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カテゴリー「141 変奏曲」の28件の記事

2023年10月 5日 (木)

MVV

私の造語。「モースト・ヴァリアブル・ヴァリエーション」だ。つまり「最優秀変奏曲」。私の脳内認識の話。

ブラームスは変奏曲大好きだ。ソナタ器楽曲の単一楽章が変奏曲になっている例は多い。単独管弦楽には名高い「ハイドンヴァリエーション」がある。ピアノ曲にだって「誰それの主題による変奏曲」が目白押しだ。だから「MVV」はそれらが候補になるのだが、グールドのDVDのせいでどうも風向きがおかしい。

もしかしてバッハのゴールドベルク変奏曲が「MVV」なのではないかと思えてきた。人類史上最高の変奏曲はゴールドベルク変奏曲なのではないかと。

悩んでいたら、さっきブラームスから「異議なし」とラインが入った。

 

2023年10月 4日 (水)

32という切り口

グールドによって再認識が進むバッハ、ゴールドベルク変奏曲BWV988の話だ。なんせ長大な変奏曲。

主題のアリアは32小節ある。主題を冒頭と末尾で提示するのだが、変奏が30あるために、全体は32の部分から成り立つ。32が好きなのかと疑う。

主題に30の変奏がほどこされ、それにコーダが続くことで全体が32の部分からなるといえば、ブラームスの第4交響曲のフィナーレ第4楽章と同じである。そう、ブラームスはこのゴールドベルク変奏曲の弾き手でもあった。公開の場での演奏の証言は見当たらないが、貴重な友人の証言がある。

母を亡くしたブラームスを見舞ったゲンスバッヒャーによれば、ブラームスはゴールドべルク変奏曲を弾いていたというのだ。どこの部分なのかは不明ながら、この時ブラームスのほほが涙に濡れていたと証言する。

弾いていたのがアリアの主題であってもぴたりとはまってくるエピソードではないか。

 

2023年9月17日 (日)

変奏曲の伝統

新しいCDプレイヤーがきっかけで、オルガン作品に親しんでいる。オルガン作品のうちキリスト教と関係がないものがオルガン自由曲と呼ばれる一方で、プロテスタントの讃美歌が題材に取られるケースにもおびただしい実例がある。

庶民の信仰を助けるために音楽の力、とりわけ歌を重用したルター。彼に起因するかなりな数のコラール。カトリックにおいては専門家による歌唱が常識だった賛美歌を庶民に開放する過程でおきた「簡素化」「一般化」がコラールの起源であること周知の通りだ。一旦「簡素化」「一般化」が行われたコラールを素材に。オルガンによる音取り装飾を目的としたコラール前奏曲という段階。賛美歌をコラールにする手続きを第一段階とするなら、こちらは第二段階だ。さらにはそのコラールを元に華麗な変奏を紡ぎ出すというコラール変奏曲まで続く。

それらどれもが変奏と感じる。古典派、ロマン派と時代が下るにしたがって、変奏作品は全欧州に拡大するが、元はコラールのいじくりまわしに端を発しているのではないかと感じる。

ブラームスを変奏の大家と評価することはすなわち、プロテスタント伝統のコラール変奏の継承者という位置づけの再確認に等しい・・・のではないか。

 

 

2023年6月26日 (月)

優勝旗授与のための変奏曲

ベートーヴェンがチェロとピアノのために遺した変奏曲の題材はモーツアルトだけではなかった。

何気なく聴いていてピクッと耳が反応する。どこかで聴いた旋律。運動会の優勝旗授与のときのBGMだ。ヘンデル「マカベウスのユダ」から「勝利をたたえる歌」の主題による変奏曲。作品番号はついていない。

耳になじみの旋律を手際よく変奏処理した作品にはかなりな需要があったと思われる。チェロに超絶技巧が要求されているように聞こえないのはチェリストが達者なせいかもしれぬ。

2023年2月11日 (土)

最優秀変奏曲

三大ソナタにあこがれた中学生のころ、23番「熱情」の第二楽章が好きだった。短調の楽章に挟まれて、何やら近づき難い変ニ長調だというのに、聞いた感じは平明で透き通った感じ。変奏が進むにつれて音価が細かくなっていく。休みなくフィナーレに続くのも好きだった。

今、熱情ソナタは私的ベスト3から脱落したけれど、この第二楽章だけは最優秀変奏曲の座を争っている。

争うには相手がいる。

それは第12番の第一楽章だ。フィナーレに葬送行進曲を置くため「葬送」ともいわれるこのソナタ、実は中学時代にはまったく視野に入っていなかった。初めて聞いたのは社会人になってからだ。ソナタ形式を欠くソナタとしてモーツアルトの「トルコ行進曲付き」があるけれど、これも第一楽章が変奏曲になっている。モーツアルトに劣らず美しい。

ソナタの一部でなければブラームスのシューマンヴァリエーション、あるいはヘンデルヴァリエーションもある。いかんいかんバッハさんのゴールドベルク変奏曲も入れてあげねば。

 

2022年8月 8日 (月)

コレルリヴァリエーション

ラフマニノフが1931年に作曲した「コレルリの主題による変奏曲」op42だ。主題はコレルリの「ヴァイオリンソナタ」op5-12というより「ラフォリア」ニ短調だ。古来有名な旋律で、コレルリの作ではないが、最も有名な「ラフォリア」に敬意を表したということなのだろう。

ピアノの名人芸を堪能する作品になっている。

 

 

 

 

2021年8月24日 (火)

死と乙女

知名度で申すなら数あるシューベルト歌曲の中でも頂点付近に位置すると思われる。テキストはクラウディウス。文字通り死と少女の対話。魔王と並ぶ怪奇系の双璧。音楽のおかげで極端な怪奇的にならずに劇的という範囲にとどまる。

イントロに現れる「タンタタ」というリズムは「ダクテュルス」と呼ばれている。アクセントがある長い音符に短い音符2つが追随するなどという説明よりもベートーヴェンの第七交響曲の第二楽章冒頭のリズムと申し上げた方が早い。シューベルトはこのリズムを愛好したと見えて、偶然とは思えぬ頻度で出現する。3つの音高が変わるケースまで入れればしょっちゅうという感じでさえある。

さて知名度の押し上げに寄与しているのは弦楽四重奏曲第14番ニ短調だろう。第二楽章に歌曲「死と乙女」の伴奏パートが主題として現れる。もろに「ダクテュルス」だ。テキストに付与された旋律をスルーしてこのイントロ音型を主題として採用し、あろうことか変奏の主題としている。私にとってはシューベルト室内楽の頂点に長く君臨する。初めて買ったCDはアルバンベルクSQの演奏だったが、これが脳みそに刷り込まれてしまい他の演奏を受け付けにくくなっている。

 

2021年7月28日 (水)

就職試験

1857年5月31日。ブラームスはデトモルトの宮廷を訪問して1週間滞在した。同宮廷でピアノを教えていたクララ・シューマンが英国に演奏旅行することになったために、クララ自身がブラームスを後任に推挙したためだ。その1週間、ブラームスはピアノを教えるかたわら、バッハやベートーヴェンの作品を演奏する機会を与えられた。いわば就職試験である。

結果はもちろん合格。そりゃあまあクララの推挙だから限りなく当確なのだろうが、一応試用期間があったと見るべきだろう。

なんということか、その期間中、ブラームスはシューベルトのピアノ五重奏曲イ長調「ます」をピアニストとして演奏した。同曲第4楽章は歌曲「ます 」D550の旋律がそのまま引用された変奏曲である。ピアノパートがどれほどの腕前を要求されるものかわからぬが、15歳で「ワルトシュタイン」を弾いたブラームスだから問題は生じなかったと思われる。聴いてみたい。

「Fischer」でネタで忙しくて言い忘れた。

 

2021年2月14日 (日)

第一変奏

    最初の変奏と解して疑いはない。「主題と変奏」というというジャンルには古来数多くの作品が残されてきた。どれも例外なく真っ先に主題が提示される。これがないと始まらん。そこから先が作曲家の腕の見せ所だ。主題の提示が終わって、「さあ行くぞ」と走り出すのが「第一変奏」だ。作曲家の意気込みがとりわけ色濃く反映する。

ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」op24は、以下の通りだ。

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Piu vivo に意気込みが感じられる。がしかし、若きブラームスは半ば意図的にバッハを模倣しているかもしれない。

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 「ゴールドベルク変奏曲」の第一変奏だ。16分音符2個に8分音符という3つの音符が、移動ドで「ドシドー」と走り出す。

2019年11月 8日 (金)

魔女の変奏曲異聞

2007年5月1日の記事「魔女の変奏曲」で、「パガニーニの主題による変奏曲」op35がクララから「魔女の変奏曲」と呼ばれていると書いた。このほどその同じ箇所が「魔法の変奏曲」と呼ばれているケースを見つけた。元のドイツ語は不変でも翻訳の過程で、ニュアンスが割れてしまうことはよくあるが、本件は微妙である。

ブラームス宛の手紙の中でクララが用いた言葉だ。その同じ手紙でクララは、「パガニーニの主題による変奏曲」を隅から隅まで目を通したと述べている。各々の変奏曲が良くできていると誉める一方で、いくつかの変奏を削って1巻にまとめたらという提案をしている。

1巻から、第8変奏を省き、2巻からは4、7a、11、12、16変奏を削除して、全1巻にまとめるべきと言っている。同じテーマを元にした変奏曲を2巻も買ってはもらえまいと断じている。第2巻の冒頭が超絶技巧過ぎるとも付け加える。

これらの指摘の妥当性を論じる知識はないが、クララが相当細かく目を通して、思い切り踏み込んだ提案をしていることがよくわかる。もちろんこの助言はブラームスからの要請に基づくものだから、ブラームスがこれでヘソを曲げることはない。けれども、ブラームスがクララからの提案を採用していないことも忘れてはならない。

 

 

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