持つこと
  2. その4つのうちソナタ形式の楽章が2つあること
  3. 独奏楽器の名人芸の披露が主目的ではないこと

特に上記の2番目は重要だ。ピアノ協奏曲第2番の終楽章がロンド形式でなくてソナタ形式になっている点、強固な意志の存在を感じる。

しかししかし天邪鬼な私は、安易にうなずいたりしない。しからば問う。ピアノ協奏曲第2番の特徴のうち以下に掲げる諸点をどう説明するのだろう。

  1. 緩徐楽章が第3楽章に位置している。ブラームスの4つの交響曲では緩徐楽章はすべて2楽章だからだ。
  2. 事実上スケルツォを配置している。ブラームスの交響曲の第3楽章にはスケルツォが置かれていない。
  3. フィナーレが「allegretto」だ。交響曲のフィナーレを「allegretto」にした例はない。

とりわけ3番目に注目願いたい。フィナーレがロンドでなくソナタになっているのは、交響曲側の慣習に沿っているが、その楽章が「allegretto」なのは異例だ。ソナタ形式の楽章が「Allegretto」を採用する唯一の例である。この場合縮小語尾の目指すターゲットはテンポではなくて規模である可能性がある。いわば「小ソナタ」のノリだ。

ピアノ協奏曲第2番を「協奏曲と交響曲の融合」とする文章が、上記の事実に言及するのを見たことがない。

ブラームスは、本当に「協奏曲と交響曲」の融合を目指したのだろうか。4楽章制を指向したことは事実だと思うが、それをただちに交響曲に結び付けてよいのだろうか。未解決の疑問が残っていると感じている。

 

 

 

 

2025年7月19日 (土)

協奏曲のフィナーレ

ブラームスの4つの協奏曲を聴いていていつも思っていることがある。まず以下のリストをご覧願いたい。

  • ピアノ協奏曲第1番op15第3楽章Allegretto non troppo
  • ヴァイオリン協奏曲op77第3楽章Allegro giocoso,ma non troppo vivace
  • ピアノ協奏曲第2番op83第4楽章Allegreto grazioso
  • ヴァイオリンとチェロのための協奏曲op102第3楽章Vivace non troppo

ピアノ協奏曲第2番だけが第4楽章になっているが、協奏曲のフィナーレを作品番号順に列挙したものだ。4つとも「アウフタクトを伴わない4分の2拍子」になっていることに加え、テンポも似たりよったりだ。

協奏曲というジャンルは本来独奏者の演奏テクニックの披露が大きな目的の一つとなっているから、第1楽章と緩徐楽章で作曲家の言いたいことはほぼ言い尽くしてしまって、フィナーレは独奏者に花を持たせるという作りになっていることが多い。複雑で華麗なパッセージを目にもとまらぬテンポで駆け抜けてこそのフィナーレだ。古今の名曲はほとんどそうなっている。ヴィヴァルディやバッハの時代はまれにメヌエットが置かれることもあったが「Allegro」または「Presto」と相場が決まっていた。古典派以降も序奏がある場合を除けば「Allegro」は最低ラインである。独奏楽器が何であれ、その点が揺らぐことはない。

ところがところが、見ての通りブラームスの4曲はスカーッとした快速な音楽にはなっていない。「Allegro」や「Vivace」が「non troppo」によって抑制されてもいる。ピアノ協奏曲第2番に至っては「Allegro」から「Allegretto」に陥落している。

言いたいことは緩徐楽章までに盛り込み終えて、フィナーレは「演奏者の花道」というような構造になっていないと断言したいくらいなのだ。フィナーレに至ってもなお言いたいことが山ほどありそうな感じである。あるいは華麗なパッセージを目にも止まらぬ速さで弾けることより大切なことがありますとでも言いたげである。「そういうコンチェルトをお望みなら他を当たってくれ」というメッセージかもしれない。盛り込もうとした音楽が濃いから、テンポが速過ぎると伝わらないことを危惧した結果のようでもある。

これらの協奏曲は楽譜の通りに弾くこと自体が超高難度であることは周知の通りだが、ただ間違えずに弾ければいいというものでもない度合いも半端でなく高い。そういうところが何だかブラームスっぽい。

昨日梅雨が明けた。

2023年10月22日 (日)

Quasi Fantasia

ピアノ協奏曲第1番の第3楽章376小節目に唯一存在する。事実上カデンツァの弾き方を規定する意図があることは明白だ。「Fantasia」は幻想曲という意味だから、「quasi 意訳委員会」の裁定に従えば「幻想曲っぽく」という意味となる。

「Quasi~」という言い回しをする以上「~」に相当する単語について、自分自身の中に確固たるイメージが確立していることが大前提だ。さらにはそのイメージが世間一般の認識と大きくかけ離れていない方が望ましい。

しかししかし、これは意外と厄介だ。

ブラームス自身は「Fantasia」つまり「幻想曲」というタイトルの作品を残していない。晩年のピアノ小品の中、op116が「7つの幻想曲」と題されているに過ぎない。4つのインテルメッツォと3つのカプリチオの集合体に「幻想曲」とタイトリングしているが、単独曲が幻想曲とされている例がない。

ピアノ協奏曲の作曲段階で晩年のピアノ小品のことが念頭にあったハズがないから、解釈の参考にはならない。ピアノ協奏曲第1番作曲時点での「Fantasia」のイメージが反映しているに違いないのだが、簡単に尻尾をつかめない。それがまた幻想的なのだと思う。

2023年9月21日 (木)

お騒がせベルリオーズ

「基本はバッハ」という本の18ページに悩ましい記述がある。バッハの3台のチェンバロのための協奏曲」を聴いたベルリオーズの感想が載っている。原文のまま引用する。

「この滑稽で愚にもつかない讃美歌を再生するために、情熱に燃え、若さにみちあふれる3人の賞賛すべき才人が結束する姿をみるのは、まさに胸痛む思いだった」

まずは若干の補足をする。「この滑稽で愚にもつかない讃美歌」とは「3台のチェンバロのための協奏曲」を指しているとみて間違いあるまい。ベルリオーズは明らかにこの作品を評価していない。「大した曲じゃないのに、このメンバーに苦労させるのはもったいない」というスタンスと見受ける。ベルリオーズの感想を深読みすると、「3人の結束」そのものは褒めていると感じる。何が悩ましいかを以下に列挙する。

  1. 3台のチェンバロのための協奏曲はニ短調とハ長調の2曲あるが、そのどちらなのかわからない。
  2. いつの演奏なのか不明。
  3. どこで演奏されたのかも不明。
  4. 指揮者もいたのかいないのかも不明。

素晴らしいこともひとつある。「才人」と言われた3名がわかっている。なんとなんとショパン、リスト、ヒラーという3名だ。あのショパンとあのリストだ。すごいメンツである。あろうことか指揮がメンデルスゾーンだった可能性も排除しきれない。ヒラーの代わりにクララシューマンだったらと妄想が膨らむが、聴衆の側にシューマン夫妻がいたかもしれないと考える。書かれていないがチェンバロではなくピアノで演奏されたことは確実である。

独奏チェンバロが何台なのかは別として、楽器が別の独奏楽器による協奏曲をチェンバロ用に編曲したということは明確で、研究者の手によってほぼ元の独奏楽器が特定されていることが多いのだが、この3台のチェンバロのための協奏曲だけは定説がない。とくにニ短調の方が難解で、演奏するさいのバランスが難しいという。ベルリオーズのダメ出しからニ短調の方でなかったかと想像する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年7月26日 (水)

思案のしどころ

ハイドンの音源確保の話。ピアノソナタはワルター・オルベルツ、ピアノ三重奏はボサールトリオで落ち着いたが、弦楽四重奏はまだ決めきれない。大好きなアルバンベルク四重奏団が全集を入れていない。アマデウス四重奏団にも全集が見当たらない。どうしよう。

「皇帝」以外では「五度」「騎士」あたりの表題付きから恐る恐る分け入っている。

2023年5月29日 (月)

首席ヴァイオリン協奏曲

中学生でクラシック音楽に目覚めた。作曲家をキーに申せばさっそくはまり込んだのがベートーヴェンだ。ジャンル切り口というとベートーヴェンの主戦場である、交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノソナタは自然だが、実はヴァイオリン協奏曲にも興味を持った。バッハやヴィヴァルディあたりの協奏曲までも余裕で視界に入ったものだ。当時は第一楽章にリトルネロが来るバロック協奏曲と古典派以降の協奏曲の違いなんぞ意識していなかった。

ベートーヴェンにはたった1曲しかないので、他の作曲家に範囲を広げてはみたものの、やはり脳内ヴァイオリン協奏曲ランキングの首位は長くベートーヴェンだった。大学オケ同期が下宿コミュニケーションの中でしきりにブラームスを薦めてくれたが、当初聞く耳をもたなかった。

大学2年の春にブラームスへの宗旨替えが起きて初めて、ブラームスのヴァイオリン協奏曲に入れ替わった。あれから44年経過した今も、ブラームスが首位の座に君臨している。

 

2023年3月12日 (日)

クララのレパートリー

クララ・シューマンはブラームスの伝記上では、本人ブラームスに次ぐ重要人物だ。ロベルト・シューマンの妻にして当代最高のピアニスト。クララがレパートリーにしていたピアノ協奏曲を調べてみた。

  1. ベートーヴェン 3番ハ短調
  2. ベートーヴェン 4番ト長調
  3. ベートーヴェン 5番変ホ長調
  4. ブラームス 1番ニ短調
  5. ショパン 2番ヘ短調
  6. メンデルスゾーン 1番 ト短調
  7. メンデルスゾーン 2番 ニ短調
  8. モーツアルト 20番 ニ短調
  9. モーツアルト 24番 ハ短調
  10. シューマン イ短調

おお。ベートーヴェンは3曲入っている。短調が優勢なのは偶然かなどと脱線したくなる。香しいレパートリーでほれぼれする。カデンツァは自作だろうか気になるところである。

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