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カテゴリー「800 執筆の周辺」の42件の記事

2017年1月 8日 (日)

あとがき

漢字で「後書」あるいは「後書き」と標記する例をあまり見かけない。書物の末尾に置かれ、本文と別立ての文章のことだ。大抵は著者によって書かれる。本文中での書き残しの捕捉であったり、エッセイであったり内容は様々だ。出版にあたって関係者への謝辞が盛り込まれることも多い。

初めての自費出版本「ブラームスの辞書」にも「あとがき」がある。最後の項目に続いて2ページがあとがきに割かれている。「ブラームスの辞書」は何を隠そうこの「あとがき」が最も読まれているらしい。入手後真っ先に読まれるのもあとがきだ。

オタクな本を書いてしまった理由を知りたい向きや、著者の顔が見たい層は、きっとこのあとがきを見るのだと思われる。パラパラと本文を斜め読みして「だめだこりゃ」と感じた読者の多くは、あとがきだけを読んでお蔵入りさせているような気がする。

あとがきの役割は執筆中に痛感していた。オタクな本を書いてしまった言い訳に手際よく言及しなければならないと。そこには私の略歴に加えて、執筆の動機が書かれている。実は内心とてもよく書けたと思っているのだ。

ささやかな決意を一つ。ブログ「ブラームスの辞書」には「あとがき」があり得ないということだ。

2016年12月29日 (木)

楽曲解説

音楽書籍や、音楽関連文の中での主要なジャンルの一つ。

古今の音楽作品が、作曲家別、編成別、作曲順に分類されて音楽の流れをトレースしながら作品の概要がサマリーされる。譜例が提示されることも珍しくない。楽曲が採用する形式、拍子、調性、作曲のエピソード、歴史的位置付け等を織り交ぜることが普通だ。主題間の関係、調性の選択、作品全体の有機的なまとまり等についてとりわけ深く言及されている場合には「アナリーゼ」と呼ばれることもある。

「序奏」「第一主題」「第二主題」「提示部」「展開部」「再現部」「コーダ」という楽曲を構成するパーツに各駅停車して解説してくれるので、作品全体を手早く俯瞰したい場合に重宝する。この機能には膨大なニーズが存在すると見えて、いわゆる楽曲解説の書物は相当な数が世の中に流布している。

初めての自費出版本「ブラームスの辞書」あるいは、ブログ「ブラームスの辞書」は、先行する膨大な量の楽曲解説の海に、遅れて漕ぎ出す立場であった。レイトスターターであるハンデに加え素人の駄文という二重の制約を抱えての船出にあたり考えたことは、ひとえに差別化だ。市場の隙間がありはしないかと考えた。

あえて作品という横串をはずしてブラームスを議論することに重点を置き換えてみた。一つの作品の中に、珍しい箇所を発見したとする。ブラームスの他の作品に同様の事例がないか検証する。同様の事例が発見出来なければ、「生涯唯一の」と騒ぎ、同一の事例が発見されれば、それらを集計分析してブラームスの癖に迫るという立場だ。作品をよりミクロに見つめて、音楽記号一個、音楽用語一個、音符一個という細かな単位に遡って作品の魅力に迫りたいと考える。ブラームスを代表する大管弦楽にも、見開き1ページのひそやかな歌曲にも、ブラームスたらしめる痕跡は必ず埋め込まれていると信じる。現代日本における作品の知名度や演奏の頻度、CDの出版枚数にはとらわれずに考えを深める。

2016年11月18日 (金)

目から鱗

何かをキッカケに物事の実態がわかるようになることのたとえだ。

思うにブロガー喜ばせ用語の筆頭格だ。書籍やブログの読者からこの言葉が発せられるとたとえお世辞とわかっていても舞い上がってしまう。つまり「あなたのブログをきっかけでブラームスについての知識が深まりました」の意味で用いられた場合、やたらにうれしいのだ。毎日ブラームスについてネチネチ考えを深めていた甲斐があるというものだ。

面白いのはその言葉の発信されるタイミングだ。こちらが力を入れて満を持して発信した記事には反応がなくて、何気ないつなぎの記事に対して寄せられるケースが少なくない。喜んでいいのか悪いのかな現象である。

2016年8月20日 (土)

辞書との違い

一般に辞書の収録単位は単語である。単語がアルファベットなり五十音の順番に列挙されているのが普通だ。ことわざ辞典を別にすれば単語2つ以上で構成される慣用句は、副次的な扱いになっている。この点については、言語による違いは見られない。音楽用語辞典さえも同じ構成になっている。

ブラームスが楽譜上に記した音楽用語の数は200以内だ。だから私がもし、一般の辞書のしきたりに従って「ブラームスの辞書」を書いていたら、項目数は200以内ですんだということだ。実際の「ブラームスの辞書」の項目数は1170にも達しようかという数だ。1000にも達する膨大なこの差こそが「ブラームスの辞書」のあり様を象徴している。

「p espressivo」のような語句も「p」や「espressivo」という単語と同格の扱いをされているということなのだ。ブラームスの音楽用語使用は、伝統的な語彙の範囲に収まっている一方で、それらを組み合わせることによって微細なニュアンスの差を表現している。

「poco」や「piu」などの微調整語の多用がそれを物語る。「poco」や「piu」という言葉の意味を調べてもブラームスの意図にたどり着きにくい。「poco」や「piu」などはこの後に続く言葉によりニュアンスが縦横に変化してしまうから「poco f」「piu andante」という語句単位で考察することがより効果的である。先の例で申せば「p espressivo」の意味に迫る上で、「p」や「espressivo」だけを引いて考えるのは、どう見ても遠回りなのである。「ブラームスの辞書」では「p espressivo」と引くことが出来る。

そういうことを積み重ねた結果1000もの差が生じてしまったということだ。

2016年8月19日 (金)

辞書のイメージ

辞書の定義について辞書を引いてみるなどということは試みたことがない。私の著書は曲がりなりにも「辞書」を名乗っているのだから、本当は確認が必要なのかもしれない。

辞書は、必要に応じて目的とする語を調べることが主な使われ方だ。最初から通して読む人はほぼいない。読書感想文の対象にもなりにくい。紛れもなく書籍なのだが、読書の対象ではないのだ。ということはつまり「ブラームスの辞書」と名乗った瞬間に、読書の対象からははずれるリスクを自ら負ったということに他ならない。辞書の形態を借りたエッセイを目指したつもりなのだが、世の中甘くない。最初から通して読むことで浮かび上がる論旨も忍び込ませてあるのだが。

辞書と言ってもう一つ忘れてならないのが、重みだ。辞書といえばズッシリとした重量感がつきものである。ペラペラの冊子ではカッコがつかない。重さ厚みがとても重要だ。「ブラームスの辞書」は重さ660g、厚み27mmだ。予算の制約があったとはいえ、辞書としては微妙である。重さ厚みが欲しいからといって、文字を大きくしてページ数を稼ぐのはいただけない。辞書は文字が小さくなくてはカッコがつかないのだ。

もう一つ特徴的なこと。「辞書」という語はナポレオンという人物とセットで語られることが多い。「よの辞書の辞書に不可能はない」というセリフとともに思い出される。実際のナポレオン愛用の辞書がどこかに展示されている話は聞かないなどと食い下がるのは野暮というものだ。単なるたとえ話である。「ブラームスの辞書」は、このたとえ話を真に受けて成立しているのだ。作曲の際に手許において意味を確認したであろう単語・語句をジュラシックパークよろしく復元するというのが譲れないコンセプトになっている。

そしてそして、「ブラームスの辞書」というタイトルを著書と共有するブログもまた、そうした意味合いを持つ。記事が4000本を超えたことで、ようやく辞書たるにふさわしいボリュームがついてきた。簡単に全てを読破することをためらわせる分厚さが、辞書には相応しい。仮にそれが駄文の積み重ねであろうともである。

2016年3月16日 (水)

鬼に金棒

元々手強い人がさらに手強くなること。

耳が良くて、見識があって、腕の立つ演奏家が、作品や作曲家についての知識を持ったら「鬼に金棒」なのだと思う。知識を持っていなかったとしても、立派な演奏が出来る人が、知識を持つことでさらに演奏の幅が広がることは間違いない。持っていない場合には、持っていないなりの演奏しか出来ないが、持っていればそれを演奏に反映させることも出来るし、知識を意図的に無視することも出来る。つまり選択の幅が広がる。知識の量が少ない場合には、大したことはないが、数千の知識にでもなればバカに出来まい。

私が「ブラームスの辞書」で積み重ねているネタは、そうした人たちの「金棒」になりはせぬかと思っている。達者な演奏家に持ってもらえば「金棒」になる知識も、私が持っているだけでは「持ち腐れ」が関の山だ。だから私は「ブラームスの辞書」を書いた。放置すれば持ち腐れてしまう知識の数々を、「鬼の金棒」にするために自費出版をした。

2016年3月 8日 (火)

タイトリング

ブログの記事はまもなく4000本に届く。ということはつまり、4000ものタイトルを考えたということだ。「のだめの中のブラームス」や「献本行脚」は複数存在するが、それでも相当な数だ。

記事のネタを思いつく、「マクラ」や「オチ」を含む流れを考える。直前に公開した記事や直後に公開予定の記事とのつながり、類似ネタ記事との時間的へだたりおよびそれらへの言及の仕方などなど考慮すべき事項は多い。それらと同等に重要なのが「タイトル」を考えることだ。タイトルは記事の流れの一環であると断言出来る。

新聞で言えば「見出し」だし、広告で言えば「キャッチコピー」だ。類型的なタイトルを避け出来るだけ多彩なタイトルにすることは、検索エンジンへの反応という面からも効果的だ。

およそブラームスと関係があるとも思えない突飛なタイトルを掲げて、ブラームスとの意外な関係を浮かび上がらせることは醍醐味の一つである。タイトルの意外性も記事のオチを形作る重要なファクターということになる。「マイケル・ジョーダン」「伊能忠敬」「源実朝」などはこの典型だ。

元々ブログのコンセプトが「サラリーマンの日常の描写」ではない。ブラームスという巨木に徹底的によりかかるという非日常性が売りだ。だからこそタイトルにもそこそこの個性を盛り込むべきと考える。その意味ではブログと本に共通する「ブラームスの辞書」というタイトルも思案の賜物である。ナポレオンの「よの辞書に云々」の言い伝えを半ば冷やかし、半ば真面目に受け止めたものだ。実は気に入っている。

常連の人々に「また始まったか」と思われることは本望である。タイトルと本文のこじつけの無理矢理振りも内容の内だ。

2016年2月23日 (火)

辞書の用途

一般に辞書は、わからない言葉の意味を調べるために用いられる。

我が「ブラームスの辞書」も「辞書」を名乗っている以上、意味調べの用途を想定している。単語や語句をアルファベット順に並べるという体裁も一般の音楽用語辞典と何等変わるところはない。筆者個人の意見を遠慮無く盛り込んでいるから、エッセイの要素も混入しているものの辞書として使うに差し障りはあるまい。

これとは別に著者である私が考える用途を列挙してみる。

  1. 譜読みの友 実際にブラームス作品を演奏しようと試みる演奏者が、演奏に先立って行う譜読みでのガイドブック。
  2. 鑑賞の友 作品を聴いて、興味深く感じた箇所の楽譜の成り立ちを探求しようと考える人々とってのガイドブック。
  3. ブラームスネタでレポートを書きたいと志す人にとってのネタの集大成。
  4. ブラームスネタで一晩飲み明かしたいと考える人々にとってのネタ帳。
  5. ブラームス好きのための子守歌。
  6. 集中講義「ブラームス学」のテキスト。
  7. 「ブラームスのめり込み度」を計るものさし。
  8. 重り。
  9. ブログ「ブラームスの辞書」の記事のネタ本。
  10. 私の名刺代わり。
  11. 子供たちへの贈り物。
  12. 枕。

なかなか多機能である。私なら10000円でも買う。

2015年4月21日 (火)

ウスウス

ブログにしろ本にしろ「ブラームスの辞書」は、グレーな領域のネタが多い。ブラームスの作品に接する人たちが、みなさんウスウス感じていながら、それでいて改まって言い出さないことを、無理矢理引っ張り出して論評の対象にする趣旨である。

ブラームス作品を演奏する人々は、楽譜上の音楽用語が多彩で微妙であることはウスウス気付いていると思う。同じ旋律でありながら、出現の度に微妙に色合いが変わるというケースはけして珍しくない。実際に数えて「ホラね」とまではやらないだけである。

そうした潜在ニーズに応じるという側面が半分ある。残る半分は私の性格のせいだ。実際に楽譜を舐めるように見つめてエクセル入力したのは、データという客観性のある裏付けを添えることで展開する論旨に説得力を与えるためである。みんなウスウス気付いていることを言っているだけなのに、データが備わることで有り難く見えるというマジックだ。

ブラダスデータ22000件は十分客観的だ思うが、それをベースに抽出加工したデータは疑ってかかったほうがいい。情報めかして語ることでバカ話に有り難味を付与するためのツールだと思っている。

スペシャルコンサートまであと18日。

2015年4月 8日 (水)

ガイドブックと紀行文

「ガイドブック」「紀行文」どちらも旅に関係がある。

ガイドブックは、旅に先立って読まれる。遅くも旅をしている間までだ。旅のルート設定に威力を発揮する。名所旧跡はどこか、ランチの上手いお店はあるか、駐車場は、入場料は、混雑度は、おすすめ度はなどなど盛りだくさんである。これらを参考に効率的なコースを設定するのだ。このプランニングの段階が旅そのものよりも楽しいという層も確実に存在する。

紀行文は、文学の立派なジャンルのひとつになっている。旅の結果の羅列と言い放ってしまっては味わいが薄かろうが、そうした側面もあるのは事実だ。旅先で感じたことの記述で、多くの場合5W1Hよりも感情表現寄りのバランスとなる。景色、歴史、宿、温泉、寺社仏閣、城、料理、出会いなど旅ならではの情緒が盛り込まれる。

音楽作品の鑑賞は旅に似ている。作曲家が残した楽譜に従って名所旧跡巡りをするかのようだ。楽譜は鉄道や道路に相当する。普通列車か特急か、歩くかバスかは作品解釈だ。同じ路線でも訪ねる度に味わいが変わる。一人旅か、家族旅行か、デートか等の状況によっても変わる。

我が著書「ブラームスの辞書」はガイドブックだ。出会う可能性のある全ての標識を説明している。ガイドブックであることの証拠に位置の特定に注意を払っている。どの曲のどこそこのパートの何小節目という具合だ。進入禁止、制限速度指定、ふみきり注意などなど、何でもありだ。名所については特にスペースを裂いて説明もしているが、記述は網羅的であることに注意を払っている。

一方同じく「ブラームスの辞書」という名前を背負っていながら、ブログの方は性格を異にしている。こちらは紀行文だ。私自身が音楽作品を辿った記憶を思い出し出しランダムに記述している。自分のための旅のメモであり、かつガイドブックを売るための宣伝だ。

ガイドブックだろうが紀行文だろうが、ブラームスに特化してしまっているところがセールスポイントになっている。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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