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2016年11月 8日 (火)

Letztes Gluck

アルバム「SOS」でポップなドイツ民謡を聞かせてくれたヴォーカルアンサンブルSinger Purにはまっている。本日のお題「Letztes Gluck」は、彼らのアルバムのタイトルだ。このCDはなかなか意地悪で、ジャケットに収録曲が書いていない。購入しないと曲がわからぬ仕組みだ。ドイツロマン派の歌という副題と、ブラームス、シューマン、シューベルト、メンデルスゾーン、レーガー、Rシュトラウスという作曲家名の表示にとどまっている。しかしこのタイトルはブラームスの合唱曲op104-3に一致する。先般のアルバム「SOS」の出来映えがあまりに鮮烈だったこともあって思い切って購入した。

帰宅してブックレットをめくる。案の定ブラームスのop104-3が収録されていた。マックス・カルベックのテキストによる合唱曲だ。Singer Purというグループは、男声5名にソプラノ1名の総勢6人のアンサンブルだから、オリジナル合唱曲を重唱として聞かせてくれるということだ。

聴いてみる。これまた大当たりだった。

全22曲のうちブラームスが6曲収められている。これはメンデルスゾーンの8曲に次ぐ数だ。おまけに先般紹介したシューマンの「野ばら」も聞かせてもらえる。野ばら観が変わる位の衝撃だ。それからロマン派の御大たちに混ざってジルヒャーも「ローレライ」を含む3曲が採用されている。

このあたりのロマン派のアカペラ重唱はただただ美しい。

2016年11月 6日 (日)

庭師

記事「フィンガルの洞窟」の中で作品17に属する4曲の合唱曲について、その珍しい編成について述べた。

その周辺を調べていてお宝情報を発見した。先日言及した「フィンガルの洞窟」op17-4のひとつ前に「庭師」という作品がある。アイヒェンドルフによるこの作品のテキストはメンデルスゾーンの女声合唱曲と同じものだ。

作品17は女声合唱の伴奏をハープと2本のホルンにさせていることが特色だが、メンデルスゾーンとの関連を疑わせる作品が2つも混入していた。

2016年10月30日 (日)

フィンガルの洞窟

スコットランドに実在する洞窟。18世紀に発見されて以来の名所である。

1830年20歳のメンデルスゾーンは、この地を訪れた感銘を元に作曲したのが序曲「フィンガルの洞窟」だ。以来オーケストラの定番レパートリーになっている。あのワーグナーまでもこの描写力を称賛しているという。

実はブラームスにも「フィンガルの洞窟」がある。作品17-4を背負う女声合唱だ。作品17の4曲は何と言ってもその編成が粋である。ソプラノ2部、アルト1部を伴奏するのがハープと2本のホルンという代物だ。

スコットランドの詩人マクファーソンの叙事詩がフィンガルの洞窟の名声獲得に一役買った。それをヘルダーが独訳したものをブラームスがテキストに採用したのだ。ハ短調4分の2拍子アンダンテの粛々とした歩みが印象的だ。

ブラームス自身は英国に渡ったことがないから現地を訪れていないが、マクファーソンの叙事詩の他、メンデルスゾーンの序曲も知っていたと思われる。

2016年10月26日 (水)

本当の狙い

ジョン・エリオット・ガーディナーという指揮者がいる。合唱の業界では名前の知られた人物だ。彼の率いるモンテヴェルディ合唱団は高く評価されている。我が家にもブラームスの合唱曲のCDがいくつかある。その彼がブラームスの第一交響曲を録音したCDが出ている。発売の時には話題になったからご存知の方は多いと思う。

「Bramhs Symphony 1」

「Gardiner」

とだけ書かれている。だからこのCDの目的は第一交響曲を聴かせることなのだと思う。お店で見かけて何気なく手にとって裏を見た。「ありゃ」ってなモンだ。

ブラームスの第一交響曲の前に3曲が収められている。

  1. ブラームス:埋葬歌op13
  2. メンデルスゾーン:「我ら人生の半ばにありて」
  3. ブラームス:運命の歌op54

ブラームスの合唱作品にメンデルスゾーンのアカペラの合唱曲を挟んでいる。この曲、記事「我ら人生の半ばにありて」で言及した通り、ウィーンジンクアカデミーの演奏会でブラームス自ら取り上げている。いわばブラームスゆかりの合唱作品だ。第一交響曲の前座としてやり過ごすには、あまりに意味深だ。一連の経緯を知らずして、この選曲に到達するはずがない。

CDを聴いてみたら、本当の狙いはメンデルスゾーンのアカペラ合唱曲なのではないかと思えてきた。

2016年10月25日 (火)

我ら人生の半ばにありて

1864年1月6日、ブラームスはウィーンジンクアカデミーの演奏会でメンデルスゾーンの無伴奏合唱曲「我ら人生の半ばにありて」op23-3を演奏した。

意外にもメンデルスゾーンはドイツバロックの香りを放つ秀逸な合唱曲を数多く残した。ブラームスもそう感じていたのだと思う。その証拠にバッハ、エッカルト、シュッツら古いドイツバロックの合唱作品にメンデルスゾーンを添えたのだ。意欲的なプログラミングだ。

しかしブラームスはこの年の春まで務めた後、ジンクアカデミーの芸術監督の座から退いている。超玄人好みの選曲に、周囲がついて行けていない空気を読んだものと思われる。

2016年10月19日 (水)

それは神の思し召しのままに

日本ブラームス協会編「ブラームスの実像」にブラームスの葬儀の様子が細かく記載されている。それはそれは盛大な葬儀だったことが解る。

カールスガッセの自宅を出た葬列は楽友協会を経由してドロテアガッセの教会に至る。そこで葬儀が営まれた。そのときに演奏されたのが本日のお題だ。メンデルスゾーンのアカペラの合唱曲だった。手許にメンデルスゾーンの作品一覧がないが、おそらくop47のことだと思う。

この選曲は一体誰の発案だろう。葬列が楽友協会に達した際にはブラームスの自作が演奏されたのに、肝心の葬儀で自作が選ばれずにメンデルスゾーンが選ばれた理由が気にかかる。

ブラームスはメンデルスゾーン大好きなことは確かだが、単にそれだけとも思えない。

2016年6月15日 (水)

フォイエルバッハ

アンゼルム・フォイエルバッハAnselm Feuerbach(1829-1880)のことだ。ブラームスが「美術好きの音楽家」であるのと反対の「音楽好きの画家」である。

もともと若い頃から音楽に親しんでいた。モーツアルト、ハイドン、メンデルスゾーンがお気に入りだったという。ブラームスにとってもストライクゾーンである。だからという訳でもなかろうが、彼はブラームスと直接親交があった。

継母ヘンリエッテと連れだってバーデン・バーデンへ保養に出かけた。そこでクララ・シューマンと知り合ったことがキッカケで、ブラームスとの交流が始まった。ブラームスはフォイエルバッハの作品を愛し、実力が正当に評価されていないと嘆いた。ブラームスの遺品からフォイエルバッハの油彩画が見つかった程だ。

1880年フォイエルバッハはベネチアで客死する。ベネチアで客死するのはかのワーグナーと一緒である。

ブラームスは悲報に接してインスピレーションを得た。「ネーニエ」op82である。残された継母ヘンリエッテに献呈された。シラーのテキストに管弦楽の伴奏を付与した合唱作品だ。出来映えは極上の肌触りと申し上げておく。

2016年6月10日 (金)

選曲のセンス

画家マックス・クリンガー(1857~1920)は、ブラームスの60歳の誕生祝いに版画集「ブラームス幻想」を贈った。ブラームス作品を自ら選び、それにふさわしい版画を楽譜とともに連ねたものだ。

  1. 古き恋 op72-1 ト短調
  2. あこがれ op14-8 ホ短調 
  3. 日曜日の朝 op49-1 ホ短調
  4. 野のさびしさ op86-2 ヘ長調
  5. 家もなく故郷もなく op94-5 ニ短調
  6. 運命の歌 op54 

選ばれたのは上記の通りだ。作品番番号の若い順でもないし、調性の選択にも規則性がない。この選曲はクリンガーのセンスそのものだ。尊敬するブラームスへの贈り物だ。行き当たりばったりの選曲であろうハズがない。6番目の「運命の歌」がメインになっているらしい。

贈られた側のブラームスは「これは目に見える音楽だ」と始まる長い礼状をしたため、改めてライプチヒにクリンガーを訪問した。

それでもブラームスはまだ足りぬとばかりに、クリンガーの父の死に際して、「4つの厳粛な歌」op121を献ずることになる。

2016年5月17日 (火)

パンツァーリート

映画には音楽が欠かせない。「映画音楽」というジャンルは無視しえぬ大きな領域になっている。作品の出来よりも音楽で記憶されている映画も少なくない。中学高校時代戦争映画大好きだった私は、その中の音楽にも興味があった。戦争映画のテーマ音楽は、なぜか行進曲が多いと思う。「史上最大の作戦」「大脱走」「戦場に架ける橋」などなどだ。

とりわけ「バルジ大作戦」が音楽の気に入り度という意味では最高だ。大戦末期のドイツ軍の反攻を主題にしていた。連合軍の視点から描かれる映画が多い中、ドイツ軍目線からのストーリーが際立っていた。決戦前夜「さあ行くぞ」とばかりに歌われる「パンツァーリート」がお気に入りだった。個人的には「魔弾の射手」の至宝「狩人の合唱」に匹敵するカッコよさだと思う。

これは映画のためのオリジナルではなく、元々ドイツ軍のオフィシャルな行進曲だったのだ。ドイツの軍隊行進曲の正当な系譜の上にある作品だ。道理でカッコいいわけだ。

2014年12月23日 (火)

コーヒーの音型

記事「コーヒーカンタータ」でバッハの「コーヒーカンタータ」の中の「CAFFEE」音型の所在を探索中であると書いた。

それを探していてワクワクするお宝情報に出会った。

ブラームスは14歳の時、不健康なアルバイトの気分転換に、父の知人宅に招かれたことがある。ハンブルク郊外のヴィンセンという街だ。同年代の娘にピアノを教える他、隣町の男声合唱団に作品を書いたという。この中に「コーヒーの音型(CAFFEE)によるファンタジー」という作品があったらしいのだ。マッコークル663ページの失われた作品No23がそれらしい。ピアノを教わった女の子リースヒェンが持っていたが後日返却を求められ、恐らくブラームス自身が破棄したものと思われる。

バッハのコーヒーカンタータの刊行は1881年の旧全集を待たねばならないから、この段階で14歳のブラームスは知る由も無い。

何よりも14歳のブラームスがコーヒーを知っていた証拠となる。

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