おかしなタイトルだ。3和音を構成する音のうち真ん中の音が「ドミソのミ」である。Cdurで説明すれば低い方から「C-E-G」になる。この音は微妙だ。フラットが付くか付かぬかで、長調か短調かが決まる。付かねば長調だし、付けば短調だ。第3音と称される大事な音だ。一方和声学においては、この第3音の重複は禁忌される。大事な音なのに重ねてはいけないとされている。
ヴィオラ弾きにとっては、ホームグランドにも相当する。合奏においてヴィオラがこの第3音を放つケースがとても多い。あまり多過ぎるので「ブラームスの辞書」でも列挙を諦めているがひとつだけ印象的な場所を示す。
弦楽六重奏曲第1番第2楽章の結尾だ。ピアノ独奏に編曲されてクララに贈られたことでも有名な変奏曲の終止和音を見るがいい。ニ短調で流れてきた音楽が、第一ヴィオラに割り当てられた「F」音へのシャープのおかげでニ長調で終止する。もし私がこのシャープを見落として「F」を発してしまうと、ニ短調になってしまうのだ。他の5つの楽器には長短の決定権が無い。つまりこの場面第一ヴィオラが第3音を発しているということだ。
第3音を英語で申せば「3rd note」ということになる。「サードノート」だ。
東京は西巣鴨にそのものズバリ「3rd note」というカフェを発見した。ヴィオラ弾きとしては店名を見てにんまりした。「オレのことか」ってなモンである。
ホームページはこちら→3rd note
お店に行ってきた。こざっぱりしたカフェだ。まだオープンしたばかり。何と1階がカフェで地階のスタジオとセットになっている。カフェ&スタジオというコンセプトだ。仲間と室内楽をすると、終わった後に反省をかねてちょっと食事ということが多いから、こういうコンセプトにはニーズがあると思う。
お店の人に店名「3rd note」の由来を尋ねると、「和音ではとても大切な音」「そのくせけしてでしゃばらない」という案の定な答えが返ってきた。答えてくれたのはママだった。この人ママというには少々貫禄が足りない。つまり可憐なのだ。女性だからマスターと言うのも変だ。仕方なくしぶしぶママという言い回しをする次第である。
カフェと貸しスタジオの融合というコンセプトについて伺うと「仲間と演奏の後、ストレスなくそのまま食事に流れ込みたいと感じることが多かったから作ってみた」とキッパリである。ママ自身はトランペットとチェロをたしなむという。ホームページの中のスタジオの写真に映っているチェロはママのである。
ランチで注文した豚の角煮トマト風味がおいしかった。もちろんママが作っている。
会社や家からは立ち寄りにくい微妙な立地だが、無理やり用事を作ってときどき訪ねてみたい。
ママのブログ
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