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2020年11月18日 (水)

イ短調オーボエ協奏曲

中古CDショップのバッハコーナーは何かと退屈しない。本日も発掘系の話題だ。一連のチェンバロ協奏曲、BWVでいうなら1052以降の作品群は、オリジナルの独奏楽器をさまざまに想定されれているが、イ短調とホ長調のコンチェルトだけは独奏楽器がヴァイオリンであることが確実視されているために、他の楽器でのトライという意味ではCDの層が薄い。

イ短調ヴァイオリン協奏曲BWV1041をオーボエ独奏に切り替えたCDを発見した。いやはや素晴らしい。辛抱たまらんという感じ。8分の9拍子のフィナーレは切ない。

2020年11月17日 (火)

第三のドッペル

長くブラームスを愛好する私にとって「ドッペル」と言えば「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調op102」のことだ。正式な名称の中に「ドッペル」(二重)の文言は現れないにもかかわらず、そうした刷り込みになっている。愛好家一般の平均値からははずれているとの自覚ももっている。

一般愛好家の平均値という切り口ならばバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043」だろう。私とて大好きだ。娘がヴァイオリンのレッスンを受けている頃、いつの日か二人で弾きたいと慣れないヴァイオリンに持ち替えて第一楽章を必死で練習したものだ。

このほど第三の「ドッペル」に出会った。某ショップをうろついていて、マンツェとポッジャーというバロックヴァイオリン界のスター2名の演奏を収めたCDを入手した。もちろんドッペル狙いだ。ところが収録曲の中に「BWV1060」の記載を見つけて軽い衝撃を受けた。

「BWV1060」とは、チェンバロ協奏曲として伝わっているものの、現在では「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」として名高い。大好きな曲だ。何らかの独奏楽器のための協奏曲からバッハ本人がチェンバロ協奏曲に編曲したというものだ。古来もとの独奏楽器の復元が試みられてきたが、「ヴァイオリンとオーボエ」という組み合わせはほぼ定説と化している。

先に掘り出したCDの演奏者にはオーボエ奏者の名前がない。つまり独奏オーボエのパートをヴァイオリンで弾いているということだ。

BWV1043のドッペルと違い独奏両パートの扱いが均質でないことから、片側をオーボエとする復元が説得力を獲得しているのだが、弾かれてみるとはまる。もともと大好きだからか。

 

 

2020年11月15日 (日)

チェンバロ側の事情

バッハの「チェンバロのための協奏曲」、独奏するチェンバロの台数は1から4までとさまざまながら、何らかの独奏楽器のための協奏曲をバッハ自身がチェンバロ独奏に編曲したものだ。それらをBWV番号、調性、オリジナルの調性、オリジナルの楽器の順に以下に列挙する。

  1. BWV1052 Dmoll←Dmoll ヴァイオリン
  2. BWV1053 Edur←Fdur ヴァイオリンorオーボエ
  3. BWV1054 Ddur←Edur ヴァイオリン
  4. BWV1055 Adur←Adur オーボエダモーレ
  5. BWV1056 Fmoll←Gmoll ヴァイオリン
  6. BWV1057 Fdur←Gdur チェンバロと2つのリコーダー
  7. BWV1058 Gmoll←Amoll ヴァイオリン
  8. BWV1059 Dmoll 断片 オーボエ
  9. BWV1060 Cmoll←Cmoll ヴァイオリンとオーボエ
  10. BWV1061 Cdur オリジナルなので原曲なし
  11. BWV1062 Cmoll←Dmoll 2つのヴァイオリン
  12. BWV1063 Dmoll←? オーボエ/ヴァイオリン/フルート
  13. BWV1064 Cdur←Ddur 3つのヴァイオリン
  14. BWV1065 Amoll←Hmoll 4つのヴァイオリン

不思議なことがある。上記赤文字で記した部分は、編曲にあたって2度下の調に移調されている。オリジナルと断片をのぞく12曲のうち7曲が2度下への移調ということだ。9番の「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」も原曲の調性については論争があり、「ニ短調」がオリジナルであったとする学者もいる。

元の独奏楽器はさまざまなのに、「2度下への移調」ばかりになっているのだから、これらはチェンバロ側の事情カモと推測する。

 

 

 

 

 

 

2020年8月31日 (月)

オーボエもあり

バッハのチェンバロ協奏曲は、何らかの独奏楽器のための協奏曲を元にバッハ自身が独奏楽器をチェンバロとして編曲したもの。編曲元のコンチェルトにおいて、何が独奏楽器だったかは議論の対象になってきた。

チェンバロ協奏曲ヘ短調BWV1056は、チェンバロのほかピアノ、ヴァイオリンを独奏楽器とするCDを持っていたが、このほどオーボエ盤にありついた。

いやはやこれがあたりだった。特に恋するガリアで名高い第2楽章はオーボエで演奏されてみると絶品である。

 

 

 

 

2020年8月30日 (日)

恋するガリア

1966年のフランス映画のタイトル。作中バッハのチェンバロ協奏曲第5番ヘ短調BWV1056の第2楽章が用いられる。映画音楽に凝っていた父のレコードで聴いたのが中学生のころだった。今、しみじみと思い返すと生まれて最初のバッハ体験なのだと思う。えらい曲から入ったものだ。

つくづくロマン的だと思う。忘れられていたバッハの復興そのものがロマン派真っただ中の19世紀後半だから、ロマン的解釈のバッハなど珍しくもなく、ましてや当時まだ古楽ブームの到来前だから、そう感じるのも無理からぬ話ではある。

今でも複数のCDが手元にある。演奏年、ソリスト、独奏楽器の順に列挙する。

  1. 1958年 グレン・グールド/pf
  2. 1985年 サルヴァトーレ・アッカルド/Vn
  3. 1989年 アンドラーシュ・シフ/pf
  4. 1995年 ヴィクトリア・ムローヴァ/Vn
  5. 1999年 ファビオ・ビオンディ/Vn
  6. 2002年 シュテファニー・ヘーゲレ/Ob
  7. 2010年 ラモン・オルテガ・クエーロ/Ob
  8. 2013年 アンドリウス・プスクニギス/Ob
  9. 2013年 ジュリアーノ・カルミニョーラ/Vn
  10. 2016年 ジャン・ロンドー/Cem

BWV1056は、バッハ本人による何らかの楽器のための協奏曲を、自分でチェンバロ独奏のコンチェルトに編曲した作品だ。オリジナルはヴァイオリン協奏曲だったとする説が有力だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年8月29日 (土)

奇跡のラルゴ

グールド御免の記事連発。今度は協奏曲第5番ヘ短調の話題。例によってまたまた緩徐楽章。

バッハのピアノ協奏曲は元々あった何等かの楽器による協奏曲の焼き直しだということは何度も申し上げてきた。この5番もそうだ。ところが5番は嬉しい例外だ。原曲ト短調ヴァイオリン協奏曲をチェンバロ協奏曲に転写するにあたり、第二楽章だけはオリジナルが破棄され、差し替えられたといわれている。唯一のチェンバロ独奏オリジナルだ。
変イ長調ラルゴが新たに添えられた。ごくごく最後以外、伴奏に回る弦楽器たちはピチカートで控えめに刻む中、あり得ぬほど繊細な旋律が流される。グールド最高という瞬間が連続する。わずか21小節の至福のときだ。この楽章にハミングを入れないのもまた1つの見識だろう。

2020年8月28日 (金)

ハミング最高峰

またまたグールド。

バッハのピアノ協奏曲第4番イ長調の第二楽章のことだ。嬰へ短調8分の12拍子の緩徐楽章なのだが、グールド名物のハミングが貴重だ。彼のハミングの中では、タイミング、節回し、必然性が高い次元で揃っている。グールドの中でハミングするしないの脳内基準があったはずだが、おそらく無意識なのだろう。

2020年8月27日 (木)

チェンバロあらためピアノ

時折「バッハがピアノのために作った作品はない」などという指摘が見られる。今普通に接しているピアノが出現するのは19世紀だから、バッハはすでにこの世にいなかったからだ。バッハの時代の鍵盤楽器はチェンバロだ。クラヴィコードもあった。でも断じてピアノはない。

だからというわけではないが、我が家のCDコレクションはチェンバロが多い。特にブランデンブルク協奏曲の5番などはピアノで弾かれたら感じが出ないと思っていた。そうした認識の例外がグールドだ。
何故かグールドだけはすっと入ってきた。独奏曲はもちろんヴァイオリンやガンバとのアンサンブルだってなんだかなじめた。
とりわけピアノ協奏曲だ。原曲は何らかの独奏楽器による協奏曲をチェンバロ用に編曲したものだ。ヴァイオリン協奏曲ホ長調からの転写3番ニ長調、同イ短調からの7番ト短調は、ヴァイオリン協奏曲の形で何度も聴いているから、ピアノ独奏への転写っぷりが楽しみの一つになっている。ヴァイオリン1本の独奏では聞こえてこなかったオブリガートが鮮明に浮きあがることが珍しくない。

 

2020年8月17日 (月)

三大Bそろい踏み

「BACH」のスペリングを音名に見立てて、これをモチーフとして扱うのは、バッハが復興したロマン派以降、バッハへの敬意を示す方法として広まった。両手の指に余る数の実例がある。

ブラームスにも渋い実例を発見した。

ブラームスは自らが先輩作曲家のピアノ協奏曲を演奏する際にカデンツァを書いた。このうちベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番第一楽章のカデンツァの中25小節目に「BACH」のモチーフが現れる。ベートーヴェンのコンチェルトのカデンツァに、ブラームスが「BACH」のモチーフを埋め込んだということだ。

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見ての通りソプラノの声部にキッチリだ。和音進行をコードネームで言うなら、「C7→F→Dm7→G7」とでも解せよう。楽譜にこのように音名が印刷されているということは、オリジナルに書かれていたのだと思う。幸いナクソスからCDが出ている。

2020年8月15日 (土)

チェンバロ協奏曲ニ短調

BWV1052を背負うチェンバロ協奏曲だ。元々ヴァイオリンを独奏楽器とする協奏曲だったのを、バッハが1台のチェンバロ用に編曲した。編曲したのはバッハ本人で間違いがないのだが、原曲のヴァイオリン協奏曲自体もバッハ本人の作かどうかには議論の余地があるという。

このコンチェルトをブラームス本人が演奏したことは確実だ。なぜならブラームスは同コンチェルトの第3楽章のカデンツァを作曲しているからだ。

当初、ピアノ演奏家として台頭したという経歴だから、演奏会でコンチェルトを弾くのは珍しくない。その際、カデンツァを自作したのも自然だ。

 

 

 

 

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