Quasi Fantasia
ピアノ協奏曲第1番の第3楽章376小節目に唯一存在する。事実上カデンツァの弾き方を規定する意図があることは明白だ。「Fantasia」は幻想曲という意味だから、「quasi 意訳委員会」の裁定に従えば「幻想曲っぽく」という意味となる。
「Quasi~」という言い回しをする以上「~」に相当する単語について、自分自身の中に確固たるイメージが確立していることが大前提だ。さらにはそのイメージが世間一般の認識と大きくかけ離れていない方が望ましい。
しかししかし、これは意外と厄介だ。
ブラームス自身は「Fantasia」つまり「幻想曲」というタイトルの作品を残していない。晩年のピアノ小品の中、op116が「7つの幻想曲」と題されているに過ぎない。4つのインテルメッツォと3つのカプリチオの集合体に「幻想曲」とタイトリングしているが、単独曲が幻想曲とされている例がない。
ピアノ協奏曲の作曲段階で晩年のピアノ小品のことが念頭にあったハズがないから、解釈の参考にはならない。ピアノ協奏曲第1番作曲時点での「Fantasia」のイメージが反映しているに違いないのだが、簡単に尻尾をつかめない。それがまた幻想的なのだと思う。
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