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カテゴリー「742 大学オケ」の84件の記事

2024年12月 4日 (水)

大奇遇

職場のオケの話だ。

練習後の飲み会が半ば恒例となっている。練習に出た人はかなりの確率で飲み会に流れる。8時半からまとまった人数の入れるお店を探す事務局の苦労をよそに盛り上がる。座席は自由席である。来た順に奥に詰める。だから毎回ランダムだ。

先日の飲み会私の隣にはうら若い女子。女子の比率が高いのでそれ自体は珍しくない。彼女は最近入団のホルン奏者だ。しかも高く見積もっても我が家の娘らの世代。多分若いんだと思う。

話が弾むうちに、出身大学を聞いて驚いた。私の後輩だった。所属がオケではなく吹奏楽団だったが奇遇だ。音楽そっちのけで地元ネタで盛り上がった。あまりメジャーな大学ではないので社内では見かけないが、まさかオケでとは。

これもまたアンサンブル。

2023年5月22日 (月)

下宿コミュニケーション

大学オケの門をたたくとすぐ、仲間との交友が始まった。自宅から通っていた私だが、先輩や仲間の下宿での飲み会に明け暮れた。安酒につまみ持ち寄りの会。

話題は意外とまっとうで、音楽中心。演奏家論、作曲家論とまでは突き詰めない音楽ネタだ。演奏会の曲目決定時期にはかなり盛り上がる。決まった後、練習に取り組む間、特定の作曲家や作品が話題の中心になる。

当時はCDではなく、レコードやカセットテープで、さまざまな演奏を聴きながら他愛なくもりあがったようで、実は強烈な刷り込みになっている。

2023年5月20日 (土)

聞き倣し

「聞き倣し」と書いて「ききなし」と読む。鳥を含む動物の鳴き声に人間の言葉の音を当てることだ。犬の鳴き声を「ワンワン」とするのがその代表だ。Dogは「ワンワン」とは鳴かずに「Bow Bow」と鳴く。言語が違えば当然聞き倣しの結果も変わる。寝ている間は、人間も動物の仲間だと実感する。日本では「グーグー」だが、英語圏では「zzzzzzz」だ。いびきの音は聞き倣しの対象になっている。つまりその間は動物だということだ。

さて学生のオーケストラは定期演奏会を中心に回っている。メインプログラムともなると3ヶ月程度は練習するものだ。作品に登場する印象的な旋律に歌詞を付けて歌う輩が出て来る。傑作を毎度生み出す「聞き倣しメーカー」も一人や二人は必ずいるものだ。私が聞いた範囲でも以下の通り多彩である。

  1. 「こ~んなたっかい音出る訳ないのに」 ベートーヴェンの交響曲第7番第4楽章のホルンの難所。
  2. 「ク~ラリネットちょんぼちょんぼ」 ベートーヴェンの交響曲第9番第2楽章中間部
  3. 「金ね~よ~、ひもじ~よ~」チャイコフスキー悲愴交響曲第1楽章冒頭
  4. 「めーしー早く喰いてえよー、さーけー早く飲みてえよー」チャイコフスキー悲愴交響曲第2楽章冒頭
  5. 「コンパでビールを飲もー」チャイコフスキー悲愴交響曲第3楽章冒頭
  6. 「うら~のにーわで、ポチが鳴く、こーこ掘れこーこ掘れ」ドヴォルザーク「アメリカ」四重奏曲冒頭。
  7. 「ダブトン、ドラ3」マーラー第5交響曲第3楽章エンディング。

学生たちはこの手の替え歌が好きだ。さりげなくセンスも問われる。アルコールが入った席でよく歌われる。学生歌にも、同じ旋律が別テキストで歌われる異稿が数多く派生している。替え歌あるいは聞き倣しのノリは学生歌の神髄という気がする。上記の7番は私が発案者だ。大学4年の秋、マーラーに挑む中、マージャン卓を囲んでいて思いついた。

さて前置きが長くなった。ブラームスにも聞き倣しがあった。

  • 「お~れはど~にももてない男だ」交響曲第3番第4楽章
  • 「あじ、さば、うに、いか、たい、かに、とろ、えび」交響曲第4番第1楽章冒頭。

あまりに出来が良い場合、そうとしか聞こえなくなるという副作用も報告されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年8月30日 (火)

合宿の夜

「調和の霊感」op3-9の話題だ。ヴァイオリンのための協奏曲ニ長調である。

1978年8月30日の夜。大学1年、大学オケの夏合宿恒例の室内楽演奏会の出来事だ。北軽井沢の合宿所のホールで、2コ上の先輩がヴィヴァルディのこのコンチェルトを仲間をバックに弾いた。

激しい雨が屋根にあたる轟音の中、それはそれは清らかな演奏だった。当時初心者で始めたヴィオラがものになるかどうかもわからぬ段階で、途方に暮れていた。夏合宿も明日で打ち上げというときに聞いたこの演奏が心にしみた。とりわけ第二楽章のピュアな旋律は長くあこがれとなった。自分はヴィオラであるにもかかわらず、いつかこういう曲が弾きたいと心から思えた。中学時代から継続中のベートーヴェンラブの真っただ中、ヴィヴァルディと言えば中学の清掃時間のBGMだった四季しか知らない偏った価値観に差し込んだ光。まだブラームスへの傾倒は始まっていなかった。

あれから44年。

 

 

 

 

2022年2月25日 (金)

Wissen

ドイツ語の辞書を引く。動詞なら「知っている」という意味で、名詞なら「知識」だ。「Wissenschaft」と続けば「学問」になる。

私が通った大学には生協売店があった。その2階が喫茶店になっていたが、その喫茶店の名前が「Wissen」だった。当時は気にも留めていなかったが、今思うとなかなかのネーミングである。学生たちにはなじみ過ぎて女性とのロマンスの舞台にはなりにくいメジャーな場所だったような気がする。

2021年4月 6日 (火)

同期アンサンブル

大学3年になる2月だったかと記憶している。大学オケの同期でアンサンブルをすることになった。このときの演目がブランデブルク協奏曲第5番だった。同期の仲間のチェリストが実は達者なピアニストで、名高いチェンバロ独奏を弾きこなしてしまうほどの腕前だった。

ヴィオラを初心者で始めた私だったが頼まれて演奏に参加した。

これが初めてのバッハ演奏体験だったはずだ。

 

 

2021年2月20日 (土)

ハープ協奏曲

大学オケ夏合宿の室内楽演奏会。その年入団の一年生の弦楽器奏者たちだけのアンサンブルを披露することが恒例になっている。4月に入部してヴィオラを始めた私の最初の難関だ。

曲目は誰が決めたかヘンデルのハープ協奏曲の第一楽章だ。ハープ奏者がいるわけでもないのに謎の選曲である。今ならブーイングのひとつも奉るところだが、先輩のチョイスとあって当時は絶対服従だった。

気合を入れて練習したが本番の出来は全く記憶にない。

 

 

2020年1月 4日 (土)

マーラーかるた会

大学オケ最後の演奏会を12月に終えたあと、団内の有志を集めてカルタ会をやった。1982年の正月だ。演奏会の演目がマーラーの第五交響曲だったことにちなんで「マーラーかるた会」と命名した。もちろん小倉百人一首だった。公民館の和室を借り切ってワイワイと一日がかりであった。お開きのあとはお決まりの飲み会。

オーケストラだというのに、10名以上集まったと記憶する。みんな100首全部とは言わぬまでも、かなり覚えていた。

2019年3月12日 (火)

ヴィオラ六重奏のためのカノン

1980年の夏。大学3年のオーケストラの夏合宿。合宿恒例の室内楽演奏会があった。その直前の6月にヴィオラのパートリーダーに就任した私の思いで、ヴィオラだけでパッヘルベルのカノンを演奏した。もとは3声のヴァイオリンと通奏通奏低音という編成なのだが、私がヴィオラ6声部用に編曲した。編曲に加えてパート譜も写譜してそろえた。

原曲は3部に分かれたヴァイオリンがまったく同じ旋律を2小節ずつ遅れて追いかけるというシンプルな構成で、1~3までのヴァイオリンパートに難易度の差はない。編曲とは言っても個々の旋律を分解してヴィオラ6声部に構成しなおしただけで、せいぜいオクターブの上下動くらいだ。1番から6番までの各パートには、当時のヴィオラパートのメンバー構成に合わせて難易度に差をつけた。

  • 1番 難しいパート。
  • 2番 中くらいのパート。
  • 3番 難しいパート。
  • 4番 4月に入部した初心者用のパート。
  • 5番 中くらいのパート。
  • 6番 難しいパート。

実際にはコントラバスとチェロを各1名加えた。

8月29日の夜、室内楽演奏会で披露した時の会場のざわめきを忘れない。当時オケのしきたりに反するパートアンサンブルだったこと、それまで弱小だったヴィオラパートに12人そろったという驚きもあったはずだ。

2018年1月13日 (土)

生シャコンヌ

一昨日、古澤巌先生のリサイタルに行ってきた。

演目はバッハ。無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番と第2番。休憩をはさんで無伴ヴァイオリンのためのパルティータ第2番。アンコールに無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番から第3曲。

何から話そう。

すごかった。言葉を尽くしたところで、私の筆力の限界をさらすだけだ。

1980年12月14日

千葉大学管弦楽団第48回定期演奏会。

千葉県文化会館。指揮:芥川也寸志。

チャイコフスキー:イタリア奇想曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第6番「悲愴」

私は大学3年だった。大学にはいって始めたヴィオラだというのに、このときパートリーダーデビュウだった。若造には荷の重いオールチャイコフスキープログラムだ。

で、ヴァイオリン協奏曲で、独奏ヴァイオリンを弾いてくれたのが、古澤巌先生その人だった。

夏合宿にもおいでいただいた。本番までに何度か練習にお付き合いいただいた。西千葉の駅前で焼き鳥をごいっしょしたこともある。気さくな人柄でドアマチュアとのバカ話にも難なく打ち解けてくださった。

チャイコフスキーのコンチェルトの第2楽章には、独奏ヴァイオリンの主旋律に、弱音器付きのヴィオラがオブリガートをかます場面がある。ヴィオラのパーリーとして、手を伸ばせば届く距離にいた独奏の古澤先生と交わしたコンタクトは生涯の宝だ。

一昨日はこのとき以来37年ぶりの先生の実演だった。プログラムが無い代わりに自らマイクをとってのトーク語りかけが本当に本当に実直で心にしみた。そうしたトークとキレッキレの演奏との落差がこれまた最上の癒しになっていた。

バッハへの敬意が充満する演奏。2曲あるソナタの第3楽章、それからアンコールにもあったアンダンテこそが古澤節の真骨頂だと思った。

シャコンヌを生で聴いたのは初めてだ。目の前で弾かれてみて、作品のすごさがわかった。この内容をヴァイオリン一本でと志すバッハのすごさを思い知られたとでもいうのか。目の前の実演というインパクトは無限だ。ヴァイオリン奏者の息遣い、ボデーアクション、魔法のような弓の操り。

なんだか力がもらえた。開幕したばかりの「バロック特集」をやり抜く力が、腹の底から涌いてきた。

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